横河マニュファクチャリング インタビュー
購買の戦略企画と、コストダウン、サプライヤーとの総合的な窓口全般も我々の役割です。
横河マニュファクチャリング 館慎吾さん(技術購買部 購買管理課 課長)、関根 徹也さん(技術購買部 購買管理課)にお話を伺いました。日本能率協会の安部武一郎がインタビューします。(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)
海外調達の現地化とは?
安部
まず、技術購買部・購買管理課の位置づけとお仕事の役割について簡単にご紹介いただけますでしょうか。
館
我々の部署は、購買の戦略企画と、コストダウンをミッションとしています。
それから、海外進出、グローバルでの調達の推進とグローバルでの商流の確立がメインの業務です。
あとは、サプライヤーとの契約関係、取引契約を結ぶにあたってサプライヤーとやりとりを行っており、サプライヤーとの総合的な窓口全般も我々の役割になります。
安部
購買業務の中で商品側のコストダウンや社外とのやりとり全般を実施していらっしゃるのですね。
館
はい。
ただ、工場側の資材が、実際に注文書をだして購買しますので、我々は、価格決定とどこから買うかという商流の決定をしています。
安部
グローバル調達というお話がありましたが、海外サプライヤーからの調達は増えていますか?
館
我々が海外調達と言っているのは、ほとんどは現地化の意味ですね。
海外拠点がアウト-アウトで買えるように推進をしています。もちろん、加工品等々海外から買ってもいます。
どうやってコストダウンをしたらいいのか、わからなくて困っていました。
どうやって論理的にコストダウンしたらいいのか?
安部
館さんはCPP・A級資格も取得されていますが、最初にCPPを知ったのはどんなきっかけでしたか?
館
私が購買に配属されたのが2007年です。
その前は工場にいましたので物を買うことは理解していたのですが、購買という組織にはその時初めて所属しました。
そこでコストダウンというミッションを与えられるわけですが、どうやってコストダウンをしたらいいのか、わからなくて困っておりました。
OJTが中心で、どうやったら論理的にコストダウンを進められかと模索しているときに、CPP資格制度にいきあたりました。
安部
ご自身でお探しいただいたのですか?
館
インターネットで探しあてましたね。
安部
ちょうどCPP資格制度の創成期ですね。
館
私がCPP・B級資格に合格したのが2008年でした。
ちょうど日本能率協会でこの資格制度をやりはじめた時期ですね。比較的早い時期かなと思っていまして、タイミングがちょうどあっていたと思います。
体系的に教育するような仕組みがなかったのです。
購買業務の人材育成の課題とは?
安部
先ほどOJTのお話がありましたが、一般的に購買業務というと先達の背中をみて育つという考えがされることが少なくないと思います。
そういう中で、その当時組織的に人材を育成していくような考えはありましたでしょうか?
館
体系的に教育するような仕組みはなかったですね。
私自身もそうなのですけれど、購買には、資材関係、生産管理、あるいは現場を経験した人達が多くいて、ある程度の現場経験の下地がある人たちですので、「それまでの経験を生かしてコストダウンしなさい」と言われていました。
安部
まさに属人的なスキルで推進する感じですね。
館
私が購買部署に来たときも、特に専門的な教育は無かったです。
関根が購買にきたのは・・・?
関根
3年から4年前です。
館
それまで資材関係をやってきたので実際に物を買うという行為はしていたのですが、コストダウンということに特化したのは多分初めてだったと思います。
安部
「どうやってコストダウンをしよう」と思った時に、実際にいろいろな方法があるということを勉強されたと思うのですが、最初にCPP資格を取得されたのが館さんですか?
館
おそらく横河マニュファクチャリングの中では私が初めてだと思います。
自分の中にひとつの自信ができたと思います。
バックグラウンドを持つことによる自信とは?
安部
CPP資格制度がお役にたっているのは、業務の中でどのあたりでしょう?
館
CPPの学習は幅広い領域をカバーしなければいけないので、経験したことの無い分野の勉強も必要でした。
そういう意味では、広く浅く勉強することができて、自分のスキルアップをする上で非常に効果が大きかったと思います。
それから、CPP資格を取得したことで、自分の中にひとつの自信ができたと思います。
サプライヤーさんと交渉するときも、自分の中にきちんとバックグラウンドがあるのだという自信に繫がりました。
安部
対外的な自分のセルフイメージ、立ち位置に自信が持てた効果はきっと大きいですよね。
社内の方との関係性への影響はいかがでしょうか?
購買機能に「そもそも教育が必要なのだ」とか「スキルアップが必要なのだ」とか「知識が必要なのだ」ということは、初めに始める際には説得が必要なケースも少なくないようようですが。
館
ここ数年、何名か受験をしてCPP資格を取得した者も増えてきていますが、まだまだ購買に対する教育の重要性、必要性に関して認知されていない部分はあると思います。
まだまだ購買のスキルは属人的で経験値の部分が大きいだろう、という認識も残っているのかもしれません。
一方で、社内で保有資格を登録する制度があるのですが、CPP資格の取得者が少しずつ増えてきていたことで、登録認定がとれ、社内スキルとして認知されてきたところです。
安部
それは何かしらのインセンティブに繫がるのでしょうか?
館
直接的なインセンティブにはまだ繫がっていないですが、自己スキルとして登録ができます。
安部
自己アピール材料になるということですね?
館
はい。
日本能率協会ではCPE(生産技術者マネジメント資格)もやられていますよね?
安部
はい、あります。
館
そちらは、受験料の補助等が出て会社が推奨する資格になっています。CPP資格制度もいずれそうなるのではないかと期待しています。
安部
館さんをはじめいろいろな方がCPP資格の取得者になられていますが、
合格率が高いのが御社の特徴ですよね。
館
CPP資格の取得を推奨しているからかもしれません。
ただ、なかなか勉強する一歩が踏み出せないということはあります。チャレンジしようとすると幅広い分野を学習しなければなりませんからね。
会社としてスタディーガイドを用意しているので、環境は整っていました。
CPP資格を初めて知った時の印象とは?
安部
確かにそうですね 笑。あの分厚いスタディーガイドをみると、なかなか最初の一歩を踏み出すのが難しいところがあるかもしれません。
関根さんは、先日のCPP・B級資格・試験直前対策セミナーにも参加していただきました。これから受験されるお立場ですが、最初の印象はいかがでしたか?
関根
きっかけは、館からこういった資格取得があると薦められて、チャレンジしようと思いました。
会社としてスタディーガイドを用意しているので、環境は整っていました。私としては入りやすかったと思います。
身近な上司や隣の課の人間もCPP・B級を受験して合格したという話も聞いていましたので、自分の中でも非常に興味が湧いていました。
安部
4年程前に、今の購買企画的な位置づけの業務にうつられて、いろいろな部署とのやりとりにともなって周辺知識が必要になったと推測するのですが、その辺の課題はおありでしたか?
関根
そうですね。
それまでは、工場で、実際に注文を発注するという形で購買の中の一部をルーチンワークでやっていたのですが、今の管理側の部署に移ってからは購買の体系や社内の位置づけを理解するために、何か勉強資料があればいいなと自分でもずっと思っていましたので。
安部
「それまでは購買の一部の業務をされていた」という認識でみられているということは、「購買の領域は広い」と感じておられるということだろう思います。
例えば、もし、以前の工場で実際に物を買っていらっしゃった業務の時にこのCPP的な幅広い視野を持っていらっしゃったとしたら、それもお役に立ちましたでしょうか?
関根
はい。非常に役に立ったと思いますね。
自分がどの位置で仕事をしているのかというところから今回CPPのテキストを見させていただくと非常にわかりやすく、取引先様に対して接し方も違っていたと思います。
できれば定期的に対策セミナーを受けられるようにしたいです。
CPP取得のための勉強で大切なこととは?
安部
貴社は合格率が高いので、皆さまどのような勉強をされているのかなと非常に興味があります。
このインタビューを見られる方々の参考にもなると思いますので、その辺の工夫などお話しを聞かせていただけますでしょうか?
館
今回は、関根がB級試験対策セミナーを先日受講しましたが、最初に私が受験しようとしたときは、予算を確保していなかったので、スタディーガイドだけ購入してもらい、自分で勉強しました。
実は、私は二回目の受験で合格したんですね。できることなら、他のメンバーにはB級試験対策セミナーを受けて、万全を期して受験してもらえるのが理想だと思っていました。
関根の場合は、B級試験対策セミナーを受講しましたが、今までの受験者は、業務の中での実践と、スタディーガイドによる学習だけです。
今回、関根に対策セミナーを受講してもらったので、この経験を次の受験者に伝授してもらいたいとは思っていますが、できれば定期的に対策セミナーを受けられるようにしたいと思っています。
安部
基本的にはスタディーガイドからしか問題はでません。地道に勉強するのが大切だということですね。
館
地道に勉強時間をとって、忙しい中であっても勉強しないと合格するのは難しいと思います。
開発購買の中では無意識でCPPの経験があるのだと思います。
共通言語としてのCPPとは?
安部
先ほど他の部署の方にも資格の取得者の方がいらっしゃるというお話を伺いましたが、社内のコミュニケーションにおいて、共通言語ができたり、意志の統一がはかれたり、会話がスムーズになったりといったことはありましたか?
館
我々以外でCPP資格取得者がいるのは、原価企画課という、いわゆる開発購買をやっている部門です。
開発購買というのはCPPの中でも大きな位置づけですし、開発購買の部門と我々というのは、近い立場にあるので、会合するなかでは無意識でCPPの経験があるのだと思います。
安部
今後、関根さんやその後に続く方々が受験をしていくと、知識の統一化等々のビジョンは持てそうでしょうか?
館
それはあると思いますね。
「必ずしも無謀な交渉しているわけではなく、分析などをして、しっかり準備をして望んでいます」と言えます。
「スキルを持っています」という自信とは?
安部
CPP・B級資格、A級資格を取得され、実務や管理的なお仕事の中で、どのようにお役立ていただいていますか?
館
やはり戦略を企画する部分で役に立っています。
私の立場ですと、サプライヤーマネジメントです。
また、実務としてはサプライヤーと交渉する際のスペンドアナリシスでしょうか。コスト分析も大変役に立っています。
安部
サプライヤーさんの商品についてはサプライヤーさんの方が知識は深いと思いますが、そこに対して「調達の視点」から自信を持つと接し方が変わるのかもしれませんね。
館
気持ち的な部分の影響があると思います。
我々は商品に関する知識はサプライヤーには勝てないですけれども、バックグラウンドとして調達の知識を持っているので、「必ずしも無謀な交渉しているわけではなく、分析などをして、しっかり準備をして望んでいます」といえると思います。
安部
サプライヤーさんもCPPを知っていたら、信頼がおける証明にもなるのかもしれませんね。
館
ぜひ名刺に記載したいと思っています。
あるサプライヤーの方がCPP資格を持っており、名刺をいただいた際に「実は私も持っています、A級を持っています」といえたのは良かったですよ 笑
安部
サプライヤーの立場としても、バイヤーがどのようなことを考えながら業務にあたっていらっしゃるかを知ることはすごく有効だなと思います。
館
その方は名刺にもCPPと記載されていましたしね。
安部
そうですか。バイヤー側も「これはちょっと手強いぞ」と思ってしまうかもしれませんね 笑
「我々がまさにやろうとしていること」が書いてある。
製造業の調達にマッチしている、とは?
安部
関根さんはこれから受験されるということで、今大きく課題として捉えている点や、受験前に大変だなと思っていることなど、少しお聞かせくださればと思います。
関根
スタディーガイドはボリュームがあり、幅広い購買知識を読み取らないといけないのが一番大変なところかなと思っています。
安部
今まであまり関わっていない業務領域が多いですか?
関根
そうですね、8割ぐらいが自分の実際の業務と直接には関わってないと思いますが、内容全体としては当社の業務と違和感はないと思います。
安部
そのあたりは館さんも同じような経験をされていますか?
館
我々の製造業の調達に非常にマッチしているというところは大きかったです。
「我々がまさにやろうとしていること」が書いてある。
やろうとしている、やっていることを幅広くして、しかも深掘りした内容になっていると思います。
私は、もう「これだ!」と直感的に思いました。よく覚えています。
安部
最後に、お二人にこれからCPP取得を目指される方へメッセージをお願いできますでしょうか。
館
たくさんの方に知っていただいてもっとCPPの認知度があがればいいなと思っています。
私は特に社内的に調達のステータスの向上を目指して行きたいのです。多くの方にCPP資格を取得していただければいいなと思っています。
関根
試験対策セミナーも受けさせていただいたので必ず合格するようにあと1ヶ月頑張っていきたいと思います 笑。
それから、我々の部署にも新人が入りましたので、そういった意味でもこの資格を取得して、手本になるような購買マンになりたいと思っています。
安部
本日はありがとうございました。