IHI インタビュー

 個別のスキルをもっと深めたいというのと、もっと他にできることがあるのではないかという、2つの課題を感じていました。

IHIの神谷康弘さん(エネルギー・プラントセクター 公務・生産センター 調達部 調達グループ 主査)、柏原真理子さん(同センター 調達部 調達グループ)にお話を伺いました。(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)

バイヤーとしてステップアップするために必要なこととは?

IHI 神谷さん、柏原さん

ーーまず柏原さんにお伺いします。
現在の担当業務に至るまでのキャリアをお聞かせ下さい。

柏原
私は入社してから12年、ずっとエネルギープラント事業の調達部に在籍しています。
それから一度も異動せず、ずっとバイヤーをやっています。

ーー入社当初、戸惑われたことやお仕事上で苦労された点はありましたか?

柏原
最初は、「もの」が分からないというのが一番苦労した点でした。

事務処理などのフローは、覚えていけばいいので、着実にこなせるように、努めてきましたが、複雑なので、自分が買うものを理解することがとても大変でした。

また2~3年に一度担当の変更があるのですが、担当機種が変わる度にその機種について勉強しなければならず、苦労しました。

現在は事務処理関連のフローはわかってきましたが、さらにステップアップするために、これから何を学べばいいのかを知ることが課題だったと思います。

その一方で、調達の査定とかコストデータの整備とか納期管理とか、個別の業務でうまくやれていないこともあるな、という思いがありました。

その個別のスキルをもっと深めたいというのと、もっと他にできることがあるのではないかという、2つの課題を感じていました。

ーーちなみに、どのようなものを購入されているのですか?

柏原
エネルギープラントの中の機器です。

神谷
ピンからキリまでいろいろなものがありますよ。

いろんなものがあるので、非常に難しいのですが、小さな計器類から大きな設備もの、何十トン、何百トンというものを購入することもあります。

我々はプラント建設工事に従事しているのですが、何年というスパンで完成する工事であり、その仕様も、お客様の要望や、工事の請負体制により様々です。

それに基づいて、我々が手配する内容も変わってくるわけです。

小規模の工事であれば、手配する範囲も限定的ですが、工事自体が大きくなればかなり幅広く買うものが出てきます。

製品や機器を単体で買うケースもありますし、大きなプラント設備一式を買うケースもあります。
ほんとうにピンからキリまでなのです。

ーー部材の数も多いですし、買い方も多種多様だということですね。セットで買うこともあれば個別に買うこともあるということですね?

神谷
そうですね。

「今後私はどうやって自分のスキルアップをはかっていけばいいのか?」という壁にあたっている人材が多いと感じていました。

調達の背景がわかっていないと自信がもてない?

3kO04YQxuET8vHNdBop8GzEMuRoZHZvOZsaTiU8ROis,jgUt6uGcvXj3qmVnFl-hk2TVKmaVeoFpndejrbTc9X8

ーー神谷さんにお聞きします。神谷さんは主査としてこの調達・購買部門の言わばマネジャー役として活躍されてらっしゃいますが、どのような課題を感じてらっしゃったのでしょうか。CPP資格制を導入推進される理由を聞かせていだだければと思います。

神谷
柏原の場合、文系の大学を卒業して調達部に配属されてずっと調達を手がけてきました。うちのグループには十数名いるのですが、多くが文系出身です。

つまり、技術系出身の人間があまりいないのです。その中で設備や機器類を買うにあたって技術的なことがわからないと査定でも交渉でもどうしても難しい面があります。

そういった、「いろいろな背景がわかっていないために自信が持てない」というスタッフの声があり、なんとかそういう部分を後押しできないかという課題感がありました。

また、異動、移籍の機会がなく、ずっと同じ部門にいますと、なかなか外部との交流に広がりを持てず、外の世界を知らずに考え方が凝り固まってしまうケースが少なくありません。

特に、私の部門は若手が多い状態で、まさに柏原がいった通り「今後私はどうやって自分のスキルアップをはかっていけばいいのか?」という壁にあたっている人材が多いと感じていました。

そういう人材に対して個別の教育はするのですが、「体系的に、全体を通してどういうスキルをもてば調達のバイヤーとしてよりステップアップができるか」ということを示し、自信を持てるようなものはないかと考えていました。

そこで、いろいろな資格を調べたのですが、弊社の別事業部でCPP資格制度に取り組まれている方から紹介していただいたのがきっかけとなりました。

ーー神谷さんが、別の部門の方からCPPを紹介され、それでキャリアのためにも柏原さんにおすすめしたと言うことでしょうか?

神谷
そうです。

これまで知らなかったことも、違和感なく知識として取り込むことができ、面白いと感じたのです。

知らないことを知る意味とは?

0xMyXywXd0VdMI2jK_nPq1cpZz1D1xHQxWr7oB_XaC0,InJkMvJveVBoXOrEtrd7fCvQi-TwUcHidKVR3ENFeec

ーー柏原さんは、神谷さんから、CPP資格制度を紹介されたとき、最初の印象はどうでしたか?

柏原
正直に言いますと、難しそうだなと思いました。

弊社の、それも自部門の調達しかしらないので、調達にはこんな世界があるのか驚きましたし、難しそうだと感じたのですが、でも、面白そうだな、とも思いました。

ーー難しそうから面白そうに変わったのというのは、すごい変化ですよね。

柏原
「難しそう」という意味は、やっぱり「言葉づかいに慣れない」と感じたということです。

自分達が普段社内で使用している言葉に対し、慣れない言葉づかい、といいますか、用語になじみがなく、レベルが高いと感じたのが最初の印象だったのだと思います。

でも、スタディーガイドを読んでみたら自分の調達業務に共通するところも少なくありませんでしたので、それ以外のこれまで知らなかったことも、違和感なく知識として取り込むことができ、面白いと感じたのです。

ーー実際に手に取ってみて最初難しいなと思いながらも読み進めて行く間に壁が下がってきたというイメージでしょうか?

柏原
そうです。
それから試験直前対策セミナーという公開セミナーを受けさせていただいたのですが、そこで全体感を聴いて、「こういうことなのだ」と理解がすすみました。

また、スタディーガイドをさらに読んで全体を理解していくうちに、「ここは知っているところだ」とか、「ここは知らない」とか、全体像がだんだんと見えてきました。

ーー試験直前対策セミナーを受けるということは、受験する覚悟を決めていらしたと思うのですが、その決め手は何だったのでしょう?

柏原
受験があること、テキストがあること、セミナーを受けることをセットで紹介していただいていたのです。ステップアップの順番としてではなく、全部一緒に申しこんで、「よし、やるぞ」という感じで受験しました。

電車の中などでずっとテキストを読みました。あとは家で集中的に用語を書いて覚えることをしましたね。

勉強時間の確保の工夫とは?

4fwNJl3YeS9U0XgCmMyVEe7Myw6XuVUNfMP8Cx6j-2E,sa_1XOXBEEg7Qz2ZLApNHBUZqJ0jr5AnD3-ThZhHrQ4

ーー神谷さんから紹介を受けてから試験合格までの期間というのはどのくらいだったのでしょう?

柏原
おおよそ2ヶ月くらいです。
6月に試験直前対策セミナーを受けて勉強して、そこから7月に受験するまでに電車の中などでずっとテキストを読みました。あとは家で集中的に用語を書いて覚えることをしましたね。

ーー電車通勤も遠いと大変ですが、もしかすると勉強するときにはいいのかもしれませんね。

柏原
そうですね。

自分の時間が持てるのでいいと思います。

直前の休みの日に集中的に一人にしてもらっての勉強もしました。

仕事中は仕事しかできませんし、家に帰ると子供がいてなかなか学習できませんからね 笑。

ーーご家族の協力もあってということですね。

柏原
そうですね。

ひるがえって自分達の会社ではこういう調達をしているから、自分達の独自性を考慮して調達を考えていく、というような考え方をするように変わったと思います。

違いを知って視野が広がるとは?

LqqnmiEy-niMcVfpFNzDpHKr9aldoVMhMk5OOllFD_E,drzDE-bDqYjIkp-hX3-JVZN8_mMXqLRutsOZbvFt-ds

ーー実際にCPP・B級資格を取得され、仕事の進め方に何か変化はありましたでしょうか?

柏原
仕事については、個別の業務にこれから反映されると思っています。

一方で、自分が最初に感じていた行き詰まり感に関しては、受験してから視野が広がったと思います。

例えば、重工産業ですとすごく長いスパンで大きな物を調達するのですが、例えばテレビなどの製品をつくる電機業界などであれば、こういう考え方をするのだなと知ることができました。

違いを知って視野が広がったと思います。

ですから、ひるがえって自分達の会社ではこういう調達をしているから、自分達の独自性を考慮して調達を考えていく、というような考え方をするように変わったと思います。

一方で、どの調達部門の人も同じだな、とも思いました。

納期管理とか査定とか、普段苦労している部分をどの調達部門の人も同じように苦労しながらやっているのだな、と感じたのです。

自分の視野が広がり、気が楽になったとも思います。

ーー他社を知ることで、自社を知ったということでしょうかね。

柏原
そうですね。
他国をみて自分の国がいいな、と思うのと似ているかもしれませんね。

ーー国際人になりたいと思って海外にいったら、日本のことが好きになったという感じですね 笑。

無意識で影響があったと思われるのは、本人のリーダーシップ意識向上の動機付けとなっていることです。

マネジメント的な視野を持つ意味とは?

q6Y1yOhqNvFy8ACrMWrXNaxAop8AsekRpguZGz-ysVA

ーー神谷さんは、柏原さんがCPP・B級資格を取得するまでと、取得されたあとで仕事ぶりに変化を感じてらっしゃいますか?

神谷
これからの活躍に期待しているところです。

柏原は、これからグループをひっぱってもらう人材です。私は、CPP資格はマネジメント的内容が多く含まれていると思っています。

査定だとか交渉とかの個々のスキルに関して柏原は一定のレベルに達していますが、
「スキルを持っている人間が、全体的・体系的にそれをどう繋げくのか」、
「体系的なスキルをもとに、部門もしくは会社をどう引っ張っていくのか」
という、一段高い視点、マネジメント的な視野でグループを引っ張ってもらいたいという期待を持っています。

まだ合格して日が浅いので、「一段高い視点、マネジメント的な視野を持ちなさい」と言うのは難しい面がありますが、そういう視野を持ってもらいたいと思っています。
柏原にはそれができると思っています。

また、本人が意識しているのとは別の観点ですが、無意識で影響があったと思われるのは、柏原がCPP・B級資格に合格したことが、本人のリーダーシップ意識向上の動機付けとなっていることです。

例えば、部門のみんなに「柏原さんは、CPPという調達プロフェッショナルの認定試験を受けて合格したよ」「あとに続く人はいますか?」という話をするだけでも、柏原の思いも変わってくると思います。

柏原には、「CPP・A級資格を受けるつもりはありますか?」「ぜひ受けてみたら?」ともアドバイスもしています。

今後、部門としてCPP資格制度を導入するかはわかりませんが、「私もCPP・B級資格にチャレンジしたい」という人がでてくれば、そういう人のサポートや制度導入の推進のような業務にも力を入れてもらい、みんなを引っ張っていって欲しいと思っています。

手始めとして、CPPの内容や試験の内容について、メンバーに紹介する会合を実施してもらいましたが、反応は上々でしたね。

実際に、「次は、自分も受験してみたい」というスタッフも出てきています。

そういう意味で、柏原本人は、「最初に受けた人間で、受かった人間」だという思いは残っているでしょうから、「次は、私が引っ張って行く」という思いに繫がればいいなと思っています。

6つの基盤整備の考えを、部門の中で、特に若手に継承していくには、かみ砕いてわかりやすく整備していかないといけないと思います。

若手にかみ砕いて継承するとは?

sR3u4eO8lvvVcTzA0sw93DCb9ZXIPl33OK2vKMud5HI

ーー調達部門の方はジョブローテーションが定期的に行われるイメージがありますが、御社ではいかがでしょうか?

神谷
「調達部門の成果が会社の利益や経営に大きく影響する」ことから、設計部門等を含む他部門からの異動者で調達部門を強化する、という機会が過去にも何度かありました。

これを継続していくことで、我々としても部門が強くなっていくだろうという見通しがあったのですが、数年前に上の世代がどっと抜けていったことがあり、その後をどうするか、という時期にさしかかっているのだろうと思っています。

このため、かつては、調達部にいきなり配属されるということはまれでしたが、最近では部門の人員を補強しつつ、早期に人を育てるために、入社時に調達部に配属された後、ローテーションをして戻ってくるような仕組みもあり、ここ数年でようやく仕組みが形になりつつあると感じています。

ーーCPP資格制度を活用することで、技能伝承や共通基盤の整備になる、後輩や部下の指導に役だつといった評価をお聴きすることがあり、ローテーションに対する基盤整備に有効なツールではないかと考えています。

神谷
スタディーガイドに、6つの基盤整備の考えがベースにあると書かれていましたね。

ただ、実際にそれを部門の中で、特に若手に継承していくには、かみ砕いてわかりやすく整備していかないといけないと思います。

経験を持っている人間が読めば、「これはあれのことだな」とわかるのですが、若手にそれを見せて、いきなり「理解して考えなさい」というのは、ちょっと敷居が高いでしょう。

そういう意味でCPP資格の受験者が、得た知見を自分の言葉に変えて教育マニュアル等に落とし込むとよりいいのではないかと思いますね。

CPPの中味が技能伝承や基盤整備も考えて作られているのは良く分かるので、活用していきたいなと思います。

調達の仕事を体系づけて理解でき、仕事の見方が変わってきっと面白いと思います。

仕事を体系づけることでおもしろくなるとは?

Rl_QdLq_2Wv-REYk1l6g3hUYdkyJgBFFCxymLHptw5c,MNdSxiiFcPPxgjB683JQxdxc2XmjYyzDKWT4UUyvWG4

ーー他部門の方でもCPP資格を取得してらっしゃる方がいらっしゃいますし、資格取得者によって、ぜひより良い展開を実施していただければ嬉しく思います。

最後に、これからCPPを受験される方、WEBをご覧いただいている方、そして子育てをしながら働いていらっしゃる方も含め、ぜひこれからチャレンジされる方々へメッセージをお願いします。

柏原
教科書が分厚いので、心理的に大変だと感じると思いますが、調達の仕事を体系づけて理解できるのと、また、仕事の見方が変わってきっと面白いと思います。

大変な部分もありますが、ぜひ頑張ってほしいです。

ーー本日はありがとうございました。

ページトップへ戻る