2022年2月3日
株式会社明電舎 調達本部 山下 恵嘉 様(CPP-A級資格取得)と主任 保坂 直輝 様(CPP-B級資格取得)に、資格取得の背景やご活用についてお伺いしました。
調達本部 企画管理課 シニアエキスパート 山下 恵嘉 様
調達本部 EV調達部 EV調達課 主任 保坂 直輝 様
※以降敬称略、所属・役職はインタビュー当時
現在のご部署でのお立場と役割について教えてください。まず保坂さんからお願いします。
保坂
調達業務には約7年関わっていて、現在は主任という立場で、電気自動車のモーター等のソーシングと開発購買を行っています。具体的には、設計・開発部門と一緒になってコストを作りこんでいく業務です。
あと私は、甲府明電舎という子会社から親会社に出向で来ており、甲府明電舎時代は生産部門向けの量産購買も行っていました。
山下
現在は企画管理課でシニアエキスパートとして在籍しています。主に行っていることは、CPPの社内教育で、毎年上期と下期に勉強会を開催しています。その他にも、データベースや基準・規程の管理、サプライヤー評価等を行っています。
私がCPPを取組み始めたのは、現場の課長時代でした。その後、嘱託として調達部門の後進人材を育成する担当になり、かれこれ13年程経ちました。
私が調達部門に異動してきた当時は手書きの教育資料が10年以上、長いものだと20年以上使われていました。
その後、私が調達部門の教育の見直しを任せられて、2008年頃からCPPの受験を組織的に行えるように推進してきています。
異動当初は、調達がどのような業務を行っているのかあまり理解していなかったのですが、CPPガイドを読み込んでいくうちに業務の概要が非常によく分かりました。
今では、新入社員・主任等階級ごとに合わせて教育テキストを作成していますが、主な内容はCPPガイドから抜き出しています。
CPPを導入されるところをお伺いしましたが、その内容をもう少し深堀させていただければと思います。
2008年以前の段階で既に手書きの教育資料があったとのことですが、当時、CPPに切り替えたきっかけや、課題感等がありましたら教えてください。
山下
率直に情報が古く、見直しもされていなかったからですね。
当時の教育資料は1986年に作られ、その後2004年で改訂が止まっていました。
その理由は、インターネット等の情報リソースがあまり普及していなく、2年ごとに少しずつ見直しを行っていたようなのですが、インターネットが普及していくにつれて、“必要な情報は自分で取りにいく”といった個人の学習サイクルのようなものができてしまい、徐々に全体を見て、知識やレベルを底上げするような教育資料の見直しがされなくなってしまっていたからのような気がします。
私が異動してきた後は、教育資料を全面的に見直して、変えていきました。
当時、教育資料とCPPガイドを照らし合わせた時、何か違い等を感じたことや、印象に残ったこと等ありましたら教えてください。
山下 当時の教育資料はモノのづくりに関する内容が多く、法律関係やマネジメントに関する内容はあまりなかったんですね。一方で、CPPはその部分が詳細に、また幅広く書いてあり、今の教育テキストに盛り込んでいます。
購買調達に関する資料は、生産技術等の他の分野と比べると情報は少ないと思いますが、それでも他の購買調達に関する資料、情報の中からCPPを知ったきっかけ、選んでいただいた理由等教えてください。
山下
見直しを進めていた2008年頃は、正直申しあげると調達の戦略等があまり決められていなかった印象でした。
その中で、やはり”今後は戦略的に調達をすることが大切だ”と思い、色々情報を探している所でCPPと出会い、「これだ」と思い選びました。
その後、CPPに書かれている戦略等の内容は、弊社の教育にも取り入れました。
今では、新しく入ってきたメンバーでもCPPのテキストを読むことによって、調達本部が何をしようとしていて、どこに向かっているかが分かっていただいています。
山下
私は53歳の時に受験して、合格しました。
当時、開発購買等は現場で経験したことがあるので理解できたのですが、交渉テクニックや法律関係はあまり理解できていなく、試験は2~3回落ちました。
記憶することになかなか苦労した経験もあったので、今は知識等を吸収しやすい若い世代にはなるべく早めに学習と受験をさせています。大卒で入社してきた社員には、入社一年目で資格試験を受験させています。
今の弊社の教育方針、目標としては、入社3年目以上は全員資格取得をすることを掲げています。
因みに、大体の延べ人数ですがB級は80名、A級は30名が取得しています。
異動、転籍等のジョブローテーションの関係で資格取得者が現在もいるわけではないのですが、今の部署では、部署内の約8割の方が資格取得しています。
今までのお話をお伺いすると、CPPを社内導入するにあたっての障壁はあまり無かったように見受けますが、何か難しかったこと等ありましたでしょうか?
山下
そうですね…、弊社は資格取得することに対しての報奨金制度があるのですが、CPPはその対象に入っていなかったので、私や部長が会社に対して「CPPは非常に網羅された内容で、合格することも難しいので社外資格の枠に入れて欲しい」ということを何度も言いました。
結果、社外資格枠には入れてもらえたのですが、CPPが専門的な資格だと思われているせいか報奨金までは中々認められていないですね。
なるほど。受験費用の補助とかそういうのはいかがでしょうか?
山下
テキストと受験の費用は会社から出しています。
ただ、受験に関しては社内で勉強会と理解度確認テストを行い、そこで正答率7~8割の人だけを、私が推薦して、会社補助が受けられることになっています。
保坂さんも、社内テストを突破して、試験も1回で合格しました。
会社の報奨金の話やサポートの話、そして実際に大変多くの方が取得されている話等をお伺いして、御社のグループや経営層側で、何か変化があれば教えてください。
山下 6年程前から関係会社も含めて教育をしています。ある会社では部長層も含めて取得してもらいました。グループ会社も含めて、どんどん広まっていけば、評価のされ方も変わってくると思っています。
御社の調達方針等もCPPがベースになっていたりするのでしょうか?率直に、役に立っていますでしょうか?
山下
十分役に立っていると思います。
調達方針も含めて、至る所にCPPのエッセンスが含まれていると思いますね。
今までは社内で調達部門の地位があまり高くなかったのかなと思いますが、最近になって調達部門の出身者が役員になる等、変化が出てきたのかなと感じています。
続いて、今度は保坂さんにお伺いできればと思います。
これまでCPP導入のバックグラウンドのお話を伺いましたが、実際に保坂さんが会社から資格取得を促された時、正直どのように感じましたでしょうか?(笑)
保坂 そうですね(笑)。正直申しあげると、その時は仕事が多忙を極めていて、時間的な制約が大きくて、少しネガティブな気持ちはありました。 家庭もあり、時間をどのようにして作ろうかな、と悩みましたね。
実際に資格を取得されている方と、これから取得される方とでは業務で何か違い等ありますでしょうか。
保坂 具体的にはすぐに出てこないのですが、やはりCPPの内容を理解しているという点で、業務への取組み方と言いますか、マインドセットが異なっているのかなと思います。
御社の購買調達プロフェッショナル人材像、これから目指す方向性等について教えてください。
山下
CPPだけではなく、環境に関する検定も取得するようにしています。
やはり、これからは環境の時代なので、環境教育にも力を入れています。
お二方にお伺いしたいのですが、これからの会社への貢献、キャリアアップ等今後の目標等ありましたら教えてください。
保坂
私は、子会社から出向で来ているので、いつかは戻ることになります。
戻った時、今学んでいるCPPの内容を体系だって整理して、子会社でも標準化できるように展開していければと思っています。
山下
あと何年いられるかは分かりませんが、それまでは社内教育を充実させ、知識・ノウハウの継承に貢献していきたいと思っています。
今も、新しいものはどんどん取り入れていますが、これから出てくる新しいものも有効活用できるかどうか検討して、積極的に取り入れていきたいと思っています。
最後に、CPPの学習に取り組んでいる方にお一言ずつコメントを頂ければと思います。
保坂
今回受験してみての感想ですが、受けるタイミングが重要と感じます。
私は調達業務に約7年間携わっていますが、調達の経験がある程度無いと合格が難しいと思います。あまり早く取得しても、単に知識を詰め込むことになると感じていて、業務との結びつきを理解しながら学習すると効果的かと思います。
経験を積んだ後に、CPPの学習に取り組むと「今までの業務の振り返り」「新しい発見」「苦手な分野の集中学習と克服」ができると思います。
私は、最初は少しネガティブな印象を受けたと言いましたが、絶対自分のタメになる内容なので、今から受ける方は頑張ってほしいなと思います。
山下
CPPは非常に範囲が広く、きちんと内容を理解していないと回答することが難しい試験なので、テストのために暗記するような学習では合格はできないと思います。
何よりも、”一番は本人のやる気”だと思います。長年、社内教育を受け持ってきましたが、やらされ感のある人は真面目にやらないですし、一方で言われなくてもやる人はやります。
私は、勉強会で「この人のやる気スイッチはどこにあるのか?」ということを意識しています。
これから組織展開を考えている職場の上司や、教育担当者の方々も是非「本人をやる気にさせること、動機づけさせること」が、最初の一歩であるということをご参考にしていただければと思います。