キリン インタビュー

国内調達をグローバル標準にひきあげていくことが、我々の大きな課題だと思います。

CPPホルダーのキリン 間美弥子さん(調達部 企画担当 主査)を訪問しました。日本能率協会の安部武一郎がインタビューします。(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)

調達企画の業務とは?

間美弥子さん(調達部 企画担当 主査)

間美弥子さん(調達部 企画担当 主査)

(安部)
まず、間さんは調達部の企画担当をされていますが、どのようなお仕事をされているのかご紹介いただけますでしょうか? 

(間)
調達部で、国内の“全体戦略企画”と“人材育成”、
また国内・海外を含めたグループ調達の仕事も兼務しています。

国内の調達業務を集約したことで大きくなった調達機能をどのように変革していくか?という面からの企画と、加えて海外の主要なグループ会社と「調達」という切り口から一緒にどのようなことができるかと話し合いもグローバル調達をテーマに進めています。

(安部)
調達という切り口で、グループ会社とつながっているということでしょうか?

(間)
キリングループ全体で見てみると、
海外と比べて国内は、本来の経営に帰する調達戦略からまだ遠いところにあるように感じています。
長年調達キャリアを積んだ海外の専門人材とグローバル調達の話をしているなかでレベルの差に気が付いたのです。

(安部)
人材育成をご担当されているお立場から、日本国内のバイヤーのみなさんのレベルをあげていくという課題感がおありになるということでしょうか?

(間)
国内調達をグローバル標準にひきあげていくことが、我々の大きな課題だと思います。戦略的視点と人材育成の両面から組織力を強化することが大切であると考えています。

何か大きなステップアップをしなければいけない、そういう状況に直面し、まず当時のリーダーと志の高いメンバーの2名が試行的に受験したのがはじまりです。

海外の調達レベルとは?

(安部)
CPPは、どのようなきっかけ知っていただいたのでしょう?

(間)
部門としては、2008年ぐらいに、当時のリーダーが、パンフレットをみて知ったそうです。そのあと1年ぐらいは寝かしていたようですが。。。笑。

当時は、「国内の調達機能をどのように集約しようか」との検討段階でしたが、その後実際に各事業にあった様々な調達機能が集約されました。

集約後何か大きなステップアップをしなければいけない、そういう状況に直面し、まず当時のリーダーと志の高いメンバーの2名が試行的に受験したのがはじまりです。

その結果「これは、非常にやりごたえがある」ということを確認し、部内に共有されました。

その後、新たに調達に異動してきた私にも声がかかり、
「人材育成担当者としてCPPを受験してください」
「他の方々にも受験してもらうようにしてください」
という命題をいただきました。
そこで、はじめてCPPにふれることになったのです。

実は、私は調達部門に異動するまで、調達とは何をやるところか正直よくわかっておりませんでした、笑。
“調達とは何をすべきところなのか”は、このCPPのおかげで習得できたと思います。
調達に関する有効な参考書籍が少ないと感じるなかで、すごく手短に調達の世界をまず把握することができました。

「調達とは本来こういうことを目指さなくてはならない。」
「より戦略的に、今まで以上に、付加価値を生まなくてはならない。」
志が高い内容のテキストを拝見して、このように感じました。

それと同時期に、我々のグローバル調達という試みがはじまりました。
当然、海外のバイヤーと意見交換し協議する場が増えてきました。その中で、海外は当たり前のように、CPPの教科書に書いてあるような戦略機能を持っていることに気いたのです。。また、CPPのテキストに書いてあった内容とほとんど同じことが話されていて、略語もグローバル共通で通じるということにも驚きました。

それに比べ国内では、手配購買的な業務がまだまだ多く、意識的にも受け身型、処理型という印象を受けました。これをどう変えていくのかが課題だと思いました。

我々(国内メンバーのレベル向上)が追いつかないと、グローバル視点での大きな動きはできないと感じています。
これからは、国内の目先のことだけではなく、夢は大きく世界に目を向けていくことが大切です。世界で戦える調達バイヤーを目指した人材育成プログラムを強化していきたいと考えています。

解決のポイントは、まず部長を含むリーダー層が勉強して、「とても良さそうなことが書いてある」という考えを上層部と共有し浸透させたことだと思います。

調達キャリアとはなにか?

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(安部)
調達に関する教材が世の中に少なかったということもあり、学習も大変だったと思いますが、いかがでしたか?

(間)
一番のハードルは、意識改革だと思います。
「自分たちの調達のやり方が正しい」「やり方を変える意味があるのか」「我々は、食品業界であって、テキストの世界とは違う」と思う方も、最初は多かったのです。
それから「年齢的にこの年で受験なんて勘弁してほしい」という方も残念ながらいました。

(安部)
どのように解決していかれたのでしょうか?

(間)
解決のポイントは、まず部長を含むリーダー層が勉強して、
「とても良さそうなことが書いてある」という考えを上層部と共有し浸透させたことだと思います。
メンバーにはそのあと徐々にリーダーを経由し普及する形をとりました。

“部長が率先してメンバーと一緒に受験して合格したこと”、このことが組織を変えていくのに重要な契機になりました。若い人達にやりなさいと命令するだけでは、絶対についてこなかったと思います。
“リーダーや上層部がまず最初にチャレンジし、いいと判断したうえで展開している”
この事実が、メンバーの心に刺さったのではないでしょうか。

(安部)
社内的な調達部門の地位や位置づけについて、ご苦労されているお会社が多いかと思いますが、いかがお考えでしょうか?

(間)
調達部門は戦略立案・交渉以外にも様々な専門知識を習得して業務に当たる必要があります。それだけでも、調達では“人を育てることができる”と感じており、そのことが、少しずつ社内にも伝わっていると感じています。
実際CPP合格者も増えており、「調達に異動してもらったからにはピカピカの人材にしてお返ししますよ」と人事部門に対して言える重要なアピールポイントにもなっています。

お孫さんのいるような方が、小学生ぐらいの子供たち一緒に勉強を頑張られたという合格体験記を読むと涙がでてくる時があります。いくつになっても人として学び続けるという姿勢が感じられ、本当に素晴らしいなと思います。
人材育成を担当しているものとしては、「調達部で大きく成長した」と言ってもらうのが、一番嬉しいことです。

それからチーム力も大事ですね。みんなでワイワイしながら学習することは楽しいことです。。
この年代になってあらためて真剣に勉強する方はそう多くないと思いますので、その意味でも新鮮な体験につながるのではないでしょうか。

皆忙しいなか、ランチタイムを利用して有志で勉強会を開き、リーダーもメンバーも仲間として、上下の関係なく助け合って取り組んでいます。一緒に苦労した「受験同期」という意識も芽生えるようです。

CPPの有効性とは? ~受験のプレッシャーと一体感~

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(安部)
CPPが、部署やチームの中に浸透していくうえで、リーダーのみなさんのお役割はすごく大きかったのだと思います。
今では50名を超える方々がCPP受験者となっておられますが、間さんを含め、みなさんはCPPについてどのようにお話されているのでしょうか?

(間)
皆さん「結果的に受けて良かった」と言っています。

先にも少しふれましたが、合格者全員に、
‐どのような勉強をしたか
‐どのような気付きを得たか
‐このような点で役立つ、
といった内容の「合格体験記」を書いてもらい部内で共有しているのです。

私自身、CPPの良さを身に染みて感じていますが、メンバーが全然必要ないというものを、一方的に押しつけ強制することは意味がないと思っています。
ご本人として、どの程度の自己啓発に効果的であったかを判断してもらうためにも体験し感じたことを合格者全員に書いてもらっています。

皆さん、自分達が今までやってきた調達とは別の切り口があると気付いたり、先進企業の取り組み事例に気づきを得られたりするようです。

単なる受験テクニックというだけでなく「目の前の調達業務につながるものをやること」が大事だと思います。
CPP受験後に「実際の業務に活かすのは、皆さんの知恵次第です」とお伝えして取り組んでいます。
合格体験記を活用して少しずつ盛り上げてきましたので、今では調達部員でCPPを知らない人いなくなりました。

(安部)
「合格体験記」というネーミングもとてもいいですね。

(間)
私にとっても受験は相当なプレッシャーでしたが、夏の暑い時期になると、今でもCPPを受験した頃の記憶がよみがえります、笑。

他の受験者も同じようなことを言っていますね。
皆忙しいなか、ランチタイムを利用して有志で勉強会を開き、リーダーもメンバーも仲間として、上下の関係なく助け合って取り組んでいます。一緒に苦労した「受験同期」という意識も芽生えるようです。
CPPを導入したのをきっかけに、チームデザイン的な活動が芽生えて広がってきた、そこがとても面白いと思います。

(安部)
CPPをきっかけにメンバーのつながりもうまれているんですね。

(間)
はい。さらに、重要と感じることは、メンバーとのコミュニケーションにおいて言葉の定義がはっきりしてきたことです。

例えば「自分たちが考えるVEとは、□□だ」考えることは、それはそれでいいのですが。しかしそれではあくまで個人の解釈になってしまいます。
「外の広い世界は○○を■■と捉えている」とう共通の概念ができると、共通の調達言語で話が通じやすくなり、そのあとのコミュニケーションがとっても効率的になりました。

例えば、テキストの“あのチャート”だと言えば、皆それを見て確認することができます。当社にマッチするかは別にしても、少なくとも世の中の標準が簡潔に述べられ、体系的に整理されていて、非常に引用しやすいと感じます。

(安部)
なるほど。共通の言語や認識でお話しができるんですね。
海外の方々とのコミュニケーションはいかがですか?

(間)
私が調達に着任して間もない時に、にわか知識かもしれませんが、テキストを見て理解した上で海外の方と話をしますと、その用語が相手にサッと伝わり、「こいつ少しわかっているな」と、いう感じで話をしてもらえた記憶があります。

そういう意味で、調達の世界を的確に表現した教材だと思います。今後は、我々のなかで、このテキストの内容を実際の仕事につなげ広げていきたいですね。

(安部)
CPPの利用が、先ほどおっしゃっていたチームビルドに役立っていたり、コミュニケーションにも役立っているということですね。

(間)
はい、そうです。テキストのあの厚みをみて、皆最初は驚くのですが、結果的には役にたっていますね。

「言われたことだけをやる調達」ではなく、調達だからこそ、社外から情報を得るアンテナがあるからこそ、経営や社内関係部門に「提案できること」が必ずあるはずだと感じています。

これから目指す調達の姿とは?

(安部)
調達機能が、いろいろな業界で注目されてきています。
これまでよりも、期待される関与領域が広がっていると感じるのですがいかがでしょうか?

(間)
はい、非常に活動領域が広がってきており、もっともっと経営戦略に近づいていると感じます。会社の大きな方向性をみながら、先回りして動かなくてはなりません。。大きく舵を切り変えて、我々の組織能力も強化していきたいと考えています。

(安部)
経営からの期待もどんどん大きくなってきて、調達起点で貢献していくというお気持ちですね。

(間)
はい、調達として会社に貢献していきたいですし、そのために“ある程度は経営に対して物申すことができるようにならねば”と思っています。「言われたことだけをやる調達」ではなく、調達だからこそ、社外から情報を得るアンテナがあるからこそ、経営や社内関係部門に「提案できること」が必ずあるはずだと感じていますそこを意識して、経営戦略に近いところで、関係部門を巻き込んで大きな取組みができるかが大事になりますね。

(安部)
高い志をお持ちですね。

(間)
これからは、そういう前向きな改革意識がなくては調達ではやっていけないと感じています。「生半可な気持で調達部門に来るくらいなら、別部門にいったほうがいいですよ」とはっきり申しあげるぐらいです。志の高いメンバーに参画してもらい、その志の高いメンバーと一緒に頑張って成果をあげていきたいです。
調達を通じて、また調達自体の組織をどう変えていけるか、それが私たちの課題になりますね。

(安部)
間さんご自身はCPP・A級を取得されており、これから御社では人材がどんどん育成されていくことと思います。これからCPPの受験を目指している方へ応援のメッセージをお願いします。

(間)
CPPに挑戦することは、単に調達を学ぶだけではないと思います。
例えばMBAの教科書にあるような理論のエッセンスも書いてありますので、
テキストの内容を学ぶことは調達以外のビジネスにも十分活かせると感じます。

メンバーにも、「調達業務のために取り組むけれども、もし調達から異動しても有効ですよ」とお話ししています。企画、立案、生産、交渉など、CPPを通じて学んだことが活きない分野はビジネス上あまりないと思います。
それぞれの分野のエッセンスが凝縮されているのですね。
CPPを学ぶことは、調達のための資格取得だけでなく、社会人として仕事をする上でとても身になることだと思いますので、自信を持って私もおすすめします。

(安部)
今日はありがとうございました。

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