日本エアフィルター インタビュー
日本エアフィルターの土屋俊貴さん(資材購買部 資材購買課 課長)にお話を伺いました。(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)
CPP資格にチャレンジした理由とは?
森宮
本日は、日本エアフィルター株式会社資材購買部資材購買課課長、土屋俊貴さまにお話をうかがいます。
土屋さまはB級とA級ホルダーの両方の資格をお持ちですが、現在ご担当されている業務とお役割についてお聞かせください。
土屋
私は資材購買部に在籍していまして、基本的に日本エアフィルターが製作する部品などを調達しながら、教育や、調達などの管理、フォローをしています。
森宮
資材購買部は、何人くらい在籍しているのですか。
土屋
実際の購買部隊としては8名程度ですね。
そのほかにも、私たちは基本的に物を受け入れる部隊も兼ねていますので、物流などを担当する者が10名くらいおります。
森宮
部門の教育分野を担当していらっしゃるとのことですが、担当されてどのくらいになりますか?
土屋
ちょうど2年くらいになります。
森宮
CPP資格を取得されてから少し経っているということですので、教育などを担当される以前にCPP資格を取得されていたと思いますけれど、そもそもCPPを知ったきっかけは何だったのでしょうか。
土屋
当時の上長から、何か購買に関わる資格を取ってみてはどうかという話があり、いろいろと探していたときに、能率協会さんの資格制度を見かけました。
当時は、交渉は人によるという風潮があるように思っていまして、私は話したり人を説得したりするのが、あまり得意ではありませんでした。
この仕事に携わり何か身に残るようなものがないかという思いもあり、そこがたまたま合致したもので、CPP資格にチャレンジしてみようと思い、テキストの購入に至ったということなのですね。
テキストを初めて読んだときの衝撃とは?
森宮
CPPのテキストはかなり分厚い教材で、かつ問題集にもなりますが、内容についてはどう思われましたか。
土屋
当時の当社はISOを取得していた企業だったので、かなり仕事がルーティン化されていた部分がありました。
CPPガイドを初めて見たたときに、このままではまずいと思いました。
自分が経験していなかった部分がかなりありまして、「買う」という行為に対して知らない部分がたくさんありました。
ガイドの想定読者は、購買部門の経験年数3、4年を想定していると思うのですけど、内容を見たときに、現時点の自分の知識が全く足りていないという衝撃を受けたのです。
そのほかにも、主婦の買い物から始まり、比較的間口が広くて入りやすく、これは奥が深いとも感じました。
その当時は。会社から補助が出ていたので、これはまずいと思って、ひたすらテキストの読み込みでしたね。
仕事を終えてから会社に残って読み込み、結局1年弱くらいかかって読んだのではないでしょうか。
森宮
日常の業務の延長では追いつかない内容というか、日常の業務とガイドの中にある項目とでは隔たりがありましたか。
土屋
隔たりというか、その当時、私が担当していた部分では、要求されない内容がたくさんありまして、これはもう全く一から積み重ねていかなければなりませんでした。
それは私が担当していた分野が比較的狭かったのでしょう。
突き詰めようと思ったら、やはり範囲がかなり多岐にわたるのだということを非常に強く感じましたね。
森宮
みなさん、学習方法は非常に苦慮されている方が多いようです。
若い方の場合は、対策セミナーを受けて、あとは直前に短期集中で読み込むというケースもあるのですけど、ただ、一方で、本当に業務に役立ててほしいという上司の方の思いがあったりして、そのあたりは、結構、会社や個人によって違います。
土屋さまのお話うかがっていますと、時間をかけて非常にじっくりと取り組まれたのかなという感じがします。
土屋
当時は誰も受けていなくて、会社から援助してもらえるので、失敗できないなと思い、対策セミナーも参加し、1回の受験で結果を出すように努力しました。
森宮
B級を一発合格されて、その後、A級も取得されていますよね。
最初からA級を取得しようと考えていたのですか。
土屋
正直に申しますと、B級止まりだろうと思っていたのです。
最初に自分がやっている分野の範囲の広さに衝撃を受けまして、これは多分、あと何年も経ったら忘れてしまうだろうという正直なところもありました。
しかし、いざB級に合格してみると、どうせやるなら極めたいという気持ちが芽生えまして、A級も取らせてくださいと上長に相談すると理解してもらえたので、そのまま一気にA級までチャレンジしました。
CPPのA級の試験対策とは?
森宮
なるほど、「鉄は熱いうちに打て」で、A級を受験されたわけですね。
B級合格の直後にA級を受験ということですけれど、A級受験に際して、学習方法とか準備には、どのように取り組まれたのか。
ご苦労されていた点を、思い出せる範囲で結構ですのでお教えください。
土屋
A級の直前の試験対策セミナーも参加したのですが、それまでは基本的にB級と同じアプローチの仕方で、テキストに出ているのが今の世間の一般的な購買の考え方だということを信じて、テキストの読み込みを基本的にやっていました。
B級のスコアレポートがあったので、少し弱い部分とか、自分が携わっていない分野があるところは、基本的には優先的に追いかけるようにして、頭の中に残す工夫というか、忘れないようにということだけを心に止めて読んでいましたね。
A級の対策セミナー出たときに、基本的にはマネジメントがかなり要求されているなというのを感じましたので、対策セミナーのテキストのこういうケースの場合はこういったかたちを考えるという部分を重点的に読みました。
個人だけではなく、組織としてどう取り組むかというところが、ケース・バイ・ケースで求められてくるというのを何となく感じたので、そこを基本的に意識しながら、そこからの展開の仕方を考えるようにして試験に臨みました。
森宮
A級というのは、管理者としての判断力が問われるという前提で、出題形式も1問1答ではなく、様々なシチュエーションで、あなたならどうするか、を問われますが、受験当時の実際の業務よりもA級の内容ほうがレベルが高めという状況で受験されたという感じでしたか。
土屋
当時の立場は、まだ一担当だったので、管理者になったと仮定したならば、やはりB級で学んだ知識を展開しなければならないだろうという気持ちで試験に臨みましたね。
部門統合と改革の道程とは?
森宮
B級というのは主に個人の知識を問うものであり、A級というのはそれを組織にどう生かせるかという違いがあると思います。
A級に合格されて、職場を改めて見たときに、何か気づいた点とか、今までは思いもしなかった点などはありましたか。
土屋
私がA級を受けたのは2010年ですが、当時わが社では購買と調達という部門が一緒だったのです。
ところが、購買部隊が分離して、私は分離したほうに配属となりました。
それと時期を同じくして、現在の社長が就任して、われわれの業界も再編などが厳しい状況に至っているのですけれど、このままでは何も変わらず衰退する一方だから、変化して世の中に追従しなければならないだろうというとことで、当社の改革プロジェクトが立ち上がっていたのですね。
本当にタイミングというのはこういうことなのかなと思いましたけれど、そのときに部門として購買と調達が分かれているので、会社全体として見たときにどうなのだという話が出たのです。
調達という部分は、物によって当社の原価の8割方占めているところがありました。
今の仕事を回して、短期で業績を上げるという意味では、非常に有効な手段かもしれないですが、長期的にはまだ弱いところも当然あるだろうということで、部門を1つにという提案をして、今は統合した部門としてかたちになり始めたというところでしょうか。
森宮
その改革の起点となった年というのは何年ですか。
土屋
2011年か2012年の話だったと思います。
森宮
A級に合格されて、それほど間がないころですね。
今まで別々だったものが一緒になるこということは、大変な力技も必要だったのではありませんか。
土屋
われわれはISOを保有している企業なので、業務統合の型のようなものは、システムとしてきちんと持っていました。
しかし、一度分かれてしまった組織には、時間がたって、それぞれの特性が出てしまっていまして、それをまた1つにするのは大変でした。
それこそ調達の履歴がデータ化されていないとか、似たようなものは買っているのですが、別々に交渉していたとかがあったので、データを1つにして、どちらのやり方にするのかなど、障害はたくさんあったのです。
たまたま私は日本能率協会さんのCPP資格を学んでいたので、そのときにこういったやり方があるという展開をすることができました。
それも実は、改革するプロジェクトのサブプロジェクトで、調達価格削減プロジェクトが立ち上がっていて、私はそのときのサブリーダーとして参加して、そのプロジェクトがそのまま1つの組織に変わっていったのです。
CPP資格が社内に広がった理由とは?
森宮
いろいろな要素があったかと思いますが、難しい改革のプロセスの一翼を担われたのですね。
そのときにCPPのホルダーは土屋さんだけでしたか。
土屋
はい、私だけでした。
ちょうどそのときに、日本能率協会さんのCPPというものがあるということで、機運が高まっていたのだと思います。
これは私が何かアピールしたのではなく、会社としてそういったところを目指していこうという方向に向いていました。
その要因は、確実にトップマネジメントからの影響だったと思います。
当時のプロジェクトの大元のリーダーだった今の社長が、直に声かけをしながら、そのサブプロジェクトに声をかけてやっていこうという話があったのです。
そこから一気にホルダーが増えたので、いかにトップがそういった目をかけてくれたかというところと、やはり1人だけでは、よほど追い込まれている人でない限り、取り組み続けることは難しく、そこに何人も受けるという競争的な要素が働いて、一気に目指そうという風潮になったのだと感じています。
森宮
お話をうかがっていますと、土屋さまご自身が意図されたわけではありませんが、CPPに関しては第一人者のようになって、その流れの中で、中心的な役割を恐らく果たされたのだと思います。
もちろんそのトップマネジメントの大きな後押しがあったと思うのですけれど、会社での初めてのホルダーとして、土屋さまが何か具体的に働きかけられたことなどがありましたか。
土屋
はっきり申しまして、私は持っているから、どうこうということはあまりやれていないのです。
ただ、調達価格削減プロジェクトで、プロジェクトとして成果を出すといったときに、CPPのテキストにあったコストダウンの考え方などは、こういったかたちがあることを展開する役割ができたのではないかなと思っています。
それは、私がどうこうじゃなかったと思います。
確かに何かに取り組むときに、何も準備がなかったなら、私はすぐどうこうできるというタイプの人間ではないので、本当にすべての偶然が、重なっていたと思います。
違う部門の先輩ですが、とてもいい影響を与えてくれた方がいて今に至るのだろうというのは本当に感じます。
CPPの知識と実践の違いとは?
森宮
おそらくまだその改革は、今も進んでいるのだろうと思うのですけれど、CPPというのは知識による資格であって、実践とはかなり違うものですか。
土屋
全く別ですね。
CPPはあくまで必要条件であって、十分条件ではないですよ。
実際にやろうと思ったら、そこには人という存在があるので、理屈がわかったとしても、それを実践するというのは全く別の次元だと感じます。
そこはみんなで共有しながら地道に続けていくしかない部分で、全く別の話だと思います。
実践できるレベルと、単に理解しているレベルでは、本当に全く別の次元であって、ただたまたまプロジェクトの一端を担ったのであり、結果を出すためには、まず理解した上で取り込まないといけません。
森宮
最初の時点で理解していないといけないということですか。
土屋
そうですよ。
何も知らなかったなら、言われたことだけをするというのが現実だと思いますから。
あの当時のプロジェクトの中では、その中でもこうしていかなければならないと感じる人間は何人かいて、そういった人間は資格を取り始めました。
その彼らはもう今ではうちの部門には誰もいないですけどね。
巣立っていっちゃったと言えばいいのでしょうか、今は違う分野でさらに活躍しています。
彼らはあのプロジェクトで、頑張れるのだと認めてもらえたのだと思うのですね。
全く違う分野になったとしても、この経験は非常に有効なのではないかなと思います。
違う部門の課長になった者もいますし、親会社の部門に行っているという者もいて、非常にいい結果になっていると思っています。
でも、やはり資格を持つことと実践することは、完全に別の次元ですね。
目指していく指標とは?
森宮
どうしてもテキストは、普遍性と原理原則を外すわけにはいかないので、実際とは違う部分も多く出てきます。
とても実感を伴うお話を聞かせていただきました。
ありがとうございます。
原理原則と普遍性は、あくまで教材の1つですね。
では、ご要望や改善点、今ひとつ納得できない点などがあればお願いします。
土屋
誤解を恐れずに言うと、違和感を覚えるということはないというのが結論ですね。
それは、CPPのテキストが基本的に世の中に起きていることを集約しているのだろうと認識しているのが1つと、世間一般の事例をテキストにしたときと、自社での実際に起きたことをテキストにしたときというのは、やはりどうしてもそこで乖離してしまう部門があります。
その差が生じる部分を私は感じているだけであって、違和感は特に持ってはいません。
むしろ、そこを目指していくという指標にしたいと、われわれ、特に私自身はそう感じています。
森宮
A級ホルダーとして実績を積まれていますが、何かこういった場、こういった教材、こういったケーススタディがあったらいいなど、実践の中で必要とされるものはありますか。
土屋
やはり各会社によって、世間一般的に考えられていることと、実際に自分たちの上に起きていることは違いがあるとは思うのですよ。
ですから、事例集のようなものがあるといいと思います。
欲を言うと、そこを理解している人だけでも管理できるようなものがあると、非常に助かるなあというのは感じますね。
やはりどうしても、世間一般的なものと、実際に自社で起きていることはレベルが違うので、自分たちの環境と似た環境の人たちに起きていることがわかると、非常に参考になるかと感じています。
CPPを学ぶことで得られる自信とは?
森宮
CPPという資格自体が媒介するものとして、先ほどおっしゃっていた別の部署に行っても共通した信頼や理解というものが持てる気がしますというお話をうかがいました。
今後、御社の中でCPPをどのように据えていきたいか、また資格そのもの自体に期待されるものなどをお聞かせいただければと思います。
土屋
これからのわれわれの部門としては、CPP資格というのは、一つの評価基準ではありませんが、せっかく資材購買部に所属し、購買調達にかかわるところにいますので、CPP資格を最終的に目指してもらいたいと考えています。
日本能率協会さんの資格制度は、最終的に各担当には目指してもらい、それを有効に活用してもらいたいと考えていますので、今年も何人か4月に受験する人材がいるので、ぜひ取得してもらいたいと思っています。
一番最初にお話ししましたけど、購買というのは人による交渉ですので、交渉力がある人が強いという認識がどうしても拭い去れないところがありますが、今後の期待として、この資格制度を全国的に広げて、第三者的にも理解でするようなかたちに発展されることを非常に期待しています。
なってもらいたいと思っています。
私は自身の考えをうまくアピールができる人間ではありませんが、例え結果が出なかったとしても、本当に真摯に取り組んだ人であれば、自信につながるはずです。
その点は私がB級受けたときも、理解できるということを感じた点ですので、ほかの人にもそう感じてもらいたいのです。
そして、そういうかたちで目指してもらい、成果を出してもらい、私よりどんどん上に行ってくれる人が出ればありがたいと本当に思っています。
森宮
ありがとうございました。
これでインタビューを終了します。
土屋
ありがとうございます。