三菱重工業 インタビュー
輸送機器に特化したドメインに所属しています。その中で、交通システム、いわゆる鉄道システムに関する調達を担当しています。
三菱重工業の磯 貴博さん(交通・輸送ドメイン 交通・輸送調達部 車両・空制調達課 主任)にお話を伺いました。日本能率協会の安部武一郎がインタビューします。(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)
交通インフラ・システムのための調達とは?
安部
はじめに、磯さんのお仕事の内容について、ご紹介いただけますでしょうか?
磯
当社では約700品目の製品を製造しているのですが、その中で輸送機器に特化したドメインに所属しています。
このドメインというのは、他社で言うと、カンパニー制という形態になりますが、4つのカテゴリーになっています。
その中で、私は交通システム、いわゆる鉄道システムに関する調達を担当しています。
安部
最近、日本企業の車両システム関係やインフラ関係の海外展開が紙面を賑わしていますが、今まさにその環境におありということでしょうか?
磯
そうです。その一翼を担っていると思います。
安部
交通関係のシステムと言うと、具体的にはどのようなものを調達するのでしょうか?
磯
PJ全体で言えば、信号通信、電力受配電設備、鉄道レール、バラストと言われる砂利関係も調達する必要があるのですが、当地の三原の事業部では車両製作に特化し、いわゆるゴム式タイヤの鉄道、例えば関東近郊で言いますと、お台場ゆりかもめや空港のターミナル関連の移動体をつくっています。
いわゆる点ではなく、面や線という形で、学ぶ必要性を感じておりました。
学ぶことを求められる調達のシステム化とは?
安部
CPPに取組むにあたっては、どのような課題をお持ちだったのでしょうか?
磯
いわゆる点ではなく、面や線という形で、学ぶ必要性を感じておりました。
例えば、様々な法規や物流関係の勉強など、個別には対応しているのですが、最近はシステムの化によりバイヤーが対応すべく業務や求められる知識の幅が広くなる環境下にあったためです。
そのような中で、CPPが私の知識を広める糧になったと思っています。
安部
ありがとうございます。
今、調達に求められる知識がどんどん広がり、その習得の必要性を様々なお会社でお聞きしています。
そのような中で、マネジメントから求められるよりも、ご自身でその必要性を感じられたのは、どんなきっかけからだったのでしょうか。
磯
実は、上司がこのCPP資格の存在を教えてくれました。
自ら勉強したいという思いに駆られて、教材を自分で購入しました。
安部
それが、CPP資格を知ったきっかけにも、なるわけですね。
磯
こちらの事業所では、印刷機械もつくっています。
ドメインをまたいで、若手主体で横通しの交流会を進めた部門長もとではじめた勉強会が主なきっかけになります。
安部
個人としてだけでなく、社内で調達を勉強し、幅広い知識を得ようと言う機会が設けられていたのですね。
磯
そうです。調達にかかる様々な学習をする中で、CPPの勉強会を開いていました。
新規サプライヤー探索の重要性などを感じ、グローバルな情報収集や事業目標に基づいた開発段階からの寄与、といった意識を持つことができたと思います。
得意分野と不得意分野の時間配分は?
安部
CPPを取得するまでの経緯での困難や障壁などについては、いかがでしたか?
磯
勉強するにつれて、かなり教材のボリュームもあり、例えば開発購買の章などは印象的で、詳細の知識を習得するのにかなり時間を費やしました。それが、複数回の受験に至った経緯です。
安部
一緒に学んでいた方々も同様にチャレンジされたのでしょうか?
磯
チャレンジしたと聞いているのですが、合否までは聞いていないです。
安部
「みんなに負けないぞ!」という気持ちもありましたか?(笑)
磯
競争意識は、持っていましたね。(笑)
安部
勉強を進める課程で、知識が増えていく実感や学びの楽しさなどを感じられたことはありましたでしょうか?
磯
当然、学習を業務にも活かしたいと言う思いもありましたし、学ぶにつれて社内外に対する理論武装にもなりましたので、その意味ではかなり励みになりましたね。
入社当時は、どちらかというと交渉事や価格低減活動に特化した業務が中心でしたが、
ガイドに書かれていたように、新規サプライヤー探索の重要性などを感じ、グローバルな情報収集や事業目標に基づいた開発段階からの寄与、といった意識を持つことができたと思います。
安部
社内連携についてはいかがでしょう?
磯
もともと、設計段階から入り込んで、連携活動をやっていますが、そこに一歩踏み込んで、新規サプライヤーの開拓、モジュールデザイン活動等も行っています。
またグローバルワイドに、サプライヤー調査から深く入り込むようにしています。
海外とのやりとりでは、輸送のハンドリングや契約条件も個別に自ら関与し、決めないといけません。辛さもありますが、やりがいがあると感じております。
調達の背景がわかっていないと自信がもてない?
安部
市場がグローバルになってきているという話がありましたが、どのような課題感を一番大きくお持ちでしょうか?
磯
やはりコストダウンが、最優先事項だと思います。
当社に限らず、原価構成の中で、一番大きくは調達費が占めていると思います。それを併せて、安定調達と品質維持が調達に課せられた二大、三大責務だと思います。
安部
海外から調達され、日本でつくって輸出される製品もとても大きいですが、やはり日本で生産され続けるのでしょうか?
磯
インフラ設備機器で言いますと、レール等の完成品に近い物は、三国間貿易は可能だと思いますが、部品点数が多く、検証が多く要する車両製作は製造設備が整った場所で製作する必要があるかと思います。
また車両は客先に引き渡す前に走行テストなどのいくつかの試験等を実施する必要性があります。また艤装を行う作業員の教育も必要な為、現状では、国内生産がベストだと感じています。
また当社はそのような製作工場と、走行試験トラックをここ三原に国内で唯一の鉄道車両メーカと所持しているのが強みであると思っています。
安部
海外とのビジネスには、どのような面白さややりがいを感じますか?
磯
場合によると思いますが、国内のサプライヤーとは、発注すれば、その後はバイヤーの手間なく、輸送や納品も含め、支払いまで一気通貫で業務を進めさせていただくことができます。
しかし、海外とのやりとりでは、そう簡単ではなく輸送のハンドリングや契約条件も個別に自ら関与し、決めないといけません。辛さもありますが、やりがいがあると感じております。
安部
日本のサプライヤーとのやり取りの方が、正直楽そうですね。(笑)
磯
そうかもしれないですね(笑)
ただし、自分達でコントロールしないといけないので、その一手間、二手間の中で、辛さと喜びを感じてます。
安部
何度も受験をされて乗り越えて、今度はCPP・A級も受験されるとのことですが、もしかしたらチャレンジをして乗り越えることが磯さんの強さでありキャラクターなのかもしれないですね。
磯
はい、いつも前に向かってやっていきたいと思っています。
安部
CPP資格制度は、マネジメント層の方が法人制度導入をされるパターンもあれば、強い課題意識を持ったどなたかが、現状を変えて前に進みたいという気持をぶつけることから始まるパターンも見られます。
自分も変えたいし、仕事のやり方も変えたいというエネルギーを、この試験にぶつけていただき、それが何かのきっかけで、例えば社内やサプライヤーとの折衝の中で違いが表出化したとき、きっと会社の中でもバイヤーとして認められるのかもしれませんね。
物流等々の言葉は共通言語が成り立っているのですが、それ以外の領域でも、CPPが広まればコミュニケーションが円滑になるのではないかと思います。
調達の共通言語のメリットとは?
安部
調達部門において、もっと多くの方がCPPの知識を持っていただいたら、きっと今よりも強い調達組織になっていただけると信じているのですが、今後社内にたいする期待はございますか?
磯
他の方のインタビューにもありましたが、いわゆる共通言語としてガイドを活用できるのが一番良いのかなと思っています。
ある程度、物流等々の言葉は共通言語が成り立っているのですが、それ以外の領域でも、CPPが広まれば、コミュニケーションが円滑になるのではないかと思います。
安部
大変幅広い製品を、おつくりになっており、拠点も多くありますが、共通の知識や言語を持つ効果はありますでしょうか?
磯
あると思いますね。我々も「ONE調達」という名のもとで、システムの共通化やプロセスの共通化等を図っている最中です。このCCPガイドも必要性はありますし、幅広い社員が使える教材だと思います。
OJTの要素はその人材の将来に与えるインパクトも大きく、かなり大事だと思っています。
調達部門の教育システムの現状とは?
安部
現在、調達の方々はどのような教育を受けていらっしゃいますか?
磯
品川に本社がございまして、全社の調達部門を対象に教育する場合もありますし、事業所ごとに、教育の場場を与えてもらう機会もあります。
またもちろん、システムで勉強する領域もありますね。
安部
新人教育についてはいかがですか?
磯
全社的に実施する場合もあれば、事業所やドメインベースでやる場合もあります。
受注品生産も量産品生産もありますので、すべてを一括で教育するのは難しい面もありますね。
安部
OJTの要素も大きいでしょうね。
磯
そうですね。OJTの要素はその人材の将来に与えるインパクトも大きく、かなり大事だと思っています。
最近は、経営や事業プロジェクトに寄った、上流工程に関与していくよう変わったと感じております。
マネジメントの調達への期待とは?
安部
マネジメント層からの調達部門への期待や要望については、どのようにお感じになられていますか?
磯
以前は、コストベースのコストダウン優先の仕事が多かったと思うのですが、最近は、経営や事業プロジェクトに寄った、上流工程に関与していくよう変わったと感じております。
また事務的な作業が中心だった従来から、今はコストダウンや設計を決める要素に対する意見を要求されるといったニーズが増えてきていると思います。
安部
上流工程の方々も、今までのやり方だけでは限界かもしれないという危機感をお持ちなのかもしれませんね。
従来、調達部門は受け身がちだった面があるかもしれませんが、実際には調達側から提案できることが沢山あると。
また一方で、これまでバイヤーの仕事の内容がなかなか見えにくかったという面もあったのではないかと思うのですが、その点はどのように評価されているのでしょうか?
磯
発注金額と原価低減額が、主たる指標になるのではないかと思います。
当然、それに至るプロセスも上司から判断していただいていると思うのですが、二大要素はその二つではないかと感じております。
“プロフェッショナル”を目指したいです。
CPP取得で得たプロフェッショナル意識とは?
安部
CPP資格を取得されてからの、意識の変化はありますでしょうか?
磯
そうですね。このガイドにも“プロフェッショナル”と書かれています。ですから、“プロフェッショナル”を目指したいです。
つまり専門知識を身につけたい、という意識を高く持てるようになりました。
安部
これからCPPを受験される方に向けて、CPP資格取得者としてのメッセージをいただけますか?
磯
合格するまでは、業務の合間を見ながら時間を工面したり、気持の面でも強さが必要だと思います。
ただ、その分だけ自分の業務の幅や視点も広がり、自信にも繫がると思います。
ぜひ頑張ってください。
安部
本日はありがとうございました。