グローバル調達の取引・支払条件
9月になりました。
台風が過ぎ去る毎に、秋の気配が深まってまいります。
勉強の秋にふさわしい、少し真面目なCPP調達コラムをシリーズでお届けいたします。
(本コラムは日本能率協会 ものづくりチーム長の安部が過去に執筆したものです。製造業の調達人材に必須の知識を体系化した「調達資格制度(CPP)」のテキストから、特に教育ニーズが高いスキルを紹介していきます。)
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JMA安部のCPP調達コラムシリーズ①
CPP調達コラム① グローバル調達の取引・支払条件
M&Aや異業種との提携、系列を超えた取引など、環境変化に対応するため新たな協業が模索されている。製造業においては、グローバル化がものづくりプロセスの再編を促した。製造原価の最大比率を占める原材料費・委託費の管理責任を負う調達部門にも、トータルコストやリスクを最小化させる戦略的な思考が求められている。
その一つがグローバル調達である。海外でしか手に入らない原材料や安価な部材を日本に輸入するだけでなく、第三国で調達したものを他国の工場へ供給したりと、国境をまたぐ国際調達には様ざまな形態がある。海外に生産拠点をもつ企業は、現地調達を拡大することでより早く・安く市場に投入する体制を整えてきた。また、モノの購入だけでなく、海外のEMS(電子機器製造受託サービス)・ODM(相手先ブランドによる設計・生産)企業との水平分業も調達の一種とされる。このような国際調達の集積をグローバル調達と捉えることができる。
コストダウン、自社にはない技術力の確保、輸出入を均衡させ為替リスクを低減するなど、グローバル調達を行う理由は多岐にわたる。国内、海外を問わず、適正な供給者から適正な品質・数量・納期・価格で調達することに変わりはないが、国際調達では取引条件、支払条件が大きく異なる。
日本国内の取引では、買い手の指定する場所へ売り手の責任で納入する条件が多いが、国際取引では買い手が輸入コストの負担や保険、輸送手配などの責任を負うことが一般的だ。国によって商取引の習慣が異なるため、国際商業会議所が制定した貿易取引条件とその解釈に関する国際規則「インコタームズ」が用いられる。なお、インコタームズでは所有権の移転ポイントについての規定はないので、自社と供給者とで取り決めを行う。
支払い条件は、売り手のリスク認識によって設定される。売り手、すなわち供給者にとって最も安全な方法は、銀行が発行する支払い確約書であるL/C(信用状)による支払いだが、手続きが複雑なため実際に使われることは少なくなっている。信用状なしの手段で安全なのは、手形支払後に船積書類を渡すD/P(手形支払書類渡し)、それより安全性は落ちるがD/A(手形引受書類渡し)がある。近年では簡便で迅速なT/T(電信送金)も用いられるが、品質違いや納期遅れなどが起きると買い手にとってもリスクが高い。ユーザンス(一定期間の支払い猶予)がつけられれば、利子が価格に上乗せされることもある。
条件によってかかるコストが大きく異なるため、取引の仕組み、メリット、デメリットを踏まえて適用条件を判断する。また、国際調達では為替変動、カントリーリスク、日本と異なる法律や税制など管理すべきことが増える。国内調達品と価格比較する場合は、原価だけでなく納入までのコスト、リスク発生時の対応費用までを加味して比較しなければならない。
~CPP調達コラム①おわり~
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