CPPホルダー(今泉様)インタビューその7|CPP取得後実務で役にたったこととは?
「当たり前のことを、徹底してやる」ということに気づきを得ることができました。
CPPホルダーの今泉叔久さんにお話を伺いました。日本能率協会の安部武一郎がインタビューします。(以下敬称略)
CPP取得後実務で役にたったこととは?
安部
受験をされてみて実務の中ではどのように役に立てていただいていますか?
今泉
バイヤーとしての実務に関しては、コスト構造改革のために注力するポイントが明確になったと思います。
当社では、実務範囲は全部個々人のバイヤーが属人的におこなっています。
さきほども述べましたが、手配業務からサプライヤー選定、見積もり依頼、価格決定、コストダウン交渉、納期の調整、品質トラブル対応、サプライヤー管理までのほとんどを一人のバイヤーがおこなっています。
ですから、どうしても手配業務や納期調整に時間を取られて、コストの査定だったり、交渉というのがおろそかになっている、という課題があったと思います。
コスト分析や査定も、情報収集する方法やルールがある程度必要であり、その内容に従って実務を行う事で効率を上げていけるのだと思います。
マネジメント業務に関しては、さまざまな決裁業務やコストダウンの推進、管理、品質・納期のトラブルのフォローなどがおろそかになっていたかもしれません。
優先すべきもの、階層分け、目標の設定・管理など役に立っていると思います。
また、CPPの内容はどれも当たり前で特別な手法ではありません。しかし、「当たり前のことを、徹底してやる」ということに気づきを得ることができました。
例えば、スペンドアナリシスの内容はどれも当たり前ですけど実際にそこまで分析していない。分析すれば何かひらめきが出るケースもあります。
それから、コスト分析でも役に立ちましたね。分析できるレベル毎に分け、データベース化する。材料加工方法などをサプライヤー様と詳しく話せるようになったと思います。
安部
実際にサプライヤーの方とどのようにお話されたのですか?
今泉
半導体や電子部品を扱っているとその市況や流通量に左右されることが多いのですけれど、実は材料とか加工方法とかにも今まで以上に突っ込んで、やりとりができたということです。
もちろん、それでコストが劇的に下がるというわけではありませんが、情報量が多い分イニシアティプを取れますし、サプライヤー様も真摯に受け止めてもらえます。
安部
CPP・B級資格にしても、A級資格にしても、周辺知識や、これまで携わってこなかった範囲の知識が頭に入り、サプライヤーの方とお話をする際の引き出しが増えたということですよね?
今泉
増えました。今までは経験からの言葉だったり、断片的な知識でしかなかったのだな、と感じます。CPPを学習した事により、それが繋がってきたと。以前と比べて、頭の中の情報量が多くなったことを実感しています。
例えば、スタディーガイドには開発購買の1つのツールとして調達戦略シートがありますね。そういったツールは開発購買だけではなく量産購買品においても使えます。
対象品の特性であったり、価格推移などを1つのシートにまとめることによって非常に交渉しやすくなったと思います。
いろいろトライして作っていますが、非常に役に立っています。
安部
他のマネジメントされている方々にも共有して、そういうツールを使って管理をすることがすでに始まっているのでしょうか?それとも今ご自身で試されているところですか?
今泉
今ちょうど自分で試しているところです。
他にも、VE/CR集を作って「各担当者がどういうふうな経緯でコストダウンをしたか」という情報を集めることによって、私がマネジメントをしている領域で、それを共有する動きをとっています。
はじめたばかりなので、上手くいけばその情報を展開していきたいと思っています。
安部
お話をお聞きすると、一人の方が調達の前工程から後工程まで完結しているということは、もともと今泉さんも比較的広い調達業務には携わっていて、様々な経験がおありになるのですね。
今泉
私は、入社した時は量産購買をやっていました。その後、開発購買業務を経験し、また量産購買に戻ってきました。
そういう意味ではいろんな経験をさせていただいているなと思います。
開発購買が企画段階から参画し、目標製造原価に向かって最適な調達品を提案していくという重要性も理解しています。
しかし、現実はすべてがキレイに枠組みされているわけではないものですから、量産購買でも開発段階で絡むケースは多々あります。
実際に、量産購買の担当者のほうが豊富な知識や情報量を持っていたりもします。
あの部門が決めた事だから良いとか、自分の部門の仕事だから完結しなければならいとかではなくて、いろんな人の経験や知識を共有して課題を解決することが重要であると感じています。
安部
対・社外のサプライヤー様との交渉の深みが変わり、一方で対・社内の購買調達業務への理解や配慮が深まることによって業務の進めやすさが変わってくる。
これから長い時間をかけて会社の中でも、調達の考え方を理解・浸透させる活動をされることになると思います。
その為の教育ですとか、育成・浸透の構想、方向性についてはいかがお考えでしょうか?
今泉
そうですね、もう一度調達権限を浸透させる事からはじめていかないといけないのかなと思っています。
スタディーガイドにも書いてありましたが、そのためには調達部門の能力アップ、地道な周知活動が必要です。
社内においても、調達部門は受け身の仕事と思っている人も多くいると思います。
製造原価の大半を占める部材、外注加工費の管理責任を持っているという自覚と社内へのアピールを積極的に行う、自部門から情報発信をしていく事がまだまだ足りないと感じます。
また、直接的に関係の無い営業部門との定期的な情報交換などで、当社のお客様が何を要望しており、調達部門として何かやるべきことが見つかるのではないかなどを考えていくのもおもしろいと思います。
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