中村屋 インタビュー

CPPホルダーの中村屋 熊谷章さん(購買部 原材料グループ 係長)を訪問しました。
(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)

バイヤーとして感じていた3つの課題とは?

中村屋 熊谷章さん(購買部 原材料グループ 係長)

熊谷章さん(購買部 原材料グループ 係長)

ーーまず、熊谷さんのお立場とお役割についてお聞かせください。

(熊谷)
食品メーカの購買部に所属しています。
購買部のなかで、原材料を調達する原材料グループのメンバーの1人です。

調達しているのは製品の原料で、調達カテゴリーとしては、調味料、香辛料、それから餡子の原料となる小豆などの豆類です。
中華まんに使っているタケノコも調達カテゴリーになります。

ーー今回、CPP資格試験を受験する前に感じていた課題についてお聞かせいただけますか?

(熊谷)
大きく感じていた課題は、3つあります。
1つは、業務のやり方についてです。
進め方がわりと属人的というか、バイヤー個々人によってステップやレベルがまちまちな部分があると感じていました。
そういったやり方を引き継ぐ際に、決まった方法論がありませんでした。本当にそれでいいのかなと思うところがありました。

私が購買部門に異動した当初は、原材料のバイヤーをやっていまして、その後6年ぐらい、バイヤーを離れて全社のシステム構築とか購買部のシステム兼購買企画担当をやっていました。

バイヤーに戻ったのは、3年前ですが、そのバイヤーを離れていた期間の経験から、ルールやナレッジの共有の必要性などを強く感じました。

2つ目は、業務の中で社内調整の占める時間の比率が高いことです。
社内調整業務に問題があるという意味ではなく、もちろん、一般的なスキルとしては間違いなく必要なことだと思います。
しかしながら、「本当に購買の本来業務なのか?」と感じていました。「これが自社の購買業務であるとすると、購買の固有スキルや考え方を、持っていても活かせていない部分がある」と思っていました。

あるいは、今の業務で必要とされる程のスキルを自分が持てていないのか、もしくは、自分がスキルを持っていたとしても発揮する場所はないのか・・・と感じていました。

社内調整に費やす時間ウェイトとしてどれくらいがベストなのかは議論の余地はあるでしょうが、それがメインになってしまうと、その結果、購買のやり方が構築されていかないと感じていました。

3つ目は「スキルの物差し」が明確でないと感じていました。

目標に対する達成結果は、数字ではっきりした尺度として見える部分がありますが、対応方法が属人的ですとスキルそのものを評価する尺度がありません。

必要なスキルの中で何がどれだけできていて、何ができていないのかというのが、今の仕組み、今のやり方だと語れないのかなとひっかかっている部分はありました。

かならずしも悪いことではないでしょうが、いわゆる「先輩の見てやり方を盗む」というそんな雰囲気がありました。
「見て盗む」といっても、OJTとして、事後に「これはこういうことだよ」とフォローがある場合ばかりではなかったので、標準化という観点からは十二分とは言えなかったと思います。

反面、OFFJTに対するウェイトは、あまり高くはありませんでした。

OFFJTによって身につく部分は、少なからずあると思っていました。また、一般的な知識を各自が少しアレンジすれば、全員で同じ知識を共有して標準化できると漠然と感じていました。

特に、バイヤーを経験して、そのバイヤーを離れて企画担当になってからそのことを強く感じていましたね。

CPP資格制度を選択した3つの理由とは?

ーー何をきっかけにCPP資格を知ることになりましたか?

(熊谷)
企画担当のときに部内のOFFJTを何か1つ考えるという業務改善テーマがありました。

ポイントとして考えたのは、資格として形になるもの、そして業務に対する網羅性です。

いろいろな資格を比較検討したのですが、このCPP資格制度が一番網羅的でいろいろな課題に対応できると思いました。

また、海外調達もテーマにはありましたが、当面の職場は日本だと考えておりました。

購買部原材料グループとして買っている物は食べられる物で、部内の別のグループでは製品で使っている食べられない物、例えば箱や包み紙なども調達しています。

それら調達カテゴリーの異なるメンバー全員の共通性を考慮すると、CPP資格制度がベストだという判断をしました。

それから、資格取得のためにあまり時間的に拘束されないほうが望ましいと考えました。

毎月決まった日にセミナーにでなければならないなどの条件がある資格は適していないと考えました。

そういうわけで、資格として形に残って、業務に汎用性があって、かつ取得までの必須のステップが少ないことの3つの理由で選びました。

CPP資格制度ありきではなく、資格を積極的に探して、他の資格もちろん調査していたのですが、比較検討した中ではCPP資格制度がベストだという結論で現在にいたっています。

CPP資格制度の社内展開の方法とは?

ーーCPP資格制度をどのようなやり方で社内展開されているのでしょうか?

(熊谷)
CPP資格試験の受験費用は、試験1回までは、会社の予算で、仮にそこで上手くいかなかったら次からは自費という形になります。

また、試験対策セミナーも本人が希望すれば参加できます。

当該年度の対象者の人数は決まっていて、「今年は誰と誰だ」という指名制になります。

2011年ぐらいから取り組み始めているので、部内では5人程資格取得者がいます

ーーどのように選抜されるのでしょう?

(熊谷)
職位が上の方から、また、おおむね年齢が高い方から資格取得をしています。

ーーCPP資格保持者であることはどのようにアピールされるのですか?

(熊谷)
会社によっては、名刺にCPP資格保持者であることを記載することがあると聞きますが、中村屋全体としては、他の資格も含めてしていません。

広報に依頼すれば社内報には載ると思います。

ーー職位が上の方から資格取得をしているのはなぜですか?

(熊谷)
率先垂範です。

当時の部長が最初に取得したので、後に続くメンバーは皆、当然のように受験しました。

先に立つ方が合格すると、メンバーも頑張ろうという気になるのという面は確かにあります。

役職上位者から合格していくと後から受ける者のモチベーションには、なると思います。

ーー新しい形態での学習をすることに抵抗はなかったでしょうか?

(熊谷)
努力している姿をみせない人間が多いので、どこまで努力しているのかはわかりにくいのですが、スタディーガイドのボリュームは結構なものなので見えないところで大変な努力をしていると思います。

購買部門が資格制度を導入しようとした3つ背景とは?

ーーCPP資格制度を活用しようという背景にはどのような課題感があったのでしょうか?

(熊谷)
最初にお答えした「バイヤーとして感じていた課題感」と、当時購買部門で考えていた課題感が一致していたのだと思います。

1つ目は、業務の属人的な進め方を、一定の方法論に共通化してルールやナレッジを共有する必要性があること。

2つ目は、購買固有のスキルを活かした購買業務のウェイトをあげ、購買の仕組みを構築する必要があること。

3つ目は購買スキルそのものの客観的な尺度を明らかにして、何がどれだけできているかを評価できるようにすること。

当時具体的な話がでていた課題としては、農産物などを取り扱っていますので、物の価格の動きが、結構大きいことです。

例えば、「この商材の価格はこれから先こういうふうに推移するだろうから、今買っておこう」という予測や判断は個々のメンバーの情報量によって判断されていました。

そういう属人的な能力に頼らない、客観的な方法も必要だと思っていました。

例えば、「この商材だったら過去何年間の平均がこれぐらいの価格帯だからここを切ったら買いだろう」といったことです。

もともとは、私の業務改善テーマとして、属人的でないやり方を構築しようと思っていましたし、CPPの知識がベースになると思っていましたが、組織としての対応が求められていた背景があったといえると思います。

一般的な購買知識は役に立つか?

ーーCPP資格制度を導入するにあたっては、ご自身も含めメンバーの方はいかがでしたでしょうか?

(熊谷)
覚えているエピソードが2つあります。

ひとつは部の会議で皆さんに「こういうことを、やります」と説明したときです。
網羅的であることを伝えるために、スタディーガイドの大見出しを抜粋して紹介したのです。
単純な話ですが、スタディーガイドの大見出しを紹介しただけですとボリューム感を感じられる方もあり、「今からこれを覚えるのはきついよね」という話がでました。

ふたつ目は、自社への適合性です。
他の業種だったらCPP資格制度は購買・調達知識のスタンダードかもしれませんが、「我々食品業界で扱っている食べられる物と違い、機械部品や他のカテゴリーで求められる知識とまったく違う部分があるのではないか」という思いがありました。

ーー実際に異なるものなのでしょうか?

(熊谷)
「完全にやり方が違う」とか「この考え方はあり得ない」ということではなくて、ただ単純に、自分として購買・調達の一般知識を網羅的には知らなかっただけだと思います。

確かに、それまでの業務でまったく触れたことのない用語などは、自分も含めて過去の受験者は、違和感のようなものを感じていたと思います。抵抗といいうといいすぎですが。

でも、学習してみて「一般的には知っておいたほうがいい知識だろう」と個人的には受け取れました。

資格制度の導入推進の3つの工夫とは?

004

ーーCPP資格制度の導入を推進するためにどのような工夫をされたのですか?

(熊谷)
まずは、「始めてみて、少し様子をみよう」という部分はありました。

初年度は対象者の合格率も良かったので、自主学習である程度対応はできるのかなと感触はつかみました。
そういう意味で初年度に優秀な人間が受けるのはその後の取り組みを定着させることにはなったかなと思います。

ーー資格制度と社内評価の関係はいかがしょうか?

(熊谷)
正直に言うと社内評価とストレートにつながる面はありません。

しかし、それは個々の考え方で、一方で会社のバックアップでこういったことにチャレンジできていると前向きに捉えているメンバーもいます。

そういう意味では、先程は指名で受験するとお話をさせていただきましたが、本人の意向は大切にしています。

諸事情あって受けたくない者を受けさせることは基本的にはありません。

育成プランをもとに誰が受けるかは上層部の判断になるのですが、受ける、受けない等のトラブルめいた話はありませんでした。

自分も含めて、実際に受ける人間は、納得して勉強に望んでいます。

勉強の大変さという点に関しては、網羅的であることとボリューム感を感じることは表裏一体だと思うのです。

全体をカバーするためには、それだけ覚えなければいけないことがあるのは仕方がないことだと思います。

その点に関しては、例えば、試験対策セミナーの受講でしたり、講習の個々の復習で結果的にカバーされていると思います。

会社の費用で試験対策セミナーを受講できるのは大きなポイントになると思います。

この前の試験対策セミナーに参加させて頂いたときに、「これまで自費で何回か試験を受けていたけど、受からなかったので自費で試験対策セミナーに来ました」という方もいらっしゃいました。周りの方のお話を伺うとその辺は恵まれているなと思います。

そういう意味では、会社のバックアップであそこまでポイントしぼった試験対策セミナーに参加できるというのは、対策ができているということだと思います。

「やるべきことの型は決まっている」とは?

005

ーー実際、CPPを使ってみて、役に立ちましたか?

(熊谷)
役に立っています。
一番大きかった点が、考え方を整理できたところです。

それまでは、課題が発生したときに、場当たり的に対処していたこともないとは言えなかったのです。しかし、CPPを学んでからは、実は課題に対して「やること」はほぼ決まっているということがわかりました。

どんなカテゴリーでもどんな状況でもやらなきゃいけないことが決まっていて、やれることも限られている。
それをステップ踏んでやっていくしかない、という整理ができました。

どういうことかと言いますと、例えば、サプライヤーさんからある商品の供給がなくなるとします。

それまでは、どんなカテゴリーでも、場当り的に対応していました。

今では、確保できる商品は確保する。次に代わりの物を探すなどをする。

そういう事態が発生した際にある程度、やること、やれることって決まっている、ということが、再確認できました。

そして「知識として整理できた」ので、「業務としても整理して取り組める」という安心感が、一番大きかったことだと思います。

「この場合はこれでいいのかな?」とか、「この場合はこうしなければいけないのかな?」というような、「この場合」というほどのケースバイケースの多様性はなく、迷う必要がなくなった。

常に基本に立ち返るということなのだな、という気づきがありました

例えば、何か格闘技をやっているとします。
日々の業務が対戦だとしたら、こういった知識とは「型」なのだと思います。

空手でも一対一で対戦するものもあれば、一通りの型をみせる演武もあると思います。

実戦ばかりだったら蹴りが苦手だったら、突きだけでやるという、「使う・使わない」の判断はあると思います。

でも演武の型を見直すことで、蹴りとはこういうものであるという基本を身につけて立ち返ることができる。
そういう基本が、かなり整理できたと思います。

ーー社内調整にかける時間が多いとおっしゃられていたのですが、変わっていきそうですか?

熊谷
今回学んだことを、ストレートに改善に結びつけられるかというと難しいのかなと思いますが、購買のコア業務の効率を改善することはできると思います。

今後はCPPで学んだことを裏付けとして社内説明することで、改善のためのより説得力がある話できると思っています。

ーー本日は、ありがとうございました。

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