最高得点者・団体受験インタビュー (凸版印刷 武野氏 中田氏 金子氏 小島氏)

凸版印刷株式会社の武野 正樹さん(中部事業部 購買部 課長 包装管理士)、中田 明子さん(事業開発・研究本部 総合研究所 購買チーム 主任)、金子 真大さん(製造統括本部 購買センター 資材調達部)、小島 基晴さん(製造統括本部 購買センター 資材調達部)にお話を伺いました。(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)

凸版印刷の事業の3つの柱とは?

森宮
まず、御社についてお話しいただけますか。

小島
凸版印刷は、1900年に創業の大手印刷会社です。原点である「印刷術」を「印刷技術」に進化させて事業分野を拡大してきました。
事業分野は、「情報コミュニケーション」、「生活・産業」、「エレクトロニクス」の3つに分けられます。

「情報コミュニケーション」で手掛けているのは、証券・ICカードなどの「セキュア」、ポスター・電子チラシなどの「マーケティング」、雑誌・電子書籍などの「コンテンツ」です。

「生活・産業」では、各種包装材・カートカンという紙の缶など製造する「パッケージ」、化粧紙・壁紙などの「建装材」、透明バリアフィルム・リチウムイオン二次電池関連部材などの「高機能・エネルギー関連」です。

「エレクトロニクス」では、液晶用カラーフィルタや反射防止フィルムを製造する「ディスプレイ関連」、半導体用フォトマスクやイメージセンサ用カラーフィルタの「半導体関連」となっています。

これら各分野の調達にかかわっているのが我々、購買部門の社員です。

また凸版印刷は、埼玉県杉戸町に総合研究所を設け、さまざまな研究開発を進めています。
研究開発を通じて、既存事業の強化や世界トップレベルの技術構築により、企業価値の向上に努めています。
本日お集まりいただいたうちの一人、中田さんは総合研究所で勤務しています。

本日はCPP合格者3人が揃いましたが、武野課長が「情報コミュニケーション」「生活・産業」分野を扱い、中田さんが総合研究所勤務、金子君が本社での間接材も含む担当と、担当領域はバリエーションに富んでいます。

CPP試験を受けるに至った経緯とは?

キリン古沢氏画像森宮
古沢様がCPP試験を受験されるきっかけはどのようなものでしたか。

古沢
「CPPは調達に必要な知識を体系的、網羅的に習得でき、かつ、調達活動をより戦略的、論理的思考にもとづいて取り組むことができる」というメリットから、調達部の人材育成方針の中にCPP資格取得が設けられ、受験が奨励されています。

私も秋に異動して次の年にはB級、引き続きA級を受験しました。
部内ではA級取得者が約60名、B級取得者が70名を超えています。
異動して間もない人以外は、ほぼ全員取得している、それを目指しているという状況です。

森宮
社内で制度的に導入いただいていているのですね。
部内で資格保有者がたくさんいらっしゃる中で、勉強方法や教材などについては何かアドバイス等はありましたか?

古沢
試験の傾向等についての社内コミュニケーションはあります。
また「試験対策セミナー」の内容を参考にして勉強しました。
ガイドブック一式は赴任して間もなく会社から配布され、実務を通じて目を通すことを奨励されました。

森宮
部門の多くの方がA級のホルダーでいらっしゃるということは、B級取得後のA級受験も会社が奨励されているのですか?

古沢
調達部に配属になった社員には、B級取得は全員に奨励されていて、管理職(経営職)は更に上級のA級取得まで奨励されている状況です。
現状ほぼ達成されている感じです。
調達業務に必要な基本的な用語や考え方を、早い段階で皆さん理解しましょう、ということなのだと思います。

皆さんある程度プレッシャーを感じながらそれぞれ計画的に受験されています。

経験豊富なベテランがなぜ受験する?

小島さん

森宮
御社には組織として、長期的にCPP試験を受験していただいています。
どのようなきっかけで始められたのか、教えていただけますか。

小島
当社がCPPの受験を始めたのは2013年度からです。

ちょうど日本能率協会がCPP制度を開始し、数年たったころです。
日常の調達業務で得られる以上の調達に関する専門知識を社員に習得させたいと考えていました。

社内では、購買部門の「人財育成」に当たり、必要な知識や技能を一覧表にしています。
それを達成するために2013年度から「調達プロフェッショナルスタディーガイド」とCPPの資格取得を進めているのです。

森宮
組織内では、この制度は周知されているのでしょうか。例えば、みなさんは受験の順番がそろそろ自分に回ってくるとか、そのような心の準備が醸成されるような雰囲気なのでしょうか。

武野
そのことは予め知っていて、自分もいずれどこかのタイミングで受験しようと考えていました。

森宮
武野さんはどのような流れで受験に至ったのですか。

武野
私は以前福岡にいたのですが、その後中部事業部に転勤してきました。
中部事業部は毎年、誰か1人にCPP資格を取得させる方針なのですが、他のメンバーは既にほとんどが取得済みで、私ともう1人ぐらいしか残っていませんでした。それでちょうどいいタイミングと思い、私が受けようと名乗りを挙げました。

森宮
外堀が埋まりつつある中、ご自身から手を挙げたのですね。

武野
そうですね、タイミングが良かったのかもしれません。

森宮
武野さんは調達の仕事を始めて何年になりますか。

武野
21年です。

森宮
いまさらと考えませんでしたか。

武野
いや、別にそうは思いませんでした。

そもそも調達の仕事はこういった外部の資格が私の若いころになかったと思います。
だから、特殊な仕事と考えていました。

お手本がない、教科書がないと感じていましたが、こういう資格ができて実務の中で覚えてきたことがどれだけ汎用的なのか、偏っているのかをあらためて確認するチャンスが来たような気がしました。
せっかく受けるので前向きに考えて勉強を始めました。

森宮
ちょっと余談になりますが、ベテランの方はこの資格を腕試しに受験して一発で受かる人と結構低い点数で落ちる人に分かれます。

落ちた人はショックが大きいようですが、高得点で合格したわけですから、21年間の蓄積が実ったのでしょうか。

武野
それもあったと思いますが、一生懸命に勉強しました。

若手社員が受験を思い立ったきっかけとは?

中田さん

森宮
中田さんはどうでしょう。

中田
私は購買部門に異動して2年です。
チームの中には既に資格を取得しているメンバーもいました。
業務を始めて2年近くなったところで上司から勧められ、受験しました。

森宮
準備期間はどれくらい取りましたか。

中田
テキストをいただいたのが6月で、7月から読み始めて1月に受験しました。

森宮
半年ぐらいかけたわけですね。

上司からの声掛けがあり、自分の順番が来たという感じでしょうか。

中田
職場に異動してきたときにこの資格があることを教えられていました。

いずれは自分も挑戦してみたいという思いを持っていました。

森宮
研究所の調達は事業部と違って、目的や対象が多岐にわたるということですが、中田さんはテキストに書かれている内容と日常業務との差についてギャップや違和感を覚えませんでしたか。

中田
違和感はありませんでした。
職場でいろいろな課題について話をしていましたが、実際にどう改善するのかはあまり明確になっていませんでした。テキストで勉強することにより、解決策の参考になる情報を得られました。

金子さん

森宮
金子さんはこのテキストの中身について、どうお感じになりましたか。

直接材と関接材は本当に大きく異なっていますが、それを1つの調達購買という名前の下にまとめるのは、われわれが苦慮したところなのです。

金子
私はテキストを読む前にセミナーを受けました。ですから、まずはセミナーの資料を覚えることから始めました。

私は記憶するときには文字を自分の言葉に置き換えて頭に入れます。
そこで、自分なりに咀嚼して、それでも分からない部分をテキストで見るという方法で勉強を進めました。

森宮
効率的な勉強の仕方ですね。
金子さんは入社3年目だそうですが、入社以来ずっと購買部門ですか。どの時点で資格の存在を知ったのでしょうか。

金子
2年目ぐらいでしょうか、先輩方が受験しているのを認識しました。
2年目の6月に1つ上の先輩が受けたのを知り、次は私の番だと思いました。
そんなときにセミナーを受けると合格率が上がると聞き、小島さんに「受けたいです」とお願いしました。

本社では何人も受験する人がいますから、自分から手を挙げました。

受験勉強で工夫した点とは?

森宮
武野さんはどんな勉強方法を取りましたか。

経験豊富なので、なかなかモチベーションが上がらないようなことはありませんでしたか。

武野
私はセミナーを受けさせてもらい、基本的にテキストを1から読みました。
私の場合はそもそも、記憶力が衰えています。覚えることよりも内容を1回、読んでみようと考えました。
それでひと通り読んでみたわけです。あとはセミナーで重要と聞いた部分を覚えながら2回目に読んでいきました。

モチベーションに関して、今さら感や人に教わりたくないという気持ちになることはありませんでした。
むしろ、最初に申し上げた通り、調達という仕事を他の人もしているという意識があまりなく、自分1人でやっている感じだったのです。
それで、他の会社の調達担当の方がどんなふうに考え、先生になるような人物がどういう方向でまとめていくのかが、非常に興味深かったのです。

森宮
受験勉強というより、ご自身の業務の整理みたいな感じでしょうか。

武野
他の会社の調達担当の考え方に触れ、すごく新鮮な感じがしました。

森宮
中田さんはどうでしたか。

半年という期間がありましたから、短期集中というより日常の業務と折り合いをつけながら学習しなければならなかったのではないですか。

中田
本当に少しずつ進めた感じです。
テキストをいただいて1から読み始めたのですが、調達以外にプロジェクトマネジメントや物流など幅広い分野の内容が載っていました。読み物として面白く、参考になりました。

それらをすぐに覚えられたわけではありませんが、すごく読みやすく、読むのが辛いと感じませんでした。

森宮
苦労した点や不安な点はありましたか。

中田
試験勉強としては量が多いので、ポイントを絞った学習がしづらかったです。
ですから、試験の直前はセミナーでうかがった内容を集中的に勉強しました。

森宮
事業所もバラバラなみなさんですが、最高得点を同じ会社から3人も出すのは本当にすごいことです。
何かご一緒にされたことや社内での申し送りみたいなものがあったのでしょうか。

中田
試験対策セミナーでの先生の発言をメモし、共有しました。こういった設問の形で出るといっていた点などです。

森宮
それは武野さんにも伝わりましたか。

武野
伝わってくる範囲で聞いていました。

森宮
金子さんが、受験準備を始めるにあたって先輩から何か聞いたというようなことはありますか。

金子
先輩からアドバイスを聞きましたし、同じ本社で同じ時期に受験する人と一緒に勉強しました。
休日に喫茶店などで行いました。

中田
私も同じ研究所の後輩が受験する予定でしたから、ときどき声をかけて刺激し合っていました。
家で勉強するときはノートにテキストを書き写し、単語帳を作るなど、高校や大学の受験勉強と変わらない感じでした。

森宮
武野さんがテキストを読み込んだのは通勤時間でしょうか。

武野
いえ、私は通勤時間や社内にいる間をあまり受験勉強に使っていません。
休みの日に図書館へ行ったり、帰宅後に時間があるときにテキストを読んだりしていました。

高得点を獲得できた背景とは?

森宮
792点という結果に驚きはなく、素直に受け入れられましたか。

金子
800点だと思っていました(笑)。

武野
感触としては間違えていないだろうと思いました。

中田
私はそこまでではなかったです(笑)。

森宮
解いていて分かる感じはあったのですね。

最高得点者のインタビューは昨年度ぐらいから始めました。
ヒアリング数としてはまだ少なく、最高得点を取る背景、共通点を探る情報は少ない状態ですが、組織のバックアップはあったのでしょうか。

みなさんの場合、いっしょにそろって勉強したことがなくても、組織の英知を分かち合った一面があるように感じます。

中田
組織ということでは、会社からいろいろと支援してもらい、勉強している意識はありました。
その分、失敗が許されないというプレッシャーは感じていました。

森宮
合否の発表は社内でされましたか。

小島
報告はすべてもらっています。

中田
勉強法も報告しました。

金子
受験した全員の合否は共有しています。

武野
会社の費用で受けていますから、報告義務があります。

小島
受験者数と合格者数を発表します。今回は、合格率59%でした。

森宮
やはり合格率が高いですね。
今後、組織としてA級にチャレンジすることは考えていますか。

小島
今のところはB級の取得率を上げようとしている段階です。

CPP資格を日常業務にどう生かす?

森宮
CPP資格の取得でみなさんが一定の知識を持っていることが証明されたわけですが、日常の業務は多忙を極め、多角化も進んでいるようです。

そんな中、この資格を業務の中でどう生かしていきたいと考えていますか。

まずは金子さんに伺います。

金子
これまで上司から「こんな資料を作って」といわれ、具体的な名前も分からないまま作成しているような感じがしていました。

CPPの勉強をすることでそれにようやく名前がついたように思います。
例えば、戦略部品互換表など、意味や使い方がしっかりと分かるようになりました。
業務の中でどの資料を使うのが適当なのかを考え、活用することで、自分の業務をどんどん広げていきたいと考えています。

森宮
中田さんはどうですか。

中田
開発購買など概念としては分かっていても、実際にどう進めたらいいのかが分からず、手を出しかねていることもありました。今回、詳しく学ぶことができましたから、そういう部分も実際の業務に生かしていきたいと思います。

森宮
武野さんはいかがですか。

武野
私は人から教わったり、業務の中で培ってきたりした知識の延長線上で仕事をこなしてきました。
だから、人に教えるときは、自分の経験を超えることができませんでした。

今回、このように体系的にまとめたものを勉強させていただき、若い人により全体を網羅した教え方ができるようになったと感じます。

学んだ知識はどんな企業、業界にも置き換えることができる実に汎用的なものでした。
だから、自分の言葉ではなく、世の中に通じる言葉で教えられるようになったのではないでしょうか。
これからも教えていくことにこの知識をうまく使っていきたいですね。

森宮
それぞれのお立場で仕事や考え方のフレームみたいなものを身につけることができたと思います。
最後に小島さんから2013年から今までで社内でどういう変化があったのか、教えてください。

小島
調達の実務経験がある人は受験によって調達に関する専門的な知識が広がったはずです。
それを実際の業務、業務の変化の中でバランスよく対応してくれていると思います。
新しく購買部門に来た人や新人もCPP資格の取得で体系的な知識が身につきます。
購買部門の実務の方向性や位置づけの理解にも役立つでしょう。

このような方向性を持ってCPP資格の受験を活用させていただいています。

森宮
お話をうかがっていて、こちらも勉強になりました。
ありがとうございました。

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