2022年1月25日
サンゴバン株式会社 機能樹脂事業部 パーチェスマネージャー 嘉瀬 清司 様(CPP-A級資格取得)に、資格取得の背景やご活用についてお伺いしました。
機能樹脂事業部 パーチェスマネージャー 嘉瀬 清司 様 (CPP-A級資格取得)
※以降敬称略、所属・役職はインタビュー当時
嘉瀬さんの現在のお立場について教えてください。
嘉瀬 はい、弊社はサンゴバンジャパンの機能樹脂事業部の購買を担当しており、現在は2名体制で行っています。
嘉瀬さんは、マネージャーということを拝見しましたが、プレイヤーとしても購買業務を行いながら、メンバーの業務管理をされているのでしょうか?
嘉瀬
購買調達の全体業務を行うのはマンパワー的にできないので、各製品グループに発注計画担当者、発注担当者、在庫管理担当者がいます。その人たちは、各グループのマネージャーにレポートします。
私は、発注計画、発注、在庫管理等の仕組みを作り、仕組み上の何か不具合や非効率なことがないかチェックしたり、仕組みを更新したりしています。具体的には、サプライヤーさんとの交渉、ルール作り、今のサプライヤーさんの政策決定を行っています。
嘉瀬さんはCPPホルダーでいらっしゃいますが、CPPを取り組むきっかけや、課題感などを教えてください。
嘉瀬
やっぱり「購買のプロフェッショナル人材」がいなかった、ということですかね。弊社の規模では購買を置く余裕は無かったんですよね。
そうなると、工場の製品グループのエンジニア、あるいはそのサプライチェーンの方がサプライヤーさんと交渉するのですが、交渉の仕方なんて皆分からないわけですよ。
ただ、交渉には内部規則があり、例えば何社以上から見積もりを取りなさいということだけでは、誰も得しないですよね。
例えば、サプライヤーさんは、製品仕様も決まってないようなめんどくさい見積もりに付き合わせることになりますし、絶対取れないだろうって思うかもしれません。弊社は弊社で、別にやりたくないことをやって、そして関係だけが悪くなって終わる、そんなことが続いていたんですね。
その中で、私が内部統制の関係で購買部門が必要だということで最初に始まったのですが、当時より「やれることが沢山ある」と感じました。
それまで購買をしていた方たちは、サプライヤーさんに相見積りを取ることが「大変申し訳無い、心苦しい」といったように感じていたようでした。
ただ、そのようなことを感じることは不要で、弊社として新しい技術を取り入れる機会であり、サプライヤーさん側の営業という立場では、案件を持ってきてくれるお客さんはありがたい、と思っていただいています。
大切なのは、関係性をきちんと築けるようにお断りするときはきちんと断り、購買仕様もきちんとする、見積もりを取る時には公平・公正・透明の3つがきちんと担保されていたら、どんなことだって嫌と思われない、ということを内部で共有していき、今は良い感じになってきています。
CPPでそのような内部の悩みが解消されていったのですね。CPPはどのようなきっかけで知ったのでしょうか?
嘉瀬
実は、CPPガイドだけを持っている社員が1人いまして、その方に借りて読んだ時に「これこれ!これを知りたかったんだ!」と思ったのが第一印象です。
その後、きちんと勉強するには「やっぱり資格取る」という目標を自分に甘えないように掲げました。
嘉瀬さんが考える購買・調達プロフェッショナル人材の定義について教えてください。
嘉瀬
やっぱり目的をちゃんと把握しているっていうことですね。あとは、引き出しがいっぱいあるということですね。
購買活動は外部の協力者が増える活動なので、サプライヤーさん嫌がる会社になってはダメだなと思っています。
CPPガイドは、ご存知の通り分厚いですが、何かそういう点での取組みづらさ、学習方法の工夫などはありましたでしょうか?
嘉瀬
確かにCPPガイドは分厚いですが、かなり広範囲に網羅しているので、これは一つの型と思っています。
CPP-B級試験対策セミナーなどの講習に参加して、一度内容を全体的に聞いて、要点を掴んでから、CPPガイドを取り組んだ方が効率的なのではないか、と思います。
なるほど。事務局でも新しい発見です。セミナーを受ける方は、CPPガイドを勉強して、試験を受ける前の最後の追い込み感覚で受けているのかと思っていました。
最初にセミナーを受けたことで、CPPガイドの学習時にどのような印象を受けましたか?
嘉瀬
そうですね…、
CPPガイドには、XY軸を使ったチャートや4象限を使った説明が多いと思うのですが、図を見る時って、その縦軸と横軸が何を示しているのか、ということをきちんと理解している人って案外少ないんですよね。
でも、講習受けると縦軸、横軸の意外性や、理解が進むと思います。
事前アンケートで海外でも使えた、ということを拝見しましたが、具体的なエピソードなどがありましたらお聞かせいただけますでしょうか?
嘉瀬 直接、海外から買うということは、そこまではないのですが、LCC(ローコストカントリー)から購入するとき等で見積、与信、契約、為替の限界点などは必要な情報だと思いますね。
御社は凄いグローバル企業でいらっしゃいますので、例えば全体のガイドラインや値決め等のような場面での事例等ありますでしょうか。
嘉瀬
私はローカルパーチェサーで、他にカテゴリパーチェサーがいます。カテゴリーパーチェサーが、グローバルな横串、いわゆる仕組みを考えています。
国内でも海外でも調達では、価格トレンドなども把握しているので、その価格調整や交渉などでCPPの知識が使えたりしますね。
実際に、現場で取り組んだことの無い課題が出た時にはテキストを開いてヒントをもらっています。
なるほど、やはりグローバルな情報網がしっかりされていらっしゃるんですね。
嘉瀬 そうですね。ベストプラクティスみたいなものも共有されます。あとは、購買という組織が社内でも特殊というか、かなり色々な方が関連している組織なので、色々な所から「このデータはどうなっている?」という問い合わせが来たりします。
そういう方たちと話をするときCPPが役に立ったなどありましたでしょうか。
嘉瀬
ありますね。CPPの用語などを用いてやり取りするとき、相手も理解していただいているので「あ、これって共通言語なんだ」って思ったことはありますね。
ただ、私のように調達歴が浅い人間と、海外で何十年も調達をしてきた人では、迫力が違います。味わってきた苦さというか、経験、身に沁みついた“計算する癖”が圧倒的に違うなと感じています。
CPPを資格取得した後の目標についてお聞かせください。
嘉瀬
先程、購買の人数増やしたいという話をして、これを権力を増やすということに捉えていただきたくないです。
購買はローテーションワーク、ルーティンワークという風に思ってほしくなくて、やっぱりプロフェッショナルなスキルが無いと、それなりの結果が出ない、逆に言うと、プロフェッショナルなスキルを身につけることで結果はでると思っています。
サプライヤーさんとの癒着を防ぐという意味ではローテーションは必要ですが、意味もなく他部門とローテションさせるというのは気の毒だと思います。
人生100年時代と言われている中で、購買調達を1つの学び直しと言うか、リカレント教育の1つとしても捉えても良いかな、と思っています。
そして、「その道(購買)のプロフェッショナルとして、その人の人生の中で役立ててほしい」そんな風になってほしいと思っています。
今のお話を伺って、以前別の方から、「製造や開発部門の方が一度購買に異動して、モノの流れ、お金の流れ、コスト管理等を知って、また戻ってもらう」、「購買はコスト管理、法務、CSR、交渉、調査など経営そのものだ」という話を連想しました。
そういう視点で言うと、嘉瀬さんが先程お話された中では、購買調達の業務には、視座の高まり、視野の広がりなどがある、ということを嘉瀬さんご自身がお考えになられていらっしゃるのかな、と感じましたが、いかがでしょうか?
嘉瀬
その通りです。本当、購買業務は面白いですよ。ただ、サプライヤーに値下げを要求しているだけだろうと思っている人もいるかもしれないですけど、全然そんなことないです。
先ほどの話の中で、製造や開発部門の人に一度経験させるなど、他企業でも伺うことがありますが、極端なことを言うと、モノの値段はカタログみたいな形で並べておけば良いと思ってます。
もし、購買部門に行かせるのであれば、“本当にその人を育てて欲しい”ですよね。
購買の交渉が、先ほど話した中で限られたパイを奪い合うようなことをさせている、しているようだったら役に立たないです。
『交渉してずっと長期的な関係を築いていく』、ということは『ライフスキル』ですよ。
最後にCPPを検討している方にメッセージをお願いします。
嘉瀬
CPPを勉強することで、他のことを勉強するきっかけになります。
人間の学習する能力は、学び続けてれば絶対下がることは無いと思います。
ただ、学ぶことを一度辞めると、学ぶ力が落ちてしまいます。
量は多いですけど、勉強になります。B級とったあと、A級をとるのでもう一度学ぶことができます。
学びのチェーンが続くと、それは、いずれ結晶となって、必ず役に立つ『ライフスキル』になりますので、是非頑張ってほしいと思います。