NTTドコモ インタビュー

社内の調達の統制機能、コントロールタワーとしての役割を担っています。

CPPホルダーのNTTドコモ 馬場覚志さん(資材部 資材企画担当部長)、市川一興さん(資材部 資材企画担当)にお話を伺いました。(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)

調達のコントロールタワーとは?

NTTドコモ さん

NTTドコモ 馬場覚志さん、市川一興さん

ーーまず、馬場様と市川様の資材部でのお役割とお立場についてお聞かせください。

馬場
NTTドコモの資材部は、NTTドコモ全体の調達部門として社内の物品の調達を一元的に担当している部署です。

その中で、私たちは資材企画担当というチームで、資材部のオーバヘッド的な業務に加え、全社の物品調達に関わる基盤を整備していく仕事を担当しています。

例えば、オーバヘッド的な業務としては、事業計画の策定や、CPPのような資格取得を通じた人材育成などです。また、調達の基盤整備としては、調達に関する社内の規程・ルール作り、ルールを運用するためのマネジメント業務等を実施しています。

少し大げさになりますが、社内の調達の統制機能といいますか、コントロールタワーとしての役割をやらせていただいています。

市川
私は、今馬場が申しあげたことの、より実務的な領域を担当しています。
「調達の統制」といいますのは、具体的には、環境等に配慮した資材調達に取組むグリーン調達ガイドラインや、サプライヤーの皆さまとの責任ある調達活動、すなわちCSR調達ガイドラインなどです。
それらのガイドラインを定めて、運用しています。

ーー調達するのはどんなモノになるのでしょう?

馬場
一番身近なのは、皆さまが普段ご利用になるスマートフォンなどの端末系の商材です。一方、大きな物ではモバイルサービス提供のための無線基地局等のネットワーク機器です。
逆に、小さな物でいいますと、いわゆる間接材、MRO物品、オフィス系サプライなども扱っています。

大きな物から小さな物まで調達しており、概ね社内の物品調達では、金額ベースで約97%は、私たち資材部を経由して調達をしています。

ーー資材部の中に、物品調達をされている方々と、お二人のように基盤を作るメンバーがいらっしゃるということですね。

馬場
そうです。
私たちの部署は70名強が在籍する部署なのですが、私のチーム以外にも、直接サプライヤーさんと交渉するチーム、こちらは端末系とネットワーク系のチームに分かれていますが、それから端末の物流や販売店への配備を支援するチームがございます。

私たちのユニークな点としては、 調達部門が物流もコントロールしている点です。
例えば、皆さまが端末をお買い上げいただくときに、弊社でいいますとドコモショップに行かれると思います。

そこに欠品なく端末を配備するための物流が必要になります。その物流は外部委託しているのですが、そこをコントロールしているのも私ども資材部なのです。

これからの資材調達というのは、ますますサプライチェーン全体を意識した形になってくると思うのです。

サプライチェーンを意識した調達とは?

ーー資材部が物流もコントロールしているのはどんな理由からなのでしょうか?

馬場
これからの資材調達というのは、ますますサプライチェーン全体を意識した形になってくると思うのです。物を買うという行為の前後の連携が重要になってきています。

前工程で言いますと、端末やネットワーク機器の作り込みの段階でコスト削減を図る開発購買のようなものがありますし、後工程では、ショップ店頭での販売やオンラインショップ経由の宅配など、最終的にお客様にお渡ししてお使いいただくまでを調達部門として責任を持って行くことが必要です。加えて、端末を仕入れすぎて過剰な在庫を出さないような管理も重要な役割です。

そういう流れを、サプライチェーンの中でやった方が効率的だと言うことで、私どもの中に物流の機能を持っています。

ローテーションの早い仕組みの中で、配置された人材がいち早く調達のプロになってもらわなければならないのです。

ローテーションしても短期に調達プロにする方法とは?

ーーCPP資格制度に取組まれる前には、資材部としてどのような課題をお持ちだったのでしょうか?

馬場
NTTドコモは、2010年、第4回のCPP 受験から参画させていただいており、今年で5年目になるのですが、最初の取りかかりは、おそらく外部からのご紹介や、世の中の動きを感じ取ってのことだったかと思いますが、

その根源には、早期の人材育成のニーズがあったことも事実です。資材部門というのは、人事異動のサイクルが早いのです。
資材部門の経験のない人が配置をされて、2年もしくは3年ぐらいのローテーションで次の部署に異動していきます。
比較的人事のローテーションの早い仕組みの中で、配置された人材がいち早く調達のプロになってもらわなければないわけです。

その中で、体系立ったCPPを勉強することで資材調達に必要な知識を、身に付けられると思い、組織を上げてこの資格をOFFJTの一環として取組ませていただいています。

CPPに取組むこと自体が、業務の遂行に必要なベースの知識を体系的に身に付けられるという点で一番大きいメリットですね。

そういう理由で、部、組織を上げて知識の習得、すなわち資格の取得に取り組んできています。去年の一番多いときで組織の資格取得率が50%を超えました。
残念ながら、昨年の人事異動の時に、有資格者が大量に抜けてしまい、一時期資格取得率が3割ぐらいに落ち込みましたが、新たな資格取得者も増えてきましたので、引き続き、これまで以上の取得率を目指して頑張っています。

今回(2015年1月)のCPP・B級資格の試験もたくさん受けてもらうよう呼びかけ、28名の者が挑戦してくれました。

ーー受験の対象者の方はどういう方が選ばれるのでしょうか?

馬場
基本的には、全社員、管理職も含めて部をあげてチェレンジしようと運動を展開しています。

毎年繰り返していく中で、「CPP資格は取得していく」という文化になっているのは非常に良いことだと思います。

「資格取得が文化になっている」とは?

ーー管理職も含めて部をあげてチェレンジしようとすると、何か障壁となるような課題もでてくるのではないかと推察します。市川様は、セミナーを企画されるなど、取りまとめをされているお立場ですが、苦労されている部分をお聞かせいただけますか?

市川
部を上げて、全員でスキルを上げようと取組んでいますので、そんなに大きな壁になるようなことはないですね。

ただ、業務が忙しい中で、勉強しなければならないので、受験する社員は勉強する時間の確保が難しいと思っています。

その中でも、部をあげてみんなで取組んでいるおかげなのか、一時期は半数が資格を持っているような状況でしたので、「自分も勉強して試験に合格しないといけない」という雰囲気はありますね。

セミナーを企画する側からしてみると、取組まないといけないような状況になるので、非常にやりやすいと思っています。

馬場
CPP資格制度の導入も5年目ぐらいになりますと、弊社の資材部の文化になっているところがあります。

継続は力なりで、毎年、毎年繰り返していく中で、「CPP資格は取得していく」という文化になっていて、そこは非常に良いところだと思います。

ーーお二人は資材部に着任されてどのくらい経たれているのですか?

馬場
私は2013年の7月からです。

市川
私は2013年の4月からですね。

ーーお二人が着任されたときには、既にそういう雰囲気があったのでしょうか?

馬場
そうですね。
私自身は、それまで資材業務の経験はありませんでしたから、自分も一年生として勉強しないといけないと感じました。

また、立場上、部のメンバーに資格の取得を促していかないといけないということで、自ら奮い立たせて勉強する必要がありました。

ーー昨年と今年で目標を更に上げていこうとおしゃっていましたが、その理由はどのようにお考えなのですか?

馬場
基本的には、全員とってもらいたいと思うのです。もちろん、1年目は、仕事を覚えるだけでもいっぱいで大変だと思います。

でも、そうは言っても目標がないとなかなか進まないこともあると思い、少しずつ目標を高くしていっているのです。

それがひとつの刺激になって、みんなの背中を押している感じになっています。

研修で「そろそろ勉強しないといけないのだよ」という雰囲気作りをしています。

メンバーが積極的に取組む雰囲気づくりとは?

ーーメンバーの皆さんがCPPを取組んでみようと積極的になっていただけるための施策などはありますか?

馬場
ひとつは、会社で受験費用の負担をしていることです。
それから、直前の試験対策セミナーに参加させていただくことですね。

そういう意味で勉強するインセンティブがあります。
それから、時期が近づいてきたら、研修をやって「そろそろ勉強しないといけないのだよ」という雰囲気作りをしていくことです。

また上長に、部下の育成という観点から、資格取得に向けて協力してほしいと、そういったことで、全体で盛り上げていっています。

ーー中には、異動されずに長く在籍されている方もいらっしゃるのですか?

馬場
いわゆる専門職として長期配置されている社員はおりません。
ただ、人事のローテーションの中で、資材部に2回目の在籍という人はいますよ。

基礎知識は、自分の努力で頑張れば立ち上がっていけると思います。

人事異動の早さへの対応策とは?

ーー資材部に異動してこられて、すぐに実践が必要となると、やはりそれは大きな課題になりますね。

馬場
例えば基礎知識として、言葉の意味とか、基本的な物事の考え方とか、座学や書籍でわかるレベルのものと、サプライヤーさんとの交渉術など、経験値がないと出来ないものと両方あると思います。

後者の場合は、先輩に付きながら経験を積み重ねていくことで身につくことであり、一朝一夕にはいきません。

一方で基礎知識は、自分の努力で頑張れば立ち上がっていけるので、「少なくとも、まずは頑張ろうよ」と言っています。

そのような両輪で捉えて、取組ませていただいています。

全体として会社の経営を理解した中での資材部の位置づけを考えられる人材が必要になってくるのだと思います。

調達をプロセスの流れでとらえるとは?

ーー経営層からの調達部門への期待も高いのではないかと思いますが、資材部門としての目標はどのようなことでしょうか?

馬場
新たに取組むことも、もちろんありますが、まずベースは今までの取組みの延長だと思っています。
きちんとサプライヤーさんとの連携、相互理解をすることが大事だと思います。

サプライヤーさんもご理解いただいていると思うのですが、我々が競争に勝っていくためには、コストダウンしていかないといけない。
やはり今までの関係とか取組みを大事にしながら、安くて良い物を調達していくという営みは、継続的にやっていかないといけないと思っています。

そこに加えて、CSRのような外部環境も少しずつ変わってきていますので、対応していく必要があると思っています。

そして何よりも個人的に今、課題だと思っているのは、資材部で「物を買って終わり」ではなくて、サプライチェーンの中で考えないといけない時代に来ているということです。

対外的には、サプライチェーンですし、社内的には、バリューチェーンと言った方がいいのかもしれませんが、やはり仕事とかプロセスの流れの中で業務を考えていく必要性があると思っています。

開発購買が前工程としてあって、後ろに物流があるかもしれませんし、物をいれたあとの保守、運用もあると思いますので、トータルで資材調達をどう位置づけていくのか、キチンと考えていかないといけないと思っています。

ーーそのようなお考えは資材部に異動されてから感じるようになったのですか?

馬場
資材部に来たからというわけではないと思います。
長年の経験やキャリアの積み重ねの中からです。

そういう意味では、資材部っていろんな業務を知ってないといけないと思うのですね。
ですから単視眼的に狭い視野で物事を見ていてはダメだと思うので、広くいろいろなことに興味・関心を持つことが必要だと思います。

人事政策的にもいろんな部署を経験した人が資材部に来て、また違った部署に行くという流れを維持していくことが大事なのだと思います。

もちろん本当にこれから資材部門のプロフェッショナルとして深く理解している人材も必要な時代に来ていると思うのですが、一方でそれだけではなくて全体として会社の経営を理解した中での資材部の位置づけを考えられる人材が必要になってくるのだと思います。

市川
私は資材部の前は携帯電話の商品企画をやっていましたので、開発に着手するところから販売するところまでを、全体的に見てきました。

もちろんその中で資材部と密に関わりながらやっておりましたので、作り始めるところからお客様に届けるところまでの流れはわかっていたのですが、そこで実際資材調達に携わると、勉強になることがたくさんありました。

そういう意味でいろいろな業務を経験することが大事だと感じます。
いろいろな部門を経験することで、社内に多くの知り合いもおりますし、今後も社内の各部署とも密に連携をとることが、大事になってくると思います。

例えばサプライヤーさんとの打合せに使う共通言語が学べることは大きな効果ですね。

CPPの効果とは?

ーーCPP取得に取組まれて、どのような点がお役に立ちましたか?

馬場
とてもいい刺激になっていると思います。
これがなかったらどうなっているかと考えると、CPPがあってくれたおかげで身に付けることができた知識は本当に多いと思います。

資格を取得するプロセスが非常にうまく社員の育成に活かされていると思いますね。

会社全体として、人事部でサポートしているプログラムもあります。
そこに、二階建てで資材部が専門分野プログラムとしてCPPを積み重ねています

市川
やはり2~3年で異動してしまうので、サプライヤーさんの資材調達スペシャリストの方々と比べると知識量には差がでてきます。

でも、私が実際勉強して感じたことは、CPPで学習することで、例えばサプライヤーさんとの打合せに使う共通言語が学べます。これは大きな効果ですね。

ーー統制企画するお立場としては、どのようにお役に立っていますでしょうか?

馬場
ベースラインとしての知識の底上げになっていますね。

資材業務を囲む環境は、すごく多岐にわたりますし、最近は資材調達の周辺を取り囲む社会のルール、遵守しなければいけない法律がたくさんあります。

知らないじゃ済まされない部分もあり、リスクマネジメントという観点からもキチンと身に付けて理解してもらうことが必要なのだと思います。

CPPの学習は資材調達に関わる知識を習得できるだけでないと思っているのです。

CPPは資材調達の知識を習得するだけではない?

ーー最後に、これから受験される方へのメッセージをお願いします。

市川
ドコモの場合で言いますと、資材調達に関わる知識をあげる機会は、やはり資材部にいるときだと思います。この2~3年の間に資材調達の知識をぐっと深めていただく為に、また社員のスキルアップの為にもぜひ頑張って勉強してもらいたいと思います。

馬場
私は、CPPを勉強するということは、資材調達に関わる知識を習得できるだけでないと思っているのです。

非常に幅広い知識が必要になりますから、おそらくそこで勉強したことは、例えばマネジメント手法しかり、他の部署にいっても役立つ知識がたくさんだと思います。

その意味では、せっかくのチャンスですので、ぜひ資材業務に関わっている皆さんはチャレンジしていただいて、次のキャリアに活かしてほしいなと思っています。

ーー本日はありがとうございました。

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