関西電力・浜田氏 川口氏 インタビューその1|調達の効率化に対する課題とは?
関西電力の浜田誠一郎さん(調達本部 調達改革推進グループ チーフマネジャー)、川口恒平さん(調達本部 流通・一般機器調達グループ)にお話を伺いました。(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)
調達の効率化に対する課題とは?
勝田
本日は関西電力の浜田さんと川口さんにインタビューさせていただきます。
浜田、川口
よろしくお願いします。
勝田
まず、現在のそれぞれの業務内容について、お教えください。
浜田
私は調達本部 調達改革推進グループで主に3つの仕事をしています。
まず、調達本部の契約をどうコスト削減していくかの戦略を立て、PDCAを回していくこと。
次に、調達本部が権限を持っていない契約や、グループ会社の契約もかなりあるので、それらを改善する取組み。
そして、調達本部の業務のやり方自体を効率的に見直すことです。
川口
私は流通・一般機器調達グループに所属しています。
流通・一般機器調達グループは、発電所から敷設されている電線や、変圧器、キュービクルや遮断器といった変電設備、その他電柱や、お客様のご自宅に設置されるメーターなど、電気を送るための流通設備の契約を担当するグループです。その中で私は主に発電所に近い超高圧の変圧器の契約担当をしています。
また、調達改革推進グループで立てた調達本部全体の目標を踏まえ、所属するグループの方針や戦略を取りまとめていくことも担当しています。
勝田
設備から燃料まで非常に調達の幅が広いという印象を受けましたが、その中で苦労したことや工夫していることがありましたら、お伺いしたいと思います。
浜田
燃料は燃料室という別の組織があり、調達本部の調達は設備や工事が中心になります。
当社は公益事業であり、今まではどちらかというと品質や安定供給の方を重視していました。
2016年4月から電力小売が全面自由化され、これからは他社と競い合う中で品質と価格のバランスを見なければいけないところが難しくなります。
今は過渡期で、この点に苦労しています。
勝田
その競争の中、社内でどこまで費用をかけるのかというところでさまざまな取り組みをしているのでしょうか。
川口
どれだけ効率化できるのかというところが問題になってきます。
われわれは電気の安定供給と調達の持続的な効率化をキーワードに掲げて仕事をしていますが、電気という分野だとそれほどサプライヤーも多くありません。これまで協業してやってきた歴史もあり、いきなりさようなら、ということは絶対にできません。
そのような中で、品質や安定供給を確保しながら、一方でいかに原価を下げていくのかが難しいところです。
勝田
品質を担保しながら、原価を下げていくわけですね。
川口
停電が起こるような事態になってはいけません。電気はあって当たり前という品質を維持しつつ、一方でいかに原価を下げていくかというのは難しい課題です。
CPPに取り組んだきっかけとは?
勝田
2人ともCPP(購買プロフェッショナル資格)のホルダーです。
CPPに取り組むきっかけをおうかがいします。
浜田
私は他の部門から来たので、調達とか購買の名前がついている本をいろいろと買って調べているうちに、CPPを見つけました。
川口
私は7年前に調達部門に配属されました。
配属されたときは、OJTや先輩方に聞くことで業務を行うことが中心で、なかなか貢献できず、もどかしい思いをしていました。そこで、社外の調達担当の勉強である購買ネットワーク会に行くなど、自分なりに何かできないかと模索していた中で、最終的にCPPへ行き着きました。
勝田
まず、ガイドブックに触れていただいたと思うのですが、非常に分厚いでしょう(笑)。
内容も見ていただき、どんな感想を持ちましたか。
川口
とてもよくまとまっていると思います。
私自身がすごいと感じたのは、知識ガイドもそうですが、スキルスタンダードの部分です。
調達に求められる役割と、どういうスキルによって、バイヤーとして付加価値を出していくのかという方向性が書かれています。
予算や設備を管理していない調達部門がどうやって事業に貢献していくのか、しっかりと書かれています。
これは使えると思い、部門の教育にかかる方針の中にも記載していただくよう働きかけました。
知識ガイドもまとまっており、スキルスタンダードと併せるととても勉強になります。
勝田
ガイドブックで勉強したのは、試験を受けようと考えたからですか、それともまずは読んでみようということだったのですか。
川口
まずは読んでみようというのが始まりでした。
確か私が購入した第2版が2万4,000円だったと思います。
テキストの存在自体は知っていましたが、購入するまでかなりためらいました。
厚さの割に高いし、自費だし(笑)ただ、これも自分への投資と思い、買ってみることにしました。でも、いざ買ってみたら、既に会社にありホコリをかぶっているという。(笑)。
浜田
色々な本を読んだあとに、会社にあったCPPガイドブックを読みました。
よく体系立てられていて、これだけでかなりカバーできると思いました。
CPPの勉強が業務で役に立ったこととは?
勝田
受験しようと思うきっかけは何かあったのですか。
川口
資格は、勉強したことを客観的に証明することができると思います。
資格を取ること自体が目的ではなく、資格の勉強に盲目的に時間をかけるものでもないと思っていますが、資格をとらずに意味がないというのも負け惜しみみたいな気がして。
せっかくテキストも買ったし、資格も用意されているので力試しに受けてみようと思いました。
浜田
調達の資格をあれこれ調べた結果、CPPが1番という結論に達しました。
あるのだったら受けよう、取るならA級にしようと考えました。
勝田
最初からA級を見据えていたのですね。
実際に受験するという目的に向かい、読み進められたわけですが、勉強法に何か取り込んだことはありましたか。
川口
まず、読むことから始めました。
設備を調達するにあたり、どのような方法で戦略的に調達していくのか考え、見える化し共有していくことを自分たちはカテゴリーマネジメントと呼んでいますが、ちょうど各カテゴリーマネジメントを考えるに当たり、どのように考えれば良いか悩んでいました。
そこで、何か使えそうなところはないかということで辞書代わりに使うことからはじめました。
勝田
ちょうど業務の課題とも関係していたのですね。
川口
そうです、テキストを我々が調達する設備にあてはめた資料を水平展開することもしました。
勝田
業務と紐づけてやることで、ある意味効率的な勉強ができたわけですか。
川口
そうですね。
勝田
浜田さんが工夫した点は何かありますか。
浜田
まずは読み込んで、次に仕事でもたくさん使いました。
書いてあることが非常に斬新かというとそうではなく、当たり前のことが当たり前に整理されています。
ベテランの人が読むと「そうそう、これこれ」という感じで体系立てられますし、若い人はいままで時間がかかっていた学習を特急列車で行けますから、調達にかかわる人は皆さん読んでほしいと思います。
川口
ベテランの方はすべて頭の中に入っています。
ただ、教育となると、バラバラの順番になるため、若手からすると整理と理解が追いつかず非効率な部分があります。
浜田
製造業ではない当社では使えないパートがあり、例えばIEやTPSは合いません。
勝田
そうですね、生産技術寄りの内容ですよね。
川口
開発購買の中でいかに上流工程に入っていくかを考えることや、調達の核となる5大権限、1禁止事項などをみんなが大事だと考えています。
それをあらためて明確に調達の権限、仕事として書いている点も良いと思います。
試験を実際に受けた感想とは?
勝田
それぞれ勉強のうえで受験されたわけですが、実際の学習時間はどれくらいでしたか。
ガイドを手元に置いて受験するまでの期間は、どれくらいだったのでしょうか。
川口
試験勉強という意味では、直前1週間くらいです。
浜田
純粋な試験勉強としては直前1週間ぐらいです。
ただ私は数ヶ月前から仕事に使っていましたので、ゼロから始める人はもっと時間が必要です。
勝田
確かにゼロから1週間では無理ですよね。
川口さんが先ほどおっしゃったように、あらかじめ業務の中で活用するという助走があって、最後の1週間で集中的にやることができたのでしょう。
川口
詰め込んだ形になりました。
勝田
実際に試験を受けた感想で、難しいという印象を持ちましたか。
川口
試験自体は難しいとは思いませんでした。ガイドブックに書かれたことが、そのままでますから(笑)
試験は自分の中にちゃんと入ってきているか、腹落ちしたかどうかの確認でした。
浜田
B級の試験は、ガイドブックをきちんと読んでおかないと合格しないでしょう。
そういう意味では良い試験だと感じます。
勝田
テストを受けたら、会場の外ですぐに結果をもらえることになっていますが、そのときはどんな気持ちでしたか。
ほっとしたのか、「よし」という感じ、それともひと息ついたのでしょうか。
川口
ほっとしましたね。
浜田
ほっとしました。
川口
カテゴリー別に点数が出るので、どの点が勉強不足だったかの振り返りもできました。
CPPで学んだことを広める「友の会」とは?
勝田
お2人とも合格し、CPPで学んだことを周りに広める活動をしているわけですが、浜田さんから活動の部分をお話しいただけますか。
浜田
CPPは私自身の仕事には本当に役立っていますし、これを広めれば会社や部門のためになると思いました。
合格した後はテンションが上がって「広めるぞ」みたいな感じになって、川口に一緒にやろうと声をかけました。
まず部門長の了解を取ってガイドブックを買い、受験希望者を集めた「友の会」を立ち上げたのが4月です。
7月の受験は無理強いせず、翌年1月でも良いので、その人のペースに合わせて勉強してもらうことにしました。
勝田
やはり受かった人でないと分からないこともあり、良い旗振り役になってくれていますね。
浜田
私は他部門出身で管理職でもあるので、やりやすかったのでしょう。
川口
私は調達部門に長くいて、経験則がかなり強い部門だと感じています。その中で調達を客観的、体系的に学ぶことの必要性を一担当者が強調しても、ここまで広がらなかったと思います。そういう意味ではとても助かりました。
浜田
本来の業務もあるのに、負担をかけました。
川口
いえ、面白かったです。
この活動で、委託、請負工事、火力など他の契約グループとの接点も生まれました。グループによってサプライヤーも異なり、通常であれば仕事の接点もあまりないのですが、個人的なつながりが生まれたのです。
今回の勉強が共通言語の役割を果たしてくれたといえるでしょう。
他のグループでどんなことをしているのか、気にしている人もいますので、そういう人には有意義な情報だったようです。
勝田
今のお話は「友の会」のことですよね。
CPPの資格取得を通じた調達本部のスキルアップとその結果としての組織力向上に向けた活動だと聞きます。
お2人が「友の会」を立ち上げ、そのエンジンになって活動を広げていったということでよろしいですか。
浜田
そうですね、はい。
「友の会」事務局の活動とは?
勝田
「友の会」の事務局として社内メールマガジンの発信や勉強会、懇親会などをやられたそうですね。
CPPを社内に広め、組織力を向上させるために尽力されたわけですが、会の運営で苦労したことはありましたか。
もともと志の高い人が参加しているようですが、困ったことなどはなかったのでしょうか。
浜田
結構、勢いで進めましたから(笑)。
メルマガは週に1回出すことにして、担当と締め切りを決めて管理しました。
自分が書くときは、以前読んだ際に付箋を付けたり、メモを書き加えたところを引っ張り出して作りました。
川口
ガイドブックの中身は充実しているので、書くことには困りませんでした。
勝田
メルマガはどんな内容だったのですか。
浜田
ガイドブックの各章のワンポイントレッスンと、調達に関する雑談みたいなコラムの構成です。
レッスンでは、例えばスぺンドアナリシスだったら、当社でどう役立つか、試験ではこういうところが出るといったポイントを書きました。
あまり長いと読んでくれませんから短めにするなど、工夫しました。
勝田
ガイドブックを社内の実際の業務に結びつけたわけですか。
浜田
はい。
ガイドブックの全章について、当社の調達業務との関係性を4段階に分類して、◎は「業務に直結するので必読」、△は「製造業向けなので教養程度。ただし受験には必須」などと整理しました。
その分類は、最初のメルマガに書きました。
勝田
なぜ、自分たちの業務にこれが必要なのかを分かりやすく訴求したメルマガといえますね。
川口
メルマガには答えの解説や業務との関連付けだけでなく、他社の取り組みの紹介や日刊工業新聞、日本能率協会のホームページ、セミナーの内容も掲載しました。
自分たちだけでクローズしないよう外にも目を向けてきたつもりです。
良い話を広く紹介して、課題解決のきっかけになれば、という思いもありました。
ときどき反応も返ってきましたから、面白がっていたところもあったでしょう。
調達部門にいると、営業的な活動をあまりしないですし。
浜田
勉強会を午後6時以降に開いて、事務局で作った予想問題を勉強したりもしました。
メルマガの中身や、勉強会で配った資料は、一度きりにならないよう、全て社内掲示板に載せて、誰でも参照できるようにしています。
事務局として今後の展望とは?
勝田
事務局の取り組みもあり、現在B級が25人、そのうちA級が9人いるのですよね。
今後の事務局としての展望はどんなところでしょうか。
浜田
団体受験があるので、活動は続けていきます。
ただ、勉強するためのコンテンツは一通り整備したつもりなので、基本は自分で勉強してもらいます。
なので、事務局はだんだんフェードアウトして手間をかけないようにしていきます。
CPPホルダーが増えたらその人たちからも浸透していくはずで、継続していく土台作りはできたと考えています
勝田
もうインフラは整ったようですね。
川口
名刺に入れるなど持っている人と持っていない人の差別化を図ることや、部門としてある程度取得する人数が増えてくると、取得するのが当たり前という空気になっていくのではないでしょうか。そういう空気にしていければと思います。
勝田
最後の質問ですが、私どものFacebookのキャンペーンでグリーン大賞と喜び大賞の銀賞を受賞されました。
活動を振り返って喜びの言葉をいただきたいと思います。
浜田
安全第一で安定して電気をお送りすることと、効率的に調達することをいかに両立させるかが私たちの課題です。
今回、グリーンの安全旗と一緒の写真でそれを表現したことで、こういう賞をいただけたのは、CPP合格者だけでなく、当社にとっても名誉なことです。
川口
調達の付加価値をいかに上げていくか、どうやって会社の業績に貢献していくかが求められる中、第三者からこうして活動の評価していただけるのは非常に光栄です。
勝田
たくさんほめていただき、ありがとうございました。
浜田、川口
ありがとうございました。