カゴメ インタビュー
長年の経験、カンやコツに頼った購買調達機能では良くないのではないかという議論がありました。
CPPホルダーのカゴメ 片山喜晴さん(生産調達本部 調達部 購買グループ 主任)にお話を伺いました。(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)
工場での経験からみた調達・購買の課題とは?
カゴメ 片山喜晴さん
ーー
まず、現在の片山様のお仕事の内容とお役割をお聞かせいただけますか?
片山
調達部購買グループに、所属しています。
カゴメの調達部は大きく分けて2つありまして、1つは、海外のトマトペースト、人参など加工度の高い原料を調達する加工原料グループです。
もう1つは、我々が所属する主に国内の購買グループで、砂糖、酢、牛肉などから
段ボール、缶、ペットボトル、パウチ等の容器包装等を調達しています。
私はその中で容器包装を主に担当しています。
容器包装は段ボール、ペットボトルのキャップ、ペットボトルそのもの、ペットボトルのラベル、アルミパウチ等、基本的には国内の購買品になります。
ーー
片山さんは、そのお仕事を長くされているのですか?
片山
2年目になりますね。
弊社の総合職は、かなりジョブローテーションをしていまして、入社時に、営業系か研究開発、あるいは工場等の生産系での3つのいずれかからスタートします。
私は生産系でスタートし、工場で製造現場の経験をしました。
その後生産管理、品質管理の仕事を経て、昨年から調達部購買グループの仕事に就いています。
ーー
購買・調達業務での課題や、悩まれていることはありましたか?
片山
もちろん、利益そのものを担う原材料の購買という重要な役割を担っているのですが、とかく業務が属人化してしまう。
長年の経験、カンやコツに頼った購買調達機能では良くないのではないかという議論がありました。
また、調達業務には、契約や関係法令なども広く関わってきます。
まったく畑違いの人材が、異動してくることだってあります。
調達部門としては、直接部門(工場)で仕事の標準化に取組むように、本社の間接部門(調達部)もある程度基本業務を俯瞰して捉えることはできないかと考えていたそうです。
前任の部長で、私のCPP教育担当だった方が特にそういう思いがあったそうで、実際にご本人もCPPを取得してみて、「これは俯瞰していろいろ捉えられるぞ」という手応えを感じていたそうです。
それで、我々調達部の中で議論し、調達部員の必須スキルとすることを全体に宣言して制度化しました。
乾いた雑巾を絞ろうとするよりも、見方を変えてみたら他にも有効な方法がある、というところに、気づかされました。
用語の定義の大切さとは?
ーー
そうしますと、CPP導入の最初の目的は、業務の標準化ということになりますでしょうか?
片山
標準化だけなく、教育をある一定レベルにすることで、力量評価が、できるようになることがメリットだと思います。
例えば、原価低減活動の切り口として、CPPのテキストの中で買い方、作り方等の切り口が書かれていると思います。
そのような切り口を、課題ごとに分類して、あとで分析したり評価検証したりしますが、その際にCPPの用語とか考え方が、とても役に立ちます。
もともと原価低減活動はやっていましたけれど、CPP特有の捉え方があると思いますね。例えば、この場合は、攻めていく買い方がいいとか、作り方を工夫していくといいといったことですね。
担当によって得意なやり方、手法があると思いますが、CPPを通じて自分が不得意な手法や気づかなかった手法を少し俯瞰してみると、今までとは違った切り口でみられるようになると感じました。
CPPの切り口を原価低減課題一覧表の中で追加して、我々で管理をしています。
乾いた雑巾を絞ろうとするよりも、見方を変えてみたら他にも有効な方法がある、というところに、気づかされました。
これからも、なるべく視覚化していこうと考えています。
資格を持っているからできるということではなくて、CPPのスキルやCPPの考え方の活用というところを、マネージャーとともに作り上げているところです。
私自身、購買グループの標準化担当です。
調達部の標準化による原価低減の事務局をやっているのですが、個々にバラバラにやっていても効果的でないので、私が窓口、旗振りになって、とりまとめをしています。その中で、CPPを意識してやっています。
ーー
共通言語として活用されているのですね?
片山
そうです。標準化を進める時に、用語の定義は絶対必要だと思うのです。
例えばマニュアル、引継書、手順書、標準書など、本来は使う人によって言い方はバラバラです。
こうした状態を、工場で使っている標準作業書や標準業務フローなどのように、言葉を共通化していこうとすると、最初の用語の定義はとても重要だと思います。
期間もしっかり決めて、用語を定義していくことが、癖になりつつあります。
CPPではCR(コストリダクション)と表現されていますが、我々はコストダウンと言っていました。
CPPを勉強していた頃、「CPPにおいてはCRですよ」と言われて、最初は何をいっているのかわかりませんでした。笑
今は笑い話になっていますが、確かに、人によって言い方が違うのが通常だと思います。用語の定義ってとても大事なことなのだと思います。
例えば生産系だとロットといいますが、ロットっていろんな捉え方があるのです。
内容物のある1つのバッチで作ったバッチサイズをロットというのか、その製造日のものをロットというのか、どこで区切るのか定義付けを間違えるといろいろと勘違いされると思うのです。
例えば開発部署や調達部署から、ロット教えてくださいと連絡が来たときに、サプライチェーンを見ている人は箱数で考え、製造日をロットとして考えるかもしれません。
工場での調合を行いジュースを作る人は、1バッチで何リットル作っているかをロットとして考えるでしょう。
充填側の人は、1時間ごとに検査をするのであれば、その1時間をロットとみるかもしれないですよね。笑
お客様に我々の品質保証体制を説明するときに、我々は全ロット分析していますという言葉の定義付けをしていないと、もしかしたら誤った使い方をしてしまうかもしれません。
お客様に万が一にも不安を与えてしまわないように、言葉の定義は注意深く考えた方が良いと思っています。
そのシートには、過去の購買履歴や、過去の思案の経緯といった、いろいろなトピックスが書いてありました。
購買の戦略シートとは?
ーー
購買の戦略シートについてお聞かせください。
片山
私が調達に着任する以前から、前任者が標準化や原価低減活動をやりはじめていました。
彼はCPP資格取得者で、「スペンドアナリシスを使って購買の戦略シートを作ったらどうか」と提案をしたそうです。
それは、どこに問題や課題が載っているのかがわかりやすく、特にマネージャー層に好評だったようです。
その前任者から、ある業務領域の担当を引き引継ぎました。
その際、A3サイズの1枚のシートでまとめられた資料をみせられました。
そのシートには、過去の購買履歴や、過去の思案の経緯といった、いろいろなトピックスが書いてありました。
こういう会社とお付き合いしているなど、いろいろな流れがシートで一目でわかるのです。大変分かり易かった記憶があります。
私が赴任した後も、その流れを停滞させてはいけないと思いました。
そんな経緯もあって、CPP資格は、2013年度から全員必須のスキルとして取得するということになりました。
今、所属している調達メンバーは、これから受験する者以外は、全員CPP資格を持っています。
もちろん部長が旗を振って取りなさいといっているだけでなく、部長も持っています。
課長も全員持っています。今年赴任した人間ももうすでに、1人合格しました。他のメンバーは次回の受験を目指しているところです。
合格だけが目的だと、おそらくその後の活動につながらないし、個人プレイになってしまうでしょう。
合格することは目的でない?
ーー
CPPを取得するにあたって、会社からのバックアップ等はありますか?
片山
合格した1回分の受験料は会社負担になっています。
義務化ということで、「会社としてはテキスト等の必要な土壌は用意するけれど、逆に受験者は必須で取得する義務も同時にある」という扱いです。
ーー
テキストも会社側で用意されたのでしょうか?
片山
基本的に用意します。予算を取って全員に配布していますね。
ーー
社内で勉強会などはされていますか?
片山
はい。
各章で担当を分けて、予習した内容を簡単にテキストにして、自分達で模擬テストを作っています。
社内勉強会として任意でやっていますが、基本的にみんな参加していますよ。
過去の受験者からの助言もありますが、出来るだけこれから受ける人達でやるようにしています。
なるべく自分達で考えて、ポイントを整理してもらっています。
他人に教えることはとても勉強になると思いますから。
合格だけが目的だと、おそらくその後の活動につながらないし、個人プレイになってしまうでしょう。
組織としてCPPを駆使するという考え方をしていますので、月次の会議などで、原価低減の説明について、CPPの切り口が話題に挙がり、「あの原価低減の手法がこのアイテムにも使えるぞ!」とあらためて気づかされたりしています。
解決方法は、分担制をとることでした。
受験される方へのアドバイス
ーー
CPPに取り組むにあたって苦労された点はありましたか?
片山
テキストの範囲が広くて大変でした。
学習時間の創出と、ポイントをしぼること、また全体の理解に苦しみましたね。
解決方法は、先程お話した分担制をとることでした。
を担当した人は、1章のスペシャリストになっています。
2章には2章のスペシャリスト、3章には3章のスペシャリストがいる。
自分の担当パートは、教えられるようにまでなっていますので当然理解します。
他のパートも、ドリルを解いているので、強いところ、弱いところを、理解できます。
その強弱の結果は、CPP受験後にもレポートとしていただけますよね。あれは如実に結果が出ていると思いますよ。みんな自分が担当章の点数が良いですから。笑
ーー
これからCPPを受験される方へ対してアドバイスをお願いします。
片山
計画を立てることが大事だと思います。
バランス良く出題されるので、勘で受かるような試験ではありません。
各章バランス良くポイントをおさえていくのが、結果として近道だと思います。
ぜひ全体を俯瞰して計画的にやっていただければと思いますね。
CPPを取得しているがその人自身のスキルの保証として伝わるようになるといいなと感じています。
専門性とジョブローテーション
ーー
CPPを導入する決め手となったのは、前任の部長様が評価していただいたことが大きな要因でしょうか?
片山
はい、そうだと思います。
その方は、入社してから調達部門ひと筋でやってこられ、スペシャリストであるにも関わらず調達業務の標準化の重要性を盛んに言われる先見性のある方でした。
その方に、「片山君、標準化を頑張らないか」と言われ、調達業務の標準化活動に真剣に取組みはじめました。
ーー
取組んでみていかがでしたか?
片山
大変だったですが、CPPは有効だと思います。
バイヤーのみなさんが、サプライヤーに対して、CPPを取得しているがその人自身のスキルの保証として伝わるようになるといいなと感じています。
例えば今開発や企画部門にいる人が、実はCPP資格保持者だということが近い将来出てくると思います。
CPP資格は他部門でもメリットがある?
片山
我社では、例えば今開発や企画部門にいる人が、実はCPP資格保持者だということが近い将来出てくると思います。
その際、企画開発部門で新しい試みをするときに、調達部門やサプライヤーとうまく連携できるのではないかと思うのです。
そうなると、社内でも信頼感を得るひとつの物差しになり得ます。
興味深いのは、調達に所属している間に残念ながら合格できずに転勤した人が、先般無事に合格したということがありました。
CPPは社内でも調達部だけのものじゃなくなってきていて、CPP資格を持つことの意義が浸透してきたのかなと思っているところです。
ーー
本日は、本当にありがとうございました。