明電舎 インタビュー

株式会社明電舎 調達本部 企画管理課 シニアエキスパート 山下 恵嘉様(CPP-A級資格取得)と調達本部 EV調達部 EV調達課 主任 保坂 直輝様(CPP-B級資格取得)に、資格取得の背景やご活用についてお伺いしました。

(※以降敬称略、所属・役職は2021年12月21日時点)

吉田
それでは、株式会社明電舎調達本部企画管理課の山下さん、調達本部EV調達課の保坂さんにインタビューをさせていただければと思います
はじめに、現在のご部署でのお立場と役割について教えてください。まず保坂さんからお願いします。

保坂
調達業務には約7年関わっていて、現在は主任という立場で、電気自動車のモーター等のソーシングと開発購買を行っています。具体的には、設計・開発部門と一緒になってコストを作りこんでいく業務です。

あと私は、甲府明電舎という子会社から親会社に出向で来ており、甲府明電舎時代は生産部門向けの量産購買も行っていました。

吉田
現在は、主任というお立場で、一般のメンバーの方の育成もやられていらっしゃるのでしょうか?

保坂
今の部署は主任クラスが多いので、そこまで頻度は多くないのですが、そのようなことも行っています。
あとは、マネジメント層からの指示事項等をメンバーや中途採用の方に展開していくようなことも行っています。

吉田
具体的にどのような育成をされていらっしゃるのでしょうか?

保坂
そうですね。例えば、社内講師という立場で中途採用の方にモーターの部品はどういうものがあって、どういう役割をしているのか、といったことの基礎教育を教えています。

吉田
ありがとうございます。続いて、山下さんいかがでしょうか?

山下
現在は企画管理課でシニアエキスパートとして在籍しています。主に行っていることは、CPPの社内教育で、毎年上期と下期に勉強会を開催しています。その他にも、データベースや基準・規程の管理、サプライヤー評価等を行っています。

私がCPPを取組み始めたのは、現場の課長時代でした。その後、嘱託として調達部門の後進人材を育成する担当になり、かれこれ13年程経ちました。

私が調達部門に異動してきた当時は手書きの教育資料が10年以上、長いものだと20年以上使われていました。

その後、私が調達部門の教育の見直しを任せられて、2008年頃からCPPの受験を組織的に行えるように推進してきています。

異動当初は、調達がどのような業務を行っているのかあまり理解していなかったのですが、CPPガイドを読み込んでいくうちに業務の概要が非常によく分かりました。

今では、新入社員・主任等階級ごとに合わせて教育テキストを作成していますが、主な内容はCPPガイドから抜き出しています。

株式会社明電舎 調達本部 企画管理課 シニアエキスパート 山下 恵嘉様(CPP-A級資格取得)と調達本部 EV調達部 EV調達課 主任 保坂 直輝様(CPP-B級資格取得)に、資格取得の背景やご活用についてお伺いしました。

(※以降敬称略、所属・役職は2021年12月21日時点)

吉田
ありがとうございます。CPPを導入されるところをお伺いしましたが、その内容をもう少し深堀させていただければと思います。
2008年以前の段階で既に手書きの教育資料があったとのことですが、当時、CPPに切り替えたきっかけや、課題感等がありましたら教えてください。

山下
率直に情報が古く、見直しもされていなかったからですね。
当時の教育資料は1986年に作られ、その後2004年で改訂が止まっていました。
その理由は、インターネット等の情報リソースがあまり普及していなく、2年ごとに少しずつ見直しを行っていたようなのですが、インターネットが普及していくにつれて、“必要な情報は自分で取りにいく”といった個人の学習サイクルのようなものができてしまい、徐々に全体を見て、知識やレベルを底上げするような教育資料の見直しがされなくなってしまっていたからのような気がします。
私が異動してきた後は、教育資料を全面的に見直して、変えていきました。

吉田
ありがとうございます。
当時、教育資料とCPPガイドを照らし合わせた時、何か違い等を感じたことや、印象に残ったこと等ありましたら教えてください。

山下
当時の教育資料はモノのづくりに関する内容が多く、法律関係やマネジメントに関する内容はあまりなかったんですね。一方で、CPPはその部分が詳細に、また幅広く書いてあり、今の教育テキストに盛り込んでいます。

吉田
ありがとうございます。購買調達に関する資料は、生産技術等の他の分野と比べると情報は少ないと思いますが、それでも他の購買調達に関する資料、情報の中からCPPを知ったきっかけ、選んでいただいた理由等教えてください。

山下
見直しを進めていた2008年頃は、正直申しあげると調達の戦略等があまり決められていなかった印象でした。
その中で、やはり”今後は戦略的に調達をすることが大切だ”と思い、色々情報を探している所でCPPと出会い、「これだ」と思い選びました。
その後、CPPに書かれている戦略等の内容は、弊社の教育にも取り入れました。
今では、新しく入ってきたメンバーでもCPPのテキストを読むことによって、調達本部が何をしようとしていて、どこに向かっているかが分かっていただいています。

株式会社明電舎 調達本部 企画管理課 シニアエキスパート 山下 恵嘉様(CPP-A級資格取得)と調達本部 EV調達部 EV調達課 主任 保坂 直輝様(CPP-B級資格取得)に、資格取得の背景やご活用についてお伺いしました。

(※以降敬称略、所属・役職は2021年12月21日時点)

山下
私は53歳の時に受験して、合格しました。
当時、開発購買等は現場で経験したことがあるので理解できたのですが、交渉テクニックや法律関係はあまり理解できていなく、試験は2~3回落ちました。
記憶することになかなか苦労した経験もあったので、今は知識等を吸収しやすい若い世代にはなるべく早めに学習と受験をさせています。大卒で入社してきた社員には、入社一年目で資格試験を受験させています。
今の弊社の教育方針、目標としては、入社3年目以上は全員資格取得をすることを掲げています。
因みに、大体の延べ人数ですがB級は80名、A級は30名が取得しています。
異動、転籍等のジョブローテーションの関係で資格取得者が現在もいるわけではないのですが、今の部署では、部署内の約8割の方が資格取得しています。

吉田
先程入社3年目というのは、調達業務経験ではなく、 入社してから3年以上ということで合っていますでしょうか?

山下
そうですね。

吉田
今までのお話をお伺いすると、CPPを社内導入するにあたっての障壁はあまり無かったように見受けますが、何か難しかったこと等ありましたでしょうか?

山下
そうですね…、弊社は資格取得することに対しての報奨金制度があるのですが、CPPはその対象に入っていなかったので、私や部長が会社に対して「CPPは非常に網羅された内容で、合格することも難しいので社外資格の枠に入れて欲しい」ということを何度も言いました。
結果、社外資格枠には入れてもらえたのですが、CPPが専門的な資格だと思われているせいか報奨金までは中々認められていないですね。

吉田
なるほど。受験費用の補助とかそういうのはいかがでしょうか?

山下
テキストと受験の費用は会社から出しています。
ただ、受験に関しては社内で勉強会と理解度確認テストを行い、そこで正答率7~8割の人だけを、私が推薦して、会社補助が受けられることになっています。
保坂さんも、社内テストを突破して、試験も1回で合格しました。

吉田
CPPを受験する前に、社内で模擬試験を行うことで、なるべく一回で合格するように工夫されているのですね。

山下
はい、実際にやってみて思ったのですが、社内の模擬試験で7~8割できてない人が本番の試験を受けても正直受からないと感じています。
ただ、自費で試験を受けた方でも、もし合格したらその費用は会社に申請できるようにしています。

株式会社明電舎 調達本部 企画管理課 シニアエキスパート 山下 恵嘉様(CPP-A級資格取得)と調達本部 EV調達部 EV調達課 主任 保坂 直輝様(CPP-B級資格取得)に、資格取得の背景やご活用についてお伺いしました。

(※以降敬称略、所属・役職は2021年12月21日時点)

勝田
会社の報奨金の話やサポートの話、そして実際に大変多くの方が取得されている話等をお伺いして、御社のグループや経営層側で、何か変化があれば教えてください。

山下
6年程前から関係会社も含めて教育をしています。ある会社では部長層も含めて取得してもらいました。
グループ会社も含めて、どんどん広まっていけば、評価のされ方も変わってくると思っています。

勝田
御社の調達方針等もCPPがベースになっていたりするのでしょうか?

山下
そうですね。

勝田
我々としても、現場の課題はもとより、経営課題にも貢献できていれば嬉しいなと思って質問させていただきました。率直に、役に立っていますでしょうか?

山下
十分役に立っていると思います。
調達方針も含めて、至る所にCPPのエッセンスが含まれていると思いますね。
今までは社内で調達部門の地位があまり高くなかったのかなと思いますが、最近になって調達部門の出身者が役員になる等、変化が出てきたのかなと感じています。

勝田
ありがとうございます。
他の会社で聞いたことですが、調達戦略を立てるときに役員の方にCPPのマネジメントガイドに書かれている内容への理解が得られにくかったり、コンセンサスが取りづらかったり等を伺い、御社の場合はどうなのかな、と思いながら聞かせていただきました。

株式会社明電舎 調達本部 企画管理課 シニアエキスパート 山下 恵嘉様(CPP-A級資格取得)と調達本部 EV調達部 EV調達課 主任 保坂 直輝様(CPP-B級資格取得)に、資格取得の背景やご活用についてお伺いしました。

(※以降敬称略、所属・役職は2021年12月21日時点)

吉田
続いて、今度は保坂さんにお伺いできればと思います。
これまでCPP導入のバックグラウンドのお話を伺いましたが、実際に保坂さんが会社から資格取得を促された時、正直どのように感じましたでしょうか?(笑)

保坂
そうですね(笑)。正直申しあげると、その時は仕事が多忙を極めていて、時間的な制約が大きくて、少しネガティブな気持ちはありました。
家庭もあり、時間をどのようにして作ろうかな、と悩みましたね。

吉田
以前CPPのアンケートを実施した際、休日や帰宅後等のオフの時間で学習をやられているということが多かったのですが、その中で家族との時間をどう作るかが悩んだという意見もあったことを思い出しました。
ただ、学習していくうちに業務との繋がりが見えてきて学びになった、学習した内容を業務で活かせることが分かり、取組む意識も変わってきた等もありましたが、保坂さんの場合、何か業務で活かせたエピソード等ありますでしょうか?

保坂
現在進行形なのですが、今の部署では新しいサプライヤー様を見つけにいかなければならなく、評価についての方法、フォーマット、スキームなど人のスキルに依存している部分をCPPで学んだことを参考にしながら進めていくといった活用をしています。

吉田
正にこれから取り組むうえでの参考書ということですかね。

保坂
そうですね。

吉田
実際に資格を取得されている方と、これから取得される方とでは業務で何か違い等ありますでしょうか。

保坂
具体的にはすぐに出てこないのですが、やはりCPPの内容を理解しているという点で、業務への取組み方と言いますか、マインドセットが異なっているのかなと思います。

株式会社明電舎 調達本部 企画管理課 シニアエキスパート 山下 恵嘉様(CPP-A級資格取得)と調達本部 EV調達部 EV調達課 主任 保坂 直輝様(CPP-B級資格取得)に、資格取得の背景やご活用についてお伺いしました。

(※以降敬称略、所属・役職は2021年12月21日時点)

吉田
ありがとうございます。御社の購買調達プロフェッショナル人材像、これから目指す方向性等について教えてください。

山下
CPPだけではなく、環境に関する検定も取得するようにしています。
やはり、これからは環境の時代なので、環境教育にも力を入れています。

吉田
ありがとうございます。「購買調達と環境」…、キーワードのように感じましたし、広くとらえるとSDGs、ESG、カーボンニュートラルに対して取り組まれているのかなと感じました。
もう少し詳しく聞かせていただければと思うのですが、御社のこれからの購買調達人材は、環境も考慮できて、経営にも貢献する人材を育成していこうとされているのでしょうか?

山下
そうですね。
部署に来て間もない人は、サプライヤー管理というのを「発注だけをしていればいい」という程度でしか理解していないのかなと感じています。
ただ、実際は経営状況や環境に対する取り組み等全体的に理解していなければいけないですね。全体を俯瞰したサプライヤー管理ができる方の育成を目指しています。

吉田
他の企業様にもヒアリングをさせていただく中で、最近「SDGs」、「カーボンニュートラル」といった話や、サプライヤー管理でも環境に関する監査や評価等をよく聞くようになりました。
御社の、環境に配慮することを取り込んだ、購買調達のビジョンやお取組み事例等教えてください。

山下
3年程前からエコアクション21という環境マネジメントの第三者認証取得活動を推進しています。
本認証は環境省が策定したもので、各地方自治体の商工会議所等が事務局となって勉強会を開催してくれるもので、これまでに当社の活動として累計130社に認証を取得いただいています。
そのエコアクション21の活動を通じて、サプライヤー様のエネルギー使用量、水資源の使用量、5S、社内動線に対してアドバイスやサポートを相互に行い、相互でレベルアップができていると思います。
また、エコアクション21の認証を取得すると、弊社もサプライヤー様も公共事業への参入等、活動範囲の広がりがある等のメリットもあり、弊社もサプライヤー様もWIN-WINな関係で取り組むことができます。

吉田
先程のエコアクション21に関して、ホスト企業、言い換えると旗振り役となっている企業は御社なのでしょうか?

山下
そうですね、弊社の購買調達部門ともう一つ環境戦略を考える別な部門でやっていました。
県から補助金と認定の指導をしていただきながら進めていって、今は弊社にもエコアクションの指導資格を持った指導員がいます。そういったネットワークから、社内外の情報が入るので、サプライヤー様にも強制ではなく、おすすめをしています。

株式会社明電舎 調達本部 企画管理課 シニアエキスパート 山下 恵嘉様(CPP-A級資格取得)と調達本部 EV調達部 EV調達課 主任 保坂 直輝様(CPP-B級資格取得)に、資格取得の背景やご活用についてお伺いしました。

(※以降敬称略、所属・役職は2021年12月21日時点)

吉田
正に産官が一体となって、サプライチェーン、ステークホルダーを巻き込でSDGsに取り組まれているのですね。我々が聞いた中でも非常に大きな取り組みをされている印象を受けました。
先程、環境戦略を考える部門との連携の話がありましたら、開発や生産等の部門連携についてはいかがでしょうか?

保坂
社内のパッケージング関連や物流改革で事例がありますね。

山下
そうですね。
パッケージング関連は、要はプラスチック資源を減らすということも我々の部門で行っています。
物流改革については、運輸・輸送関係でいうと今まで関東圏の港に運んでいたものを、近くの港まで持ってくるようにしたりして、CO2削減をしてくようにしましたね。

吉田
サプライチェーン全体で取り組まれていらっしゃるのですね。こういったCSRにもつながるような活動は調達部門が中心となって行っているのでしょうか?

山下
CSRは会社全体に関わることなので、機能自体は本社です。
ただ、実務的な取組計画や実行はまだ各部署で行っているのが現状です。そういう点では、我々調達部門が中心となって活動している部分もあります。

株式会社明電舎 調達本部 企画管理課 シニアエキスパート 山下 恵嘉様(CPP-A級資格取得)と調達本部 EV調達部 EV調達課 主任 保坂 直輝様(CPP-B級資格取得)に、資格取得の背景やご活用についてお伺いしました。

(※以降敬称略、所属・役職は2021年12月21日時点)

吉田
ありがとうございます。お二方にお伺いしたいのですが、これからの会社への貢献、キャリアアップ等今後の目標等ありましたら教えてください。

保坂
私は、子会社から出向で来ているので、いつかは戻ることになります。
戻った時、今学んでいるCPPの内容を体系だって整理して、子会社でも標準化できるように展開していければと思っています。

吉田
正に、今、山下さんがやられているような活動を引き継いで、展開されていこうと考えていらっしゃるのですね。
山下さんはいかがでしょうか。

山下
あと何年いられるかは分かりませんが、それまでは社内教育を充実させ、知識・ノウハウの継承に貢献していきたいと思っています。
今も、新しいものはどんどん取り入れていますが、これから出てくる新しいものも有効活用できるかどうか検討して、積極的に取り入れていきたいと思っています。

勝田
資格取得後の継続学習やスキルアップで何かされていること等ありますでしょうか。

山下
そうですね。具体的には現状無いのですが、もしかしたら、その年に資格取得した人が次の年の講師をすると、自身の理解を再確認することにも繋がるのかな、と考えています。

吉田
ありがとうございます。最後に、CPPの学習に取り組んでいる方にお一言ずつコメントを頂ければと思います。

保坂
今回受験してみての感想ですが、受けるタイミングが重要と感じます。
私は調達業務に約7年間携わっていますが、調達の経験がある程度無いと合格が難しいと思います。あまり早く取得しても、単に知識を詰め込むことになると感じていて、業務との結びつきを理解しながら学習すると効果的かと思います。
経験を積んだ後に、CPPの学習に取り組むと「今までの業務の振り返り」「新しい発見」「苦手な分野の集中学習と克服」ができると思います。
私は、最初は少しネガティブな印象を受けたと言いましたが、絶対自分のタメになる内容なので、今から受ける方は頑張ってほしいなと思います。

山下
CPPは非常に範囲が広く、きちんと内容を理解していないと回答することが難しい試験なので、テストのために暗記するような学習では合格はできないと思います。
何よりも、”一番は本人のやる気”だと思います。長年、社内教育を受け持ってきましたが、やらされ感のある人は真面目にやらないですし、一方で言われなくてもやる人はやります。
私は、勉強会で「この人のやる気スイッチはどこにあるのか?」ということを意識しています。
これから組織展開を考えている職場の上司や、教育担当者の方々も是非「本人をやる気にさせること、動機づけさせること」が、最初の一歩であるということをご参考にしていただければと思います。

吉田
本日はありがとうございました。

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