2022年2月25日
アステラス製薬株式会社 中島 英之様(CPP-A級取得)に、資格取得の背景やご活用についてお伺いしました。
調達部 マニュファクチュアリング&サプライチェーン
課長 原薬担当・ロジスティクス担当 中島 英之 様
(CPP-A級取得)
※以降敬称略、所属・役職はインタビュー当時
現在のお立場と組織内での役割について教えてください。
中島
マニファクチュアリング&サプライチェーンという組織に所属しています。
この部門は生産系と物流系の直接材…、具体的には原材料や原薬、包装材、添加剤などの最終製品に関わる商材の調達部門になり、商材ごとでカテゴリーが分かれています。
私は、特に原薬関連…、医薬品業界で言うところの”低分子合成して医薬品を作る工程”の原薬周辺を調達するカテゴリーに所属しています。
ただ、私の場合は原薬だけではなく出発原料や中間材も含めた商材の調達と、物流関連全般も担当しています。
立ち位置は、一応”日本の調達部”ということなのですが、機能的にはグローバル調達の組織になっています。
先程の、マニファクチュアリング&サプライチェーンは日本だけではなく、欧米にもメンバーがいて、全体ですと大体20名程度の組織になります。その中でも原薬カテゴリーは7名程度になります。
国内外の人財が活躍されている組織の中で、CPPの社内認知度はいかがでしょうか?
中島 そうですね…、認知度が高まってきたきっかけにもなりますが、2013,14年頃から調達部で「組織的にCPPを資格取得していこう」という方針があり、年に2~3名程度の割合で、上長からの推薦と本人の意思で、資格取得が推進されていました。それで、資格取得者も増えていき、次第に認知度が高まっていった、ということが最初の流れになりますね。
CPPを展開していく上で組織の中にあった課題感や目標などの背景について、もしご存知でしたら教えてください。
中島
あくまで私の認識になりますが、私は30歳半ばで異動してきました。
当時は新卒や経験年数の浅い方が調達部に異動してくることはなく、平均年齢は今よりも若干高めな印象で、業務のノウハウやテクニックは非言語的…、それこそOJTなどで伝承してきたと思います。
それが、徐々に若い人財も増えてきて、当時の組織長達が「日々の調達業務で発生している事象やアクションが製薬業界特有のものなのか、一般的な購買調達の知識や手法、考え方に基づいているものなのかどうかを知っておいた方が、組織として必要な人財に成長していくだろう」と考え、「体系的に学ぶ教材や機会が必要」と判断したのかなと思います。
会社自体が多様化などの変化するタイミングでCPPの導入が進んでいったということでしょうか?
中島
順番としては多様化していく少し前からCPPは使わせていただいていました。
その後にグローバル化の動きが出てきて、今はグローバル機能化しています。
先程、中途採用のお話がありましたが、その中でCPPの存在感と言いますか、何か役立っていることはありますか?
中島
そうですね…、中途採用の方には調達歴の長い方や違う業界の方など、様々なバックグラウンドを持たれた方がいらっしゃいます。
そういう点では、製薬業界に新鮮な購買調達のやり方や、他の業界の情報などが入ってきていますが、やはり汎用的な視点、共通の視点を持ってもらうという点ではCPPは大切なリソースかなと思います。
中島さんがCPPを取り組むときの心理的な障壁、例えば負担に感じたことなどありましたら教えてください。
中島
強いて言えば、日常は業務で忙殺されてしまうので、それとは別に勉強の時間をとらないといけないというか、とる覚悟したことですかね(笑)。
いかに学習する時間を確保していくか、ということが当時の心理的負担であり決意が必要でしたね(笑)。
お忙しい業務の中、学習時間を作るなど負担を感じる中で、CPPで学習した内容が業務とリンクしたようなエピソードがあれば教えてください。
中島
CPPガイドを学習する前までは、調達の業務は受け身のようなことが多いのかなと感じていました。
ただ、当時の部長が「これからは受け身ではなく、ビジネス部門に提案していこう」「プロアクティブに行っていこう」ということを調達部全体に向けて発信していて、本当に共感しました。
後々CPPガイドを学習していくと、部長が発信していた内容がCPPガイドの「これからの調達のあり方」について書かれているところにも同じように書かれていて「部長もCPPを勉強されたのかな?」と思うくらい驚きましたね。
その時、調達部の方向性とCPPガイドの内容の整合性に気づいた…というか、実務的な部分だけではなく、マネジメントのところで普遍的に通じる考え方があるんだな、ということを実感しましたね。
現在、大体何名くらいの方が取得されていらっしゃるのですか?
中島 個人で受験している方や、合格した後に異動する方もいますので一概には言えませんが、年間3名程度受験をしていて、今は大体10名程度の方が取得していますね。
資格取得をした後、CPPガイドを読み返したり、実際に業務で役に立ったりしたエピソードがありましたら教えてください。
中島
あまり大それたエピソードではありませんが、過去に調達業務でオランダ駐在していたことがありまして、そこで現地の会社と製品の契約交渉を英語で行っていました。
その際、LME(London Metal Exchange)という略語がさらっと出てきて、CPPで事前に知っていたお陰で、相手が何を言っているのか分かり大変助かりました。
体系的な知識があると、関連する内容に早く気づけるのかもしれませんね。
CPPの内容が“共通言語”として社外で活用できたお話を伺いましたが、社内ではいかがでしたでしょうか?
中島
そうですね。開発購買の関連では活かせたのかな、と感じています。
具体的には、医薬品の開発フェーズにおける原料調達なども担当しているので、開発部門視点のマインドセットやスピード感などを意識・理解しながら進めることができるようになりました。
一方で、調達部門の視点でも事前にどのような提案をして、開発段階ごとにおけるサプライヤー評価、管理、方向性などの考え方など、現場の実態と非常にマッチしており、役に立ちました。
CPPガイドは電気電子業界や組み立て産業に関する内容に触れていることが結構ありますし、恐らく中島さんも感じられる部分があったかと思います。
最近はあまり聞きませんが、以前は「うちの業界にはCPPは適用できない、関係が無い」といったご意見をいただいたりもしました。
御社は医薬品業界ですが、中島さんはCPPガイドの内容をどのようにして理解していったのか、役立つものにしていったのかを教えてください。
中島
おっしゃる通り、組み立て産業が前提で書かれているのかなという部分もありましたが、自分自身の業務に置き換えましたね。
例えば「部品」という単語を、私の業務の「原料」に置き換えて取り組むと、自分自身の業務に通じる内容になったりしました。業界が違えども、汎用性を持たせてある内容だと思いますので、必ず自分の業務に落とし込めるところがあると思います。
最後に、どのような方がCPPを取り組まれた方が良いか、中島さんのお考えを教えてください。
中島
そうですね…、調達部門に異動してきた方や入社して配属された方にとって「何が社内の流儀で、何が業界の流儀で、そして何が購買調達の世界で汎用的なのか?」といった、そのあたりの線引きや区別を体系的に学べることができます。
業務を経験している人も、より理解が深まると思います。
言い換えると「仕事を進める上での視野や知識がとても広がるツール」として非常に役立つものだと思いますので、そこを学習と受験のモチベーションにしていただければと思います。