2017年11月期最高得点者インタビュー (キリン 古沢氏)

キリン株式会社の古沢 信之さん(調達部  原料・資材グループ(原料)調査役)にお話を伺いました。(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)

キリンでのキャリアの変遷とは?

キリン古沢氏画像森宮
本日はキリン株式会社調達部、原料・資材グループ調査役の古沢信之様にお話を伺います。

古沢様は2017年11月期のCPP・A級試験において最高得点をマークされました。
まずは古沢様のキャリアについてお話いただけますでしょうか。

古沢
1983年に入社し、長らく製造部門で製造や品質保証で技術スタッフ、マネージャーの業務を経験しました。海外も含む国内外の製造現場での業務を経験し、役職定年後、現部署にて調達の業務担当し約1年半が経過したところです。
原料・資材の調達に必要なQCDSの視点の中で、Qの部分が自分の強みと思っていますし、求められているとも考えています。

醸造品質保証関係が一番長かったのですが、(社内の人材育成機関である)モノづくり人材開発センターにて技術研修やリーダー育成の研修を担当したり、人事部でキャリア開発支援を担当したこともあります。 

森宮
非常に様々な担当をされて現在に至っていらっしゃいますが、技術・品質の分野と人の育成というところに大きく深く関わられたのですね。

CPP試験を受けるに至った経緯とは?

キリン古沢氏画像森宮
古沢様がCPP試験を受験されるきっかけはどのようなものでしたか。

古沢
「CPPは調達に必要な知識を体系的、網羅的に習得でき、かつ、調達活動をより戦略的、論理的思考にもとづいて取り組むことができる」というメリットから、調達部の人材育成方針の中にCPP資格取得が設けられ、受験が奨励されています。

私も秋に異動して次の年にはB級、引き続きA級を受験しました。
部内ではA級取得者が約60名、B級取得者が70名を超えています。
異動して間もない人以外は、ほぼ全員取得している、それを目指しているという状況です。

森宮
社内で制度的に導入いただいていているのですね。
部内で資格保有者がたくさんいらっしゃる中で、勉強方法や教材などについては何かアドバイス等はありましたか?

古沢
試験の傾向等についての社内コミュニケーションはあります。
また「試験対策セミナー」の内容を参考にして勉強しました。
ガイドブック一式は赴任して間もなく会社から配布され、実務を通じて目を通すことを奨励されました。

森宮
部門の多くの方がA級のホルダーでいらっしゃるということは、B級取得後のA級受験も会社が奨励されているのですか?

古沢
調達部に配属になった社員には、B級取得は全員に奨励されていて、管理職(経営職)は更に上級のA級取得まで奨励されている状況です。
現状ほぼ達成されている感じです。
調達業務に必要な基本的な用語や考え方を、早い段階で皆さん理解しましょう、ということなのだと思います。

皆さんある程度プレッシャーを感じながらそれぞれ計画的に受験されています。

試験勉強で工夫した点とは?

キリン古沢氏画像森宮
B、A級の受験を通してご自身の学習方法では、お忙しい中どのような工夫をされましたでしょうか?

古沢
原料や資材を使う側の経験は長くあったのですが、実際に購入する調達部門に所属するのは初めてでしたので、調達の基礎を勉強する良い機会だなと思い、ガイドブックなどは読むようにしました。

B級は知識を問う問題が多く暗記中心の勉強で対応した記憶があります。

一方、A級試験は結構、複合的な問題という感じがしました。
私のような実際に調達実務の経験が少ない者にとっては応用的なところがあると感じました。

試験では1つは、出題の意図・テーマをつかむことが重要と感じました。
例えばコストリダクションなのか、リードタイムの短縮なのか、グローバル調達のことか、新規サプライヤーの選定なのか、開発購買なのかなど、など出題の意図・テーマを把握する必要があるなと思いました。
学習する時もこれらのテーマについて、何がポイントかというところをメモ書きなどにまとめ把握しておくことが有効かと思います。

もう1つは、その問題のケースがどのような会社・品目の状況の事例などかということを把握することが重要かと感じました。
コストリダクションの問題でも、どういう打ち手をするかは状況に応じて変わってくると思います。
例えば取引金額の大小であるとか、代替サプライヤーがあるかどうかとか、あるいは過去にCRにどれ位取り組んでいるか、原価の算定しやすいものかどうか、発売から終売までのステージがどの辺にあるのかなどです。
そのようなことが掛け算で問われている問題で、問題のケースの状況を良く把握した上で最もに適した選択肢を選ぶことが求められていると感じました。

それぞれのステージ・状況に応じてどういうところがポイントなのかというところを整理しながら、テキストを自分なりに読み直しました。

森宮
非常に重要なお話ですね。
購買調達の業務は複合的であり、状況に応じて対応する必要があります。
古沢様の多彩なご経歴がそのような視座の獲得につながったのかもしれません。

古沢
当社の事例でも麦芽とか大麦のように長年取引しているが、天候・年産により品質上の差異がでる可能性のある農産物と、資材などのように汎用的なもので規格化が行いやすいものでは、そのアプローチの仕方は変わってきます。
実務においてどういう打ち手が良いのだろうかというところを考える時に、客観性を持って個々のケースを確認し打ち手を考えると言う点で CPPの問題と共通点はあると思います。

一方、開発と調達はどう関わっていくかというようなことも考え方を整理する上で参考になることがありました。

森宮
CPP資格は業界横断の資格なのですが、たまに「うちの業界でのやり方にそぐわないのでは」という声も聞きます。

古沢
あまり狭く考えなくても良いのではと思います。
そもそも勉強したことが100%すべて役に立つかというと、そうではないと思います。
調達業務の全体像を理解した上で、実務に取り組むと言う意味で価値があると思いますし、調達の定石やイロハなどを体系的に学ぶには有益な教材だと思っています。

狭い世界で考えると単なる相対のやり取りだけで終わってしまうこともあるかもしれません。

CPP受験がその後日常で役に立っているか?

キリン古沢氏画像森宮
以前、貴社にお話しを伺った際、新たに調達部に配属された人材は他の部門に出しても恥ずかしくない一流人材に育成したいといったお話が印象に残ったのですが、今もそのような雰囲気がありますか?
配属のローテーションはどのように行われていますか?

古沢
当社は定期的なローテーションが行われています。
調達部の部員は最前線で外部のサプライヤーの方と折衝をしたりするので、実践的な高い総合力が求められます。
調達部門で経験を積んで外へ出ていくということは1つのキャリアコースとしては良いと思っています。

私の場合は、今までの経験を活かしながら、さらに新たなことも学ぶ機会、出会いもあり、創造的な解決策も時に求められる、やりがいのある仕事であると感じています。
チャレンジしながら調達の仕事をすることが大事で、QCDS全体を考えないといけない。
Qは分かっていたとしても、CやDやS、そういうところで幅広く見られるという意味では、自分自身も勉強になっていますし、30代40代で来られた方も非常に勉強になって、後の業務に活きていく部分も多分にあると思っています。

キリン株式会社の古沢 信之さん(調達部  原料・資材グループ(原料)調査役)にお話を伺いました。(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)

CPP・A級試験で最高得点を取った感想とは?

キリン古沢氏画像森宮
キャリア開発をご経験された方ならではの素晴らしいコメントですね。
今回、古沢様が最高得点をマークされたことに関してはどのようなご感想でしょうか?

古沢
そのことを聞いた時は驚き、なおかつインタビューのお話が来て、自分で良いのかなと率直に思いました。

得点を取る上でテクニカルなことで言いますと、試験の問題に慣れるという意味で、WEBなどでも出ている問題をやり問題の型式に触れておいたほうが良いと思います。
また先程の話のように、A級については複合的になっているので、複合的に組み合わせて考えることを多少意識したのは良かったと思います。

最高得点を狙おうとは思ってなかったので驚いておりますが、冒頭でお話しましたように、縁があって調達に配属されたので、その定石をしっかり勉強しようという気持ちの時に、ちょうどこの資格試験の話があったので、本当に良かったです。

人事部でキャリア開発を担当していた時に、Planned Happenstance Theory、 計画的偶発性という考え方を知りました。
今回、調達という与えられた仕事にも正面から取り組むことによって、何かを自分自身も得られるし、仕事としてもお返し・貢献できるのかなという気持ちで、調達の基本をしっかりと勉強しようという気持ちはありました。

受験を躊躇している方へのアドバイスとは?

森宮
仕事をしながらの受験勉強はハードルが決して低くはないと思います。
受験を躊躇されている方にアドバイスはございますか。

古沢
調達について定石を勉強し基礎固めをするのには良い資格だと思います。
そういう基礎を作った上で、実務の上で応用すると良いと思います。

調達のイロハや定石を勉強するのにはまとまった素材ですし、結構網羅的に盛り込まれている教材という印象を持っていますので、取り組むことは非常にプラスになると思います。

森宮
調達部以外でこういう資格を受けても無駄にはならないという部署はありますか?

古沢
定石を知るということで、サプライヤーさんとのコミュニケーションにおいてもコモンセンスを持った上で話ができるようになります。
あるいは製造部門と話す時も相手の背景が理解できたり、新しい提案をする場面でも役立ちます。

自分自身が仕事をする上でも、漏れ抜けのないかのチェックや、諸々全体像を把握しておく際の目安としてや、説得力の向上についても役立つとて思います。
とは言うものの、資格取得して間もなく、これから実務に活かしていきたいと考えている段階です。

森宮
本日は貴重なお話しをいただき誠に有難うございました。

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