企業インタビュー

江崎グリコ インタビュー

2021年4月13日

調達部門の中期目標に「調達プロフェッショナルの育成」を掲げ、CPP資格の導入を全社的に推進した江崎グリコ株式会社。単なる資格取得にとどまらず、理論の実務転用と組織内コミュニケーションの深化を両立させ、調達部門の戦略性を大きく引き上げた。CPPを共通の理解軸として活用する組織の姿から、業界を超えた資格の価値が見えていいました。

グループ調達部
部長 森田 裕之様 秋山 幸司 様

※以降敬称略、所属・役職はインタビュー当時

江崎グリコ株式会社
目次

【CPPで実現する戦略調達の進化】
調達部門が挑むプロフェッショナル組織づくり

企業概要とCPP導入の背景

御社の事業内容とCPP導入の背景について教えてください。

森田 当社では「おいしさと健康」をテーマに、菓子・アイス・乳製品・食品など、幅広いカテゴリーの商品を展開しています。その中核を支えるのが、原材料や包材を調達する私たちグループ調達部です。多様化する市場環境のなかで、より効率的で持続可能なサプライチェーンを構築するためには、従来の属人的な調達から脱却し、再現性のある手法と戦略的な視点が不可欠だと考えていました。
そのタイミングで出会ったのがCPP資格です。調達業務に必要な知識を、論理的かつ体系的に学べるカリキュラムは、当社の方向性に合致していました。これまでは経験と感覚に頼る場面が多く、個人のスキルに依存しがちでしたが、CPPを導入することで、部門全体に統一された理論を根づかせられると確信しました。

江崎グリコ株式会社

改革の進め方とCPPの活用法

CPPを導入するにあたって、どのように改革を進めたのですか?

森田 2020年5月にグループ調達部の責任者として着任した当初から、部門の現状分析に着手しました。最初の100日で、各メンバーのスキルや業務内容、進め方の違いを観察し、組織としての課題を浮き彫りにしました。その結果、調達業務における判断基準や戦略の立て方にバラつきがあることがわかり、「調達プロフェッショナルの育成」を中期方針のひとつに据えることを決断しました。
CPPについては、私自身が以前の職場で導入を進めた経験があり、組織のスキル標準化に大きな効果があることを実感していました。グリコでもその知見を活かし、マネージャークラスにはCPP-A級の取得を必須としました。そこでJMAの研修を通じて基礎から体系的に学ばせると同時に、現場の課題と紐づけながら、品目別に調達戦略を立てる活動を進めました。CPPを単なる資格取得に終わらせず、日々の実務とリンクさせることに重きを置いています。

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CPPの実務での効果

資格取得が日常業務にどう活かされましたか?

秋山 CPPの教材を最初に見たときは、その厚さに少し驚きました(笑)。ただ、中身を読み進めるうちに「これは自分の実務に直結している」と感じました。調達のあるあるが論理的に整理されていて、「自分の中では理解していたけれど、他人にうまく説明できなかったこと」が、言語化されていて非常に納得感がありました。
これまでOJTで何となく身につけてきたことが、CPPの学びを通して頭の中で整理され、他人に説明できるレベルに引き上げられたとも思っています。実際、今は学んだことを応用して、品目別に戦略を立てたり、仕入れ方法の改善に活かしたりしています。調達の業務に対して、より「論理的に考える習慣」が身についたと感じています。
さらに、社内で試験対策の勉強会を行い、メンバーと一緒に学び合う場を持てたことも非常に良かったです。最初は「合格する」ことが目標でしたが、回を重ねるごとに「これってうちの業務にも応用できるよね」という会話が自然と生まれ、実務への展開にもつながりました。勉強会を通して、社内のコミュニケーションも活性化され、調達に対する意識やモチベーションも高まったように思います。

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CPPの応用と業界間のギャップ

CPPは製造業向けの資格という印象もありますが、食品業界でも活用できますか?

秋山 たしかにCPPの教材には、製造業や装置産業の事例が多く載っています。ただ、それがマイナスだったとは思いません。むしろ、自分たちの業務にどう当てはめられるかを考えるトレーニングになりました。異業種の考え方に触れることで、調達の原理原則をより深く理解できたと思います。
たとえば、設備投資や生産プロセス管理に関するフレームワークを、食品原材料の供給や在庫管理に応用して考えるといった工夫が求められます。勉強会では「この考え方、うちでも使えるかも」「この手法を原材料調達に置き換えるとどうなるか」といった会話が飛び交っていて、部門全体の応用力が確実に高まっています。CPPは単に知識を得るためのものではなく、考え方や視点を増やすための手段だと思っています。「なぜこの判断をするのか」「どの手法を選ぶのか」といった説明責任を果たす上でも、理論を持っていることは強い武器になります。食品業界のような日常消費材の分野でも十分に通用する資格です。

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CPPがもたらした組織的変化と展望

CPP導入後、部門や組織にはどのような変化がありましたか?

森田 最も大きな変化は、組織としての調達の意思決定が格段にスムーズになったことです。CPPを取り入れたことで、個人の経験に頼るのではなく、全員が同じロジックに基づいて議論できるようになりました。これにより、部門内の連携はもちろん、他部署や経営層との対話も明確になり、調達の戦略性が企業全体に浸透していった感覚があります。
また、資格取得を一つの目標としたことで、若手とベテランの間に自然なコミュニケーションが生まれました。勉強会やOJTの場で知識や経験を共有し合う文化が育ち、それが業務改善にもつながっています。CPPを導入したことによって、単なるスキル習得にとどまらず、組織としての学習体質を育てる土台ができたと思います。
今後は、CPPで学んだ知識や手法をベースにしつつ、それを発展させて自社独自の調達スタイルを築いていきたいと考えています。社内外に新しい価値を提供できる発信型の調達部門を目指し、挑戦を続けていきたいです。

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