古河電気工業 インタビュー

CPPホルダーの古河電気工業 近藤喬洋さん(財務・調達本部 資材部 調達戦略グループ 主任)を訪問しました。
日本能率協会の安部武一郎がインタビューします。(以下敬称略)

調達戦略グループの役割と特徴とは?

古河電気工業 近藤喬洋さん(財務・調達本部 資材部 調達戦略グループ 主任)

近藤喬洋さん(財務・調達本部 資材部 調達戦略グループ 主任)

(安部)
はじめに、近藤さんが所属されている調達戦略グループについてご紹介いただけますでしょうか。

(近藤)
財務・調達本部の中に、資材部という調達機能があります。
私の所属する調達戦略グループは、企画部門、戦略立案部門です。

当社の調達力をどうあげるか、そのために必要な政策を立て、現状の課題を整理、立案する機能です。

具体的には、サプライヤー評価、開発購買、そして、CPPに関係して、教育・研修の企画、体系化、実行という機能です。

また、購買システムの運用、保守、管理も我々の役割です。

(安部)
調達品としては、原材料が多いのでしょうか?

(近藤)
そうです。銅の地金などの購入、電線・光ファイバー製造のための化学材料系の購入、その他組立・アセンブリ系の事業もあります。

加えて、間接材や設備、事務用品などの購入も資材部がやっています。
最近は、間接材の購入範囲を拡大する動きがありますね。

例えば携帯電話費や旅費など従来総務部門の管轄だったことも、戦略的に取り組もうというプロジェクトをやっています。

(安部)
調達をかなり広くみてきているということでしょうか。

(近藤)
そうなんです。当社は所帯のわりに事業領域が広く、買う物の種類が多いのです。
一方で、ボリュームはさほど大きくないということが特徴だと認識しています。

CPPを知るきっかけとは? ~導入の経緯~

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(安部)
CPPを知ったきっかけは何だったのでしょう?

(近藤)
ちょうど、自社だけでこの領域を学習していくのには、限界があると感じていた時に、他社さんから「CPPという資格制度があるよ」と教えていただきました。

また、当時からセミナーを受講するなら日本能率協会さんのセミナーを第一時候補に受講していましたから安心感がありました。そんなきっかけだったと思います。

(安部)
近藤さんは、2010年にCPPを受けていただきましたが、そちらの経緯はどうだったのでしょう?

(近藤)
先輩が受験していましたし、自分の力試しをしたいという理由もありました。当時色々な仕事をこなしてはいましたが、我流だったため一般的な体系を知りたいとも思いました。

先輩からは、難易度が高いからちゃんと勉強しないといけないよとアドバイスいただいていましたし、事前の対策セミナーにもでて、かなり緊張感を持って受験しましたよ (笑)

(安部)
CPPのご受験は、その後お役に立っていますか?

(近藤)
即効性もありますが、もちろん全部が実務に役立つわけではないですよね。
でも、自分達の業務にない部分を学ぶこと自体に意味があるのだと思います。

「自分達は、資材の仕事は、ここまでだと思うのだけど、実はもっと深かった。」

「物流まで関わってやられている。」

「開発購買は、私たちはこのレベルまでしかやってない。」

といったことを知ることが、意味があるのだと思います。

これらは「先々部門としてどうしていくか」を考えるとき、とても参考になります。

(安部)
それまで、調達に関する学習や情報の取得手段は、他にもお持ちでしたか?

(近藤)
情報は限られていたと思いますね。

書店にも、例えば生産管理の書籍はたくさんあるのに、調達は少なくて・・・意識的に勉強しようと思っても限界がありました。

(安部)
会社の教育制度として認めていただくまでには、どのような経緯があったのでしょうか?

(近藤)
最初は、2人程セミナーを受けてから受験をしました。

その受験者の評価が高く、正式に導入してみましょうということになりました。

(安部)
制度化していただくにあたって、社内での反応はいかがでしたか?

(近藤)
当時の調達責任者が人事系出身の方で、教育の重要性を深く理解されていました。「業務は我流でやるものではない」という考え方でしたので、比較的スムーズだったと思います。

我々がCPPを知ったタイミングもよかったと思いますね。上司にも理解いただけたし、マネージャーもCPPに合格していたので、説得力があったんだと思います。

組織としての調達力を発揮するためには?

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(安部)
はじめに受験いただいた方の、当時の課題感はどのようなものだったのでしょうか。

(近藤)
実は、当時、特に課題とされていたのは、市況が上がっていたことなんです。

原油が、毎月のように上がっていく。サプライヤーは合従連衡やM&Aで少なくなる。調達への逆風は強まる一方でした。

そのような環境のなかで、当社は何年、あるいは何十年も、ずっと同じようなものを作り、同じようなものを買っていました。

個々のバイヤーの能力、目的意識は高いと思うのですが、一方で属人的であったと思います。
組織的、体系的、戦略的な調達に組織を変えていかないと、調達環境が悪くなる一方だという課題意識がありました。

自分達の立場、調達力が相対的に落ちていくという問題意識がありました。
だからサプライヤー評価もはじめましたし、開発購買にも力をいれました。

教育においては、体系的な一般知識を身につけて、組織の横のつながりも強化しようという発想になっていきました。

(安部)
CPPを活用いただいて、調達部門の外部からの見られ方に変化はありましたか?

(近藤)
社外へのアピールはだいたいできてきていると思うのですが、いまの課題は対社内だと感じています。

社内のコミュニケーションは、普段からとっていますし、調達は頼られる存在だと思っています。
ただ、例えば、取引先評価を例にとっていいますと、「調達はこの取引先にこう評価している」が、一方で「現場は異なる考えをもっている」という場合もあります。

そのようなコミュニケーションのギャップをうめるために、全社一体となる必要があると思います。
一枚岩で望まないといけないと考えるのですが、まだ一定のレベルに至ってないというのが現状認識です。これが我々の課題ですね。

「昔はこうだったけど、今はこうなのだ」という組織的な面での調達機能の説明が不十分だと感じています。
CPP資格をとった理由のひとつが、説明や説得力のアピールの看板として活かしたいという思いでした。

調達部門が担う役割の拡大と課題

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(安部)
最近のバイヤーの役割について、グローバル化も含めて社内外ともにどんどん広がってきていると思います。それにともなって調達部門の重要性も上がってきているのではないでしょうか?

(近藤)
確かに増していると思います。重要度や困難さが増しているとしても、その要素分解が、具体的にできていない状況だと思います。

例えば「調達=コスト・納期」になっていることが多いと思います。
コスト面や納期面で厳しい環境に直面して、考えるのをやめてしまうと、それは、例えば供給リスクを放置することになる場合もあります。そういった要素にまだ落とせていない。

あるいは、担当者によってばらつきがあることも挙げられます。

もちろん、体験があれば問題をばらせると思うのです。「考えるべきポイントはQ、C、Dなのか?それ以外なのか?」とか、「Dの中でもなんなのか?」「Cの中でもなんなのか?」とか。

調達機能の重要度は上がっていて、困難さは高まっているのだけれども、組織として共有や可視化は、理想のレベルにはいっていません。

CPPが役にたつ」と、殊更に言うわけではありませんが(笑)、体験の有無にかかわらず、個人差をならし、全体の底上げをはかるためには、知識や共通言語は必要だと思います。

組織的な調達力を発揮するために ~カテゴリー戦略~

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(安部)
どんな風に組織のつながりを強化されようとしているのでしょうか?

(近藤)
海外、国内のグループ会社においても、どう連携をとるかが重要だと考えていますが、
今は、切り口をカテゴリーに設定し、カテゴリー戦略をやろうと思っています。

そしてカテゴリー戦略の中に必要なのは、支出分析で、サプライヤーさんの能力評価をしないといけない。打ち手がちゃんと整理できるかどうかが重要だと思っています。

実は、そこが企画部門で一番のテーマになっているところです。

CPPの学習を通じて

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(安部)
CPPを受験されてのご感想をお願いします。

(近藤)
きわめてオーソドックスな言い方ですが、目線があがりました。
視野が広がり、その意味を考えるようになりました。

CPPのテキストは、各事務所においてありますから、共通言語になりやすいですよね。

持っている人間はみるし、持っていなくても、たまに読んだりする。
例えばサプライヤ評価をやっている人は、その項をよく読んだりしています。

ただ、社内でCPPが大きく普及して、認知され、本当の共通言語となるには、まだ資格保有者数が足りないと思いますね。

あと5人なのか、10人なのか、20人なのかは、わからないのですけれど、そこを、もう少しやってみたいなという思いはあります。

(安部)
グループ間の調達戦略も、5年・10年先に向けて共有しようとされはじめているということでしたね。

(近藤)
「今、一生懸命、絵を描いている」というところです。

当社の調達全体を見たときに、自分達の製造部門・需要部門が引き続き国内にあるのか、外にでていくのか、まだまだ見えていない部分もあります。

まだ社内のイメージが固まっていない部分もありますし、もう少し時間をかけて組織立ててやりたいテーマですね。

経営方針の中で調達のグループ化、グローバル化をどう達成・育成していくか。カテゴリー戦略と絡めながら推進する発想でやっています。

CPPを受けて役にたったことは?

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(安部)
それらの近藤さんの思考や考え方に、CPPの考え方は役立っていますでしょうか?

(近藤)
役にたっていると思います。

知識って、2種類あると思うのです。即効性のある知識と、いつ使うかわからないけれど身につけておかなければならない知識ですね。

CPPを通じて一生懸命習得し、いまになっても役にたっているのは、後者の知識だと思います。
引き出しが増えるのですね。

企画部門にいると咄嗟に、知っていなくてはいけないことがでてきたりします。
例えば、新聞に「○○会社が、調達先を5000社から2000社にした」という記事がでて、上層部が「うちはどうだ?」と確認したとします。

その時に、「取引先の数はこういう考え方で、維持すべきです/減らすべきです」とか、「それが手法になっちゃいけません、カテゴリーで適切な数があるかもしれません」と応えるわけです。

それから「うちの教育はどうだ?これからどうする?」と言われた時も、自分達の話をするだけでなく、他社の事例も消化・理解して「他社はこうしています。それは調達機能のこういう発想があるからでしょう。」と言えるわけです。

また、コンサルタントの方等と話をする時の、素地にもなっていますね。

そういう意味で、企画部門になる人こそ、受けておいたほうが、調達業界の共通言語としての意味があると思います。

また、名刺にCPPをいれておくと、他社の調達の方と、CPPの話題になることも少なくないですよ。
「うちも受けようか迷っているんですよ」という話になったとき、教科書の内容をコンパクトにまとめて説明をすると、試しに受けてみようかとおっしゃって、実際に受けた方もいらっしゃいます。

そういったところで、アドバイスを求められコミュニケーションの役にも立っていることも多いですね。

(安部)
本日はありがとうございました。

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