CPPホルダー(今泉様)インタビュー

二足のわらじですね。プレイングマネージャーという立場です。

CPPホルダーの今泉叔久さんにお話を伺いました。日本能率協会の安部武一郎がインタビューします。(以下敬称略)

調達とマネジメントの二足のわらじとは?

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安部
まず、現在の調達業務と調達物についてご紹介いただけますでしょうか?

今泉
私が勤めている会社は通信機器製造メーカーです。

資材調達部に所属し、その中の半導体や電子部品の量産購買部門で働いています。

私はその中で、マネジメント業務と、一部調達担当を兼務しています。

二足のわらじですね。プレイングマネージャーという立場です。

担当業務では、発注や納期調整といった手配業務から、サプライヤー選定、コスト分析、コストダウン交渉など、調達業務全般をひとりである程度完結しなければならない部分と、部下の指導やトラブル時のフォローなどのマネジメント部分とで、なかなかバランスを取る事が難しいと感じています。

安部
調達のお仕事は、どのくらいの期間されてますか?

今泉
入社してから調達に関わっていますから、20年以上やっています。

安部
社内ではそういう方が多いですか?

今泉
20年クラスは、私含め2~3名程度です。

安部
異動されてくる方のほうが多いでしょうか?

今泉
私と同じく、新入社員として配属される人もいますし、異動してくる人もいます。
どちらが多いというわけではありませんね。年齢層としては、バランスが取れているかと思います。

安部
調達先は国内・海外両方ですか?

今泉
国内も海外もありますが、直接貿易はまだまだ少ないです。
海外製品は、国内の輸入商社を経由しての間接貿易がメインとなっています。

会社の事業構造改革が発表されました。その骨子の一つに「コスト構造改革」が発表されたのです。

きっかけはコスト構造改革

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安部
最初にCPP資格制度を知っていただいたきっかけは何だったのでしょうか?

今泉
私が持っている知識だったり、調達手法以外に何か新しい方法は無いだろうかとさまざまな情報を収集していました。
当時、インターネットや書籍で情報収集していたのですが、ネット検索でCPPの公式サイトを見たことですね、だいたい4~5年前だったと思います。
その時は「こういう調達の資格があるのだなぁ」と思った程度で、その時は特に受験しようとは考えていませんでした。

安部
CPP資格制度を見つけて、その後、時間がたってから受験された。その時、何かしらの課題を持たれていたということでしょうか?

今泉
はい。CPP資格制度を見つけた少しあとに、会社の業績悪化とともに事業構造改革が発表されました。
その骨子の一つに「コスト構造改革」が発表されたのです。

コスト構造改革の内容には「当社の関連会社も含めた調達の一元化」というテーマがありました。

日々の業務やトラブル対応に追われ、時間が経過してしまっている現状がある中で、「今の調達業務のやり方で本当に良いのだろうか」と改めて疑問に思いました。

また、当時為替が円高からゆるやかな円安方向に変わってきている時で、海外製品といった輸入品は高騰してくる可能性が出てきていました。

淡々と業務をこなす中で、「これではいけない」と感じた時にCPP資格のことを思い出し、トライしてみようと思ったのです。

安部
課題意識を持たれて、あらためてCPP資格制度の公式サイトをご覧になってこれが役にたつかもしれないと認識されたのだと思うのですが、その反応されたポイントはどこだったのでしょうか?覚えていらっしゃいますか?

今泉
調達に関する内容を網羅している資格が日本においてはこのCPP資格制度以外他に無かったことです。

それから、公式サイトの内容とスタディーガイドのサンプルを見たところ、業務で行っている事と同じような内容である事が分かり「これは役に立つかもしれない」と思いました。

もちろん、より知識も高めないといけないということもありましたが、構造改革でも発表されたコスト改革という事に対して何とかしなければいけない状況の中で、調達に関する「何かが詰まっている」と感じたのはCPP以外にはなかったのがCPP資格制度を取得しようとした決め手だったと思います。

基礎から応用も含めて広い範囲でやれると感じました。

CPPの範囲は基礎から応用まで網羅している?

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安部
CPPの公式サイトから、コスト改革に至るためにいろんな情報がありそうだぞ、いろんな知識が得られそうだぞ、という感覚を持っていただいたのですね?

今泉
そうです。内容もそうですが、タイミング的にも今が一番取り掛かり易いと思いました。

いろんなコンサルタントの方がいて、調達というキーワードではニッチな市場ですが、そこに携わっている方がブログやメルマガ、本を出されている方もいらっしゃって、何冊か購入したこともありました。

そういった内容を詰め込んで、実践したりはしていましたが、どうしても断片的になってしまい中途半端で終わってしまう。
CPP資格制度は基礎から応用も含めて広い範囲でやれると感じまして、知識習得とそれを実践するのに良いツールなのではないかと。

また、おまけに資格が取れるという事もきっかけのひとつでしたね。

当時は「やる気」しかなかったと思います。

勉強時間を作る上で工夫したこととは?

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安部
受験に際しては、基本的に今泉さんの個人的な頑張りで合格されたのだと推測するのですが、ビジョンや目的感についてはどのようにお考えでしたか?

今泉
そうですね、当時は「やる気」しかなかったと思います。受験する事にシバリはなかったので、とにかくやってみようと。
好奇心旺盛なところが良かったのかもしれません(笑)

実は、最初にスタディーガイドを購入して目の前にした時に、このボリュームをどこでどう時間をつくってやっていこうかというのは考えました。

結果、私の勉強場所はもっぱら電車の中でした。片道一時間半ぐらいの通勤時間です。
机に向かっての勉強は、自分なりのノートを作った以外はほぼしなかったですね。
そういう意味では時間を有効に活用して学習したと思います。

安部
今泉さんのケースでは、会社の中では勉強できない状況ですよね。

今泉
そうですね。それに、家に帰ったら家族との時間を大切にしたいので、結果的にやれるのは電車の中だったのかもしれません。

電車の中でこんなに勉強できるのだと自分でもびっくりしたぐらいでしたよ(笑)
実際電車で勉強できるのは2時間ぐらいで、ほとんどつり革につかまっての状態でしたが、週5日あればそれなりに勉強できるのです。

自分が普段行っている業務の延長線上の内容も多く、改めて確認するという点もありました。

勉強して楽しいと感じたわけは?

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安部
毎日2時間勉強するとなると結構な量ですよね。

今泉
スタディーガイドは全部で800ページ以上あって、かなりのボリュームなので一回読み返すと、すでに最初のほうは忘れてしまっている。

何回か読み返すだけでも、それなりに時間はかかってしまいます。
ですが、私は調達に長くいることもあって今までさまざまな品種の調達業務と、そのマネジメントを経験してきました。
スタディーガイドの内容は、どれも全く理解できないという内容ではなかったので、読んでいて楽しかったです。

自分が普段行っている業務の延長線上の内容も多く、改めて確認するという点もありましたし、もちろん、なるほどと思う点もありました。

安部
実務をやられている中でも、「このやり方でいいのだ」といった安心感も感じていただいた部分もありますでしょうか?

今泉
そうですね。
例えば、価格の査定方法や決定要因なども改めて形式知として学習すると、自分の頭の中で「なるほどそれもあったね」という確認と気づきが得られたといったことがありました。サプライヤー様との商談で言葉としてすぐに出てくるのも学習の成果だと感じます。

安部
試験を受けられた時の手応えはいかがでしたか?

今泉
CBT方式のテストは初めての経験でした。B級は1分あたり1問の割合で答えないといけないので、じっくり考えている余裕はなく、その場の感覚で答えていくようなイメージでしたね。結果的には合格でしたので「良かった良かった」と 笑

けっして自信があったわけではないです。

試験なので緊張もしますし、問題数が多く、調達に関する全般的な内容がランダムに出題されてくるような印象でしたので。

B級に合格したら管理職を対象としたA級は取るべきだと感じていました。

A級を受験しようと思ったきっかけとは?

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安部
A級を受験された動機は何だったのでしょうか?

今泉
私はマネジメント業務もやっておりますので、B級の試験を受けようと思った時に、合格したら管理職を対象としたA級は取るべきだと感じてはいました。

安部
スムーズにB級に合格されて、その勢いもかりてA級もトライしようと思われたということもありますでしょうか 笑

今泉
そうですね。
それと、試験日と場所が一定期間において、自由に選択できる事も受験しやすいと思います。
B級は、調達における全般的な知識の習得、A級はそのマネジメント能力の習得といった気持ちで受験しました。
そんな感じだったのですけれどA級の問題はスタディーガイドを勉強しただけではなかなか難しいところもありましたが、何とか合格する事ができました。

「当たり前のことを、徹底してやる」ということに気づきを得ることができました。

CPP取得後実務で役にたったこととは?

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安部
受験をされてみて実務の中ではどのように役に立てていただいていますか?

今泉
バイヤーとしての実務に関しては、コスト構造改革のために注力するポイントが明確になったと思います。

当社では、実務範囲は全部個々人のバイヤーが属人的におこなっています。
さきほども述べましたが、手配業務からサプライヤー選定、見積もり依頼、価格決定、コストダウン交渉、納期の調整、品質トラブル対応、サプライヤー管理までのほとんどを一人のバイヤーがおこなっています。

ですから、どうしても手配業務や納期調整に時間を取られて、コストの査定だったり、交渉というのがおろそかになっている、という課題があったと思います。

コスト分析や査定も、情報収集する方法やルールがある程度必要であり、その内容に従って実務を行う事で効率を上げていけるのだと思います。

マネジメント業務に関しては、さまざまな決裁業務やコストダウンの推進、管理、品質・納期のトラブルのフォローなどがおろそかになっていたかもしれません。
優先すべきもの、階層分け、目標の設定・管理など役に立っていると思います。

また、CPPの内容はどれも当たり前で特別な手法ではありません。しかし、「当たり前のことを、徹底してやる」ということに気づきを得ることができました。

例えば、スペンドアナリシスの内容はどれも当たり前ですけど実際にそこまで分析していない。分析すれば何かひらめきが出るケースもあります。

それから、コスト分析でも役に立ちましたね。分析できるレベル毎に分け、データベース化する。材料加工方法などをサプライヤー様と詳しく話せるようになったと思います。

安部
実際にサプライヤーの方とどのようにお話されたのですか?

今泉
半導体や電子部品を扱っているとその市況や流通量に左右されることが多いのですけれど、実は材料とか加工方法とかにも今まで以上に突っ込んで、やりとりができたということです。

もちろん、それでコストが劇的に下がるというわけではありませんが、情報量が多い分イニシアティプを取れますし、サプライヤー様も真摯に受け止めてもらえます。

安部
CPP・B級資格にしても、A級資格にしても、周辺知識や、これまで携わってこなかった範囲の知識が頭に入り、サプライヤーの方とお話をする際の引き出しが増えたということですよね?

今泉
増えました。今までは経験からの言葉だったり、断片的な知識でしかなかったのだな、と感じます。CPPを学習した事により、それが繋がってきたと。以前と比べて、頭の中の情報量が多くなったことを実感しています。

例えば、スタディーガイドには開発購買の1つのツールとして調達戦略シートがありますね。そういったツールは開発購買だけではなく量産購買品においても使えます。

対象品の特性であったり、価格推移などを1つのシートにまとめることによって非常に交渉しやすくなったと思います。

いろいろトライして作っていますが、非常に役に立っています。

安部
他のマネジメントされている方々にも共有して、そういうツールを使って管理をすることがすでに始まっているのでしょうか?それとも今ご自身で試されているところですか?

今泉
今ちょうど自分で試しているところです。

他にも、VE/CR集を作って「各担当者がどういうふうな経緯でコストダウンをしたか」という情報を集めることによって、私がマネジメントをしている領域で、それを共有する動きをとっています。

はじめたばかりなので、上手くいけばその情報を展開していきたいと思っています。

安部
お話をお聞きすると、一人の方が調達の前工程から後工程まで完結しているということは、もともと今泉さんも比較的広い調達業務には携わっていて、様々な経験がおありになるのですね。

今泉
私は、入社した時は量産購買をやっていました。その後、開発購買業務を経験し、また量産購買に戻ってきました。
そういう意味ではいろんな経験をさせていただいているなと思います。

開発購買が企画段階から参画し、目標製造原価に向かって最適な調達品を提案していくという重要性も理解しています。

しかし、現実はすべてがキレイに枠組みされているわけではないものですから、量産購買でも開発段階で絡むケースは多々あります。
実際に、量産購買の担当者のほうが豊富な知識や情報量を持っていたりもします。

あの部門が決めた事だから良いとか、自分の部門の仕事だから完結しなければならいとかではなくて、いろんな人の経験や知識を共有して課題を解決することが重要であると感じています。

安部
対・社外のサプライヤー様との交渉の深みが変わり、一方で対・社内の購買調達業務への理解や配慮が深まることによって業務の進めやすさが変わってくる。

これから長い時間をかけて会社の中でも、調達の考え方を理解・浸透させる活動をされることになると思います。

その為の教育ですとか、育成・浸透の構想、方向性についてはいかがお考えでしょうか?

今泉
そうですね、もう一度調達権限を浸透させる事からはじめていかないといけないのかなと思っています。
スタディーガイドにも書いてありましたが、そのためには調達部門の能力アップ、地道な周知活動が必要です。

社内においても、調達部門は受け身の仕事と思っている人も多くいると思います。
製造原価の大半を占める部材、外注加工費の管理責任を持っているという自覚と社内へのアピールを積極的に行う、自部門から情報発信をしていく事がまだまだ足りないと感じます。

また、直接的に関係の無い営業部門との定期的な情報交換などで、当社のお客様が何を要望しており、調達部門として何かやるべきことが見つかるのではないかなどを考えていくのもおもしろいと思います。

この6つの基盤を強化していくために、スタディーガイドで学習したような様々な調達の知識が必要であるのだと思います。

調達戦略の6つの基盤を実践する上で必要なこととは?

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安部
社内に対して、これからCPPをどう活かしていこうと思われますか?

今泉
それはもちろん広めていきたいです。

知識を習得することは重要ですし、その方法論として役に立つからです。

今回学習した中で、調達戦略の水準を高めるしくみとして、「6つの調達基盤」の強化を図る事が示されていました。

この6つの基盤を強化していくために、スタディーガイドで学習したような様々な調達の知識が必要であるのだと思います。
それらを徹底して行えば、非常に強い調達になると感じました。

当社の環境を考えますと、全てをすぐに実行する事は難しいですが、環境を踏まえアレンジし、やれるところから強化していきたいですね。

その為には、私一人というよりは上司はもちろん、周りのみんなにCPPを活用して戦略の立案、実行に移す、そういうことを理解してもらうことが重要になると思っています。

学習前と比べると、スキルアップはもちろん、調達業務を広い視野で見れるようになり、課題に対する解決策を考える知恵が付いてきたと思います。

CPPホルダーになるメリットとは?

安部
会社としてはCPPを利用していただくことで、知識の基盤づくりや共通言語の醸成という効果をよくお聞きしており、様々なお会社で
そのようなお役立てをいただけるといいな、と私も思っているところです。

今泉さんの場合は、社内でリーダーシップを発揮するというお役割がもちろんあおりですけれども、一方で、ご自身を引っ張り上げる為に課題意識に基づいてCPPを活用していただいていますよね。ご自身に対してのセルフリーダシップとでもいいましょうか。

おそらく、多くのお会社に同様の方がいらっしゃるのではないかと思います。
そういう方々に向けて、最後にメッセージをお願いします。

今泉
私もあるきっかけから、CPPを知り、自身のスキルアップと格好良い言い方をすれば、会社へ少しでも貢献できないかと考えトライしました。

学習前と比べると、スキルアップはもちろん、調達業務を広い視野で見れるようになり、課題に対する解決策を考える知恵が付いてきたと思います。

テキストであるスタディーガイドは、ボリュームがありますが、専門知識やマネジメント手法、ビジネスファンダメンタルズといった調達に関する内容がほぼ掲載されており、「調達のスタンダードテキスト」としてはとても使える内容となっていますのでお勧めです。

そして、スタディーガイドを理解できた証がCPPホルダーであり、周りに展開、共有していく事により、強い調達部門ができるのだと思います。

もちろん、CPPホルダーとなった事により、自分にも自信がつきます。

検討されている方はぜひ頑張っていただきたいと思います。

安部
インタビューを通してCPPが社内浸透していくパターンを伺いますと、最初は熱意のある方、課題意識の高い方が孤軍奮闘ではじめられているケースが少なくありません。

今泉さんが4~5年前に経験されていた事と同じ立場におられる方がきっと多くいらっしゃるのだと思います。

今泉
そうですね。ぜひ頑張ってほしいです。

安部
本日はどうもありがとうございました。

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