三菱化学エンジニアリング インタビュー
当時の上司としては、教育を含め、情報の水平展開をやっていきたいという考えがあったのだと思います。
CPPホルダーの三菱化学エンジニアリング 横大路裕紀さん(調達本部 調達2部 海外)を訪問しました。日本能率協会の安部武一郎がインタビューします。(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)
グローバル調達と横串機能とは?
(安部)
まず、横大路さんのお仕事について、ご紹介いただけますでしょうか?
(横大路)
はじめに弊社調達部門の役割を紹介したいと思います。
弊社は三菱ケミカルホールディングスグループの一員として、グループ内傘下企業及びグループ外のお客様向けに、設計から建設、保全まで、一貫した業務を提供しています。
その中で我々調達部門は各グループ会社の設備投資や、弊社の外販事業の受注案件等に関わる調達業務を行っており、より購入品を大きな単位で取り纏め、そのスケールメリットによるコスト削減を目指して業務に取り組んでいます。
私はそのなかの海外グループに所属し、主に海外の企業から直接、設備・資材の調達を行っています。調達品は、プラントの設備資材から、工事の手配調達まで多岐にわたっています。
(安部)
ちなみに、どんな国とお取り引きがあるのですか?
(横大路)
我々がよく取り引きする国は、中国・韓国といったアジア諸国ですね。それ以外にもヨーロッパやアメリカから設備の調達もしています。全世界どこからでも調達できる体制をつくって活動しています。
CPPを知ったきっかけとは?
(安部)
横大路さんが、最初にCPPを知ったきっかけをお聞かせください。
(横大路)
様々な教育指導を受けていましたが、第三者的な視点というか、外部の専門の教育指導が欠けていると感じていました。それで外部の資格やセミナーを探していたときに、偶然インターネットで見つけたことがきっかけです。
ちょうど同じタイミングで、当時の上司から、
「調達経験3年以上のバイヤーを対象としたCPP・B級という資格があるみたいだから、トライしてみたら?」
という打診もあって、私も入社3年目でしたので受験することになりました。
試験の1~2か月ほど前のことで、急遽ガイドブックを取り寄せて勉強しました、笑。
当時の上司としては、教育を含め、情報の水平展開をやっていきたいという考えがあったのだと思います。
「“物を買う”という基本的な考えのもとでは、調達のアプローチ、戦略の立て方というのは、直接材でも間接材でも変わらない」と思うようになりました。
情報の水平展開とは? ~1年間のCPP勉強会~
(安部)
CPPの導入は、スムーズに進みましたでしょうか?
(横大路)
受験をきっかけに、週1回の部内ミーティングの中で、私が中心となって、勉強会を開きました。
勉強会を通して、部内へ情報を共有・水平展開していったのですが、比較的スムーズにいったと思います。
(安部)
チームの会議でレクチャーをされていたのですね?
(横大路)
はい、50~60項目ぐらいを、1年間で毎週1項目ずつ資料にまとめて説明して、部内で議論する、ということをやりました。
現在も新しい若手の部員のメンバーが、この試験を毎年受けておりますので、彼らの勉強のためにも、共通の場で話し合ったりしています。自分自身の勉強のためにもずっと続けてきましたよ。
CPPの勉強で大変だったことは?
(安部)
調達経験3年目ぐらいで受験されたということですが、未経験の分野も対象だったと思います。勉強の難しさはいかがでしたか?
(横大路)
正直申しあげて、ボリュームが多かったので、大変でした、笑。
1ヶ月弱の間で、昼間は業務をこなしながら、夜は電車の中や家に帰ってから、ひたすらガイドブックを読む。それで理解するというのは、大変でした。
それから、ガイドを読んでいくうちに、自動車業界や電気業界などの直接材購入に関連する内容が中心に書かれているのではと感じて、少し躊躇したところもありましたね。
日頃の業務は、機械の設備や、工事の手配といった間接材がメインですから。
しかし、勉強を進めていくうちに「基本は同じだ」と感じられたのです。
「“物を買う”という基本的な考えのもとでは、調達のアプローチ、戦略の立て方というのは、直接材でも間接材でも変わらない」
と思うようになりました。
結果的には、私自身の業務にも落とし込むことができて、非常に役にたったと思います。
リスクとコストのバランスを考えながらも、積極的に海外調達を進めていく、そういう姿勢でやっています。
CPPを勉強して役にたったことは?
(安部)
なるほど、細かいところでは、違いはあると思いますが“買う仕事”という意味では、共通性があると。
化学系・装置産業系の方にとっても活かせるというのは、考え方や姿勢といったところでしょうか?
(横大路)
はい、その通りだと思います。例えば、戦略の立て方というのは、直接材も間接材もどちらも同じだと思います。
確かに細かい違いはあるのですが、技術部門や開発部門と連携をとってアプローチしていく戦略もそうですし、進め方もそうですね。
ガイドのはじめに、戦略と戦術の違い、それの立て方、進め方が書いてありますが、そういったところは、当時の私には足りないところだったと思います。
その足りない部分を勉強して身につけることができたなと思っています。
このガイドブックは、法規的なところ、コンプライアンス、あるいは、ビジネスマナー、倫理管理なども詳しく書かれていると思います。
購買システムといったところもありますし、そういった面でも、我々の普段行っている業務の参考になりましたよ。
(安部)
実務にも活かされていますか?
(横大路)
はい。実務面でも役に立っていますね。
受験当時は国内ベンダーさんとのお取引というのが中心だったのですが、このガイドブックを通じてグローバル調達といった知識にもふれていたので、今の海外調達という仕事でも役に立っていますよ。
海外調達の使命とは?
(安部)
海外実務の調達をされていて、安定した品質が求められたり、デリバリーの問題などが発生するかと思います。
横大路さんにとって、実務の中でここの壁を乗り越えたいな、早く解決したいなっていう課題はどのようなものでしょうか?
(横大路)
海外調達経験2年半のなかで、プロジェクトや個別の機器といった調達を経験してきました。
国内調達だと、マイナーチェンジがあったとしても、ある程度同じような仕事の繰り返しだと思うのです。
それに対して、海外調達は、ロケーションファクターであったり、ベンダーの質も数もたくさんあったりで、ひとつひとつの仕事が全然違ってくるのです。
そのなかで、共通する情報や知識を、もっと部内で共有化していきたいと考えています。
その上で水平展開した情報や知識を次のジョブにいかすような組織づくりというのをしていかないといけないと考えています。
(安部)
経営からの期待もあるのでしょうか?
(横大路)
調達というのは、調達金額を削減すればその分だけ、会社の利益に繫がると思うのです。
我々の使命として廉価調達、安価購買をどのように進めていくか、第1に考えないといけないと思っています。
そのひとつとして、国内調達よりも海外調達にシフトしてきていると思います。
確かに海外は、国内調達に比べるとリスクは、たくさんあります。
でもそこで止まっていては、今の状態から何も進まないことになると思います。
そういう意味で、リスクとコストのバランスを考えながらも、積極的に海外調達を進めていく、そういう姿勢でやっています。
調達という仕事は、なかなか明確な答えが見つかりにくい業務だと思います。
CPP受験の学習方法とは?
(安部)
CPPを勉強する前提としての意識として、横大路さんが受験していた頃と現在で違うなと思うことはありますか?
(横大路)
今の新しい世代は、語学力も備えた上で、意識も志も高いと思います。
調達部においても、積極的に海外調達に携わりたいという若手社員が多いです。
私が7~8年前に思っていたことから、少しずつ変わってきているのかなと感じますね。
(安部)
バイヤーの方々には、以前に増して広い知識や能力が求められてきていると思います。新しい脳といいますか新しい感覚を持った、新しいバイヤーの方々を育成していくことが必要になってきているのでしょうか?
(横大路)
その通りだと思いますね。
(安部)
最近受験される方は、どのように勉強されているのでしょう?
(横大路)
まず自分達で、ガイドブックを読んで取込んでいく。そのあとで、合格者による勉強会をやっています。
実は、それ以外に、当社の資材調達だけでなくて、グループ会社の若手メンバーが中心になって集まって勉強会をやっていると聞いたことがあります。
(安部)
それは、我々事務局としても嬉しいですね。
CPPの試験対策も脈々と受け継がれているのでしょうね 笑。
(横大路)
受け継がれて、ブラッシュアップしていると思いますよ 笑。
(安部)
最後に社内の方も含め、これからCPPを受験される方に、応援メッセージをお願いします。
(横大路)
調達という仕事は、なかなか明確な答えが見つかりにくい業務だと思います。
その時その時で正解が何なのかというのは、非常に難しいところではありますが、我々調達部でいえば、何度も言いますが廉価調達が常に最優先だと思っています。
そのために何ができるのか?
どのように自分の業務を日々変えていくのか?
調達の課題を乗り越えていくためにも、こういった教材や試験を通じてどんどんレベルアップをしていってほしいなと、私自身も含めてそのように思っています。
(安部)
本日はありがとうございました。