日立ビルシステム インタビュー
株式会社日立ビルシステム様に、「CPP資格取得」の背景やご活用についてお伺いしました。
調達本部 調達企画部 調達企画グループ
部長代理 飯森 直洋 様
主任 丸川 貴志 様
主任 成田 拓 様
調達本部 調達二部 購買グループ
主任 熊谷 紗也子 様
(※以降敬称略、所属・役職は2023年11月16日時点)
写真左から、成田様、飯森様、熊谷様、丸川様
吉田
はじめに御社の概要から教えてください。
成田
弊社はメインの昇降機、エレベーター/エスカレーター事業に加え、ソリューション事業として冷熱機器の販売・保全やビルのエネルギーマネジメントを含むビルのトータルソリューションを提供しています。日立グループのコネクティブインダストリーズというセクターに所属し、ITやOTを活用したお客さまの社会課題解決に努めています。セクターの中にビルシステムビジネスユニットがあり、そのユニット内に弊社があるという組織構成です。
吉田
現在の業務内容やお立場、役割についても教えていただけますでしょうか。
飯森
調達本部 調達企画部は、ビルシステムビジネスユニットの調達関係の企画立案を担い、予実算管理や調達戦略・戦術を企画し実行フェイズに移していく仕事を主としています。実行にはタレントマネジメントが非常に重要であり、その一環として人財教育にも力を入れています。ここ数年、調達人財教育のツールとしてCPPを活用しています。
成田
私は主にタレントマネジメント、人財教育に従事しています。
吉田
タレントマネジメントについて是非詳しく教えてください。
飯森
まず大きくは、日立全体の調達人財の育成スキームがあります。その中に、日立標準の調達人財として身につけるべき能力の教育プログラムや体系は整備されていますが、それにとどまらず、我々昇降機に関わる調達人財の教育カリキュラムを独自に作り込んでいます。
その中でCPPは調達のテクニカルスキルを学ぶ位置づけにあります。さらにロジカルシンキングやコミュニケーション力といったポータブルスキルは、OJTやプロジェクトへのアサインを通じて実践しながら身につけてもらう体系となっています。
成田
親会社である日立製作所が調達人財のために企画する教育も多くありますが、それに加えて弊社の事業や調達の形態によって強化すべきスキルを磨く弊社独自の教育体系もあります。この体系を中心にさまざまな教育を企画したり、CPPなどの必要な資格を取得しやすいよう勉強を支援するのが私の仕事です。
吉田
教育対象者は何人ほどおられるのですか?全体の規模感も含めて教えてください。
成田
日立グループのビルシステム事業は中国やアジアなどグローバルで展開していますが、弊社はその中で国内をメインに担当しています。その調達人財、約130~150名が対象です。
吉田
グローバルの教育は海外の拠点ごとに行われているのですか?
成田
そうですね。ビルシステムビジネスユニットとしても調達を横串でみる組織があります。当該組織がユニット全体の教育を担っています。
吉田
丸川さんも現在の業務内容やお立場、役割を教えていただけますか。
丸川
私はサステナビリティ調達を担当しています。日立製作所本社や弊社の環境部門、設計開発部門と連携を取りながら進めています。
弊社が定める環境方針に沿って、サプライヤーとの接点の部分を調達が担う建て付けです。
吉田
重要なポジションですね。
丸川
バリューチェーン全体を通じて2030年度までにCO2排出量を50%削減(2010年度比)、2050年度にはカーボンニュートラルを達成するという日立グループが掲げる大きな目標に対し、そのゴールに向けてどのように進んでいくべきか。そこに当該課題の難しさを感じています。
吉田
そのとおりですね。
丸川
鋼材の使用量を見直すといった取り組みも各社で行っていますが、長期目標と足元の状況を踏まえた取り組みとを結び付けていく難しさを痛感すると同時に未来に向けた活動だと感じています。調達だけではなく会社全体として捉え、考えていく必要があると思っています。
吉田
サステナビリティには人権も含まれるのでさらに大変ですよね。
丸川
そうですね。人権にも配慮しながら進めています。
吉田
熊谷さんも現在の業務内容やお立場、役割を教えてください。
熊谷
私は、昇降機を施工した後の保全部品や間接材関係の国内発注業務を担当しています。
吉田
間接材には文房具や出張手配まで含む会社もありますが、御社ではどのような範囲を間接材としていますか?
熊谷
直接材以外すべてが間接材に含まれています。総合的に調達がみていくためには他部門との連携も必要な要素になりますね。
吉田
御社の間接材は集中発注型ですか?分散発注型ですか?
熊谷
集中型ですね。日立グループ全体の調達を統括する部門があり、集約・ボリュームメリットを活かした施策が展開されています。当該部門と連携しながら進めています。従来は原価低減がメインでした。しかし施策を広げるためには社内のユーザーマネジメントも重要です。外部との交渉よりも社内の調整のほうが難しいとも感じています。
吉田
日立グループにおいて、どのような役割や機能が御社の調達に期待されているとお考えですか?
成田
昇降機は中国がかなり大きな市場を持っており、今後はASEAN地域も市場の拡大が見込まれます。これらグローバルでの事業環境に対応できる調達人財の育成がさらに求められていると思います。
吉田
昨今の調達に求められる役割は変化していると感じますか?
丸川
従来は主にコスト低減が求められていました。しかし今はコスト低減のみならず、レジリエンスやサステナビリティ、デジタルの領域にも調達としてさらに貢献しようといった動きがあります。極めて大きな変化を感じています。
飯森
コストを下げるだけではなく、事業リスク全体の低減機能が求められていますね。
丸川
事業との関りが深くなればなるほど、その解決は調達だけでは図れない、他部署との連携が大切になってくると感じています。
吉田
御社のめざす調達人財の姿とはどのようなものであるとお考えですか?
飯森
我々調達はSLQDCの主にQDC(品質、納期、コスト)を担っています。調達はここを最重要テーマとしつつ、社外との接点でもあるため、幅広い能力が必要になると常々感じています。
吉田
そのとおりですね。
飯森
調達部門へのニーズはQDCへの対応が一つのトレンドでした。しかし現在は、昨今のサステナビリティへの取り組みや、コロナや紛争など予測できない環境変化、高まる不確実性へのレジリエンス向上が求められています。また、生産性を上げ価値を生み出すためにはデジタルの知識も必要不可欠です。多岐にわたる知見が必要となる調達業務において、CPPで得た知識を活用し、インプットからアウトプットをいかにして生み出すかを重視しています。
吉田
CPPを知ったきっかけや背景を教えてください。
飯森
私の部署では人財教育を担当していますが、調達の力量を定量的に示す難しさを常々感じていました。何か調達の資格がないかと探していたところCPPの存在を知りました。また日立グループの中でもCPPの取得を推奨する会社があると知り、弊社も取り組んでみようとテキストを購入しました。
テキストを拝見したところ、調達の幅広い知識を吸収できる今までにはなかった良い教材だと感じ、これは普及推進すべきだと思いました。まず我々調達企画部員を中心にチャレンジし、難易度や学習時間を測ることにしたのです。
吉田
学習を通じて感じたCPPの印象をざっくばらんに伺ってもよろしいでしょうか。
丸川
私は10数年調達に従事していますが、CPPの勉強を進める中で、日立の調達で教えてもらったことは間違いなかったと改めて感じました。
CPPは調達業務について本当に幅広く学べます。調達全体が網羅されているため、自分の得意・不得意な点が明らかになりました。自分の弱い分野はまだまだ勉強しなくてはいけないと自覚できました。
熊谷
CPPの学習を通じて調達戦略の要素を整理できた点は有意義でしたね。調達スキルはもとより、その基本となる概念を体系的に学べた側面は役立ちました。改めて復習する良い機会となりました。
吉田
実務で生かせている部分もありますか?
丸川
弊社には物流改革に特化した部署があります。3PLといった物流に関するワードが出てきた際「あ、これは学んだ知識だ」とすぐに理解できました。
吉田
他部署との共通言語を得て、円滑な情報共有が図れたのですね。
丸川
生産領域の在庫管理や品質管理、不良率に関するセクションは現場でも役立つと思います。弊社にも茨城県に工場があります。工場の調達担当者はCPPを学ぶことでより製造部や生産統括部など他部門の担当者話がしやすくなるのではないかと感じました。
吉田
日立グループには横断的な調達連携もあると伺いました。その点にも生かされているのではないですか?
丸川
そうですね、同じセクターの中でシナジー効果を出すために調達部門同士でもサステナビリティやコスト低減に取り組んでいます。今後さらなる推進が求められる中、必要となる用語の統一にもCPPは役立つと思います。
吉田
マネジメントのお立場からもCPP学習の効果は感じられますか?
飯森
調達全体を体系的に網羅し学べる教材は他になかなかありません。たとえ直接関与したことのない業務領域においても、CPP学習を通じて得た知識や共通言語によりステークホルダーとの話しもしやすくなります。
CPPの教材は調達に関わるさまざまな情報のタンス、キャビネットのようなものだと思います。日々断片的に起こる事象を自分の頭の中のどこに納め整理すべきか。バラバラの情報をつなぎ合わせたり、正しい位置に格納し頭の中のデータベースに納めたりする上で非常に役立っていると感じています。
吉田
御社ではどのような流れでCPP資格取得を後押しされているのでしょうか。
成田
まず調達部門全体からCPP資格の受験希望者を募ります。希望者にはテキストを配布し、もちろん個人でも学習してもらいますが、加えて昨年度は勉強会も開催しました。勉強会は受験経験者にヒアリングした上で練習問題・過去問題集を作り受験者同士が解き合う場です。
吉田
素晴らしいですね。
成田
勉強会で互いに問題を解き合い知識が増えるメリットはもちろんあります。加えて、他者との知識の差、他の人は解けているのに自分は解けていない現実を目の当たりにすることで、良い意味での焦りが生まれたり、自己啓発への動機付けにつながった点が有意義だったと思います。教育施策を考えるうえで、いかに個人の勉強に対するやる気を掻き立てるか、自発的な学習を促すかが重要だと考えています。
吉田
勉強会には講師的な立場の方もおられたのですか?
成田
講師というよりファシリテーターという形で、問題を作り、参加者を指名し、問題についての意見交換を促すなど全体の調整役を置きました。
吉田
CPPはどのような方に学んでほしいとお考えでしょうか。今後のCPPへの期待も含めて是非お聞かせください。
飯森
極論を言えば、調達に関わる人すべてですね。ただ、内容が広く深いため、躊躇する人もいるでしょう。もう少しライトなCPPのC級やD級など入門編があると契機として良いのではないでしょうか。そこで興味を持ってもらい、さらにB級、A級へ進む形です。
吉田
貴重なご意見をありがとうございます。
飯森
B級も勉強にかなり時間を要するという点では難易度が少し高いのではないかと自身の学習経験から感じました。すべての調達人財に受験してほしいとは思いますが、きっかけとして活用するにはB級のハードルも高めなので、それをいかに下げるかが我々企画部門の仕事だと考えています。
丸川
若手であれば調達業務の全体像を見て知識を深められます。中堅であれば業務の復習、足りない部分の補完に役立つでしょう。ベテランは、サステナビリティへの対応など変化する調達環境も含め、調達全体の知見を得られると思います。
熊谷
CPPのテキストは調達全体を網羅しているので、まずは調達の教科書として若手に活用してほしいと思っています。年数が経つと、自分の担当領域の知識は深まりますが、他の部分は意外と知る機会が少ないものです。最初に全体を体系立てて知る意味でCPPは有意義だと思います。
ただ、専門用語を理解するだけでも難しいため、C級のような入門編や問題集があると良いと感じますね。わからない中でも問題を解いていくことで理解は深まるので、若手の学習にも役立つのではないでしょうか。
吉田
丸川さんはA級も取得されています。A級はどのような方がチャレンジするとよいと思いますか?
丸川
ホームページにも「実践編」と謳っているとおり、A級はある程度調達の実務経験がある中堅、ベテランにお勧めしたいですね。キャリアが浅い方だと出題の内容がまだまだ体験できていない場合が多いためです。マネージャークラスが適当ではないかと考えています。
~インタビュー実施後:追加記事~
国部
インタビューにご協力いただいた後に、成田さんは「CPP-B級」、さらに「CPP-A級」の試験を受験され、見事両方とも合格されたとお伺いしました。
あらためて、ご自身でもチャレンジされた背景や動機、B級・A級それぞれで苦労された点や工夫された点、また今後の抱負や取り組みについてお伺いできれば幸いです。
成田
今年度から部内の教育を取りまとめる立場に異動になったというのが元々B級をチャレンジするきっかけではあったのですが、他社様もCPPを活用しているというインタビューを拝見し、自身が培ってきた知識やスキルが一般的に通用するか力試しをする良い機会になると思っていました。
勉強を進める中では、これまで実務で携わってこなかった部分についてはテキストを読み進めたり用語を暗記するにあたり苦労しました。ですのでそういった部分については「自社の調達業務に落とし込むとどうか」という観点で勉強するなど工夫をしました。このような「自分だったらどうするか」という視点で勉強したことはA級の対策にも生かされていると感じました。
今後はこの経験を生かし、部内のメンバーのCPP取得を促進、勉強のサポートするということはもちろんですが、特にA級の取得を通じて視座が一つ上がったと感じましたので、学習したことを実践に落とし込むということを意識し、引き続き業務に邁進したいです。
(2024年3月5日現在)