エリオットグループ インタビュー
エリオットグループ エンジニアードプロダクツ グローバルSCM部 部長 張 洪萍様、青山 貴久様、材料・加工品調達課 コモディティリーダー 丹治 詠美子様に、「CPP資格取得」の背景やご活用についてお伺いしました。
(※以降敬称略、所属・役職は2022年5月11日時点)
吉田
はじめに、グローバルSCM部の組織構成から教えてください。
張
グローバルSCM部は、 材料・加工品調達課、機器調達課、納期管理を担うデリバリーマネジメント課、そして海外のInternational Procurement Office(IPO)の4つの課から構成されています。
吉田
張さんは、グローバルSCM部全体を統括するお立場ですね。
張
そうです。部長として日本、中国、インドのメンバーを束ねる立場にあります。アジアパシフィック地域におけるグローバルなサプライチェーン上の調達活動やバリューエンジニアリングなど、社内のバリューチェーンプロセスの業務改善に関わる提案業務を担当しています。
吉田
日本がヘッドクオーターの役割を担っているのですか?
張
ヘッドクオーター機能はアメリカにあります。日本はアジアパシフィックの所管となります。
吉田
ありがとうございました。続いて、丹治さんの役割と担当業務について教えてください。
丹治
私はグローバルSCM部の材料・加工品調達課に属し、コモディティリーダーとしてアメリカ・IPOチームと共に素形材の最適購買を実現させる立場にあります。素形材の中でも大型のローターやケーシング、鍛造品、鋼板等が対象です。
吉田
リーダーとして部下育成やマネジメントもされているのでしょうか?
丹治
課内で素形材を担当するチームメンバーの情報をまとめたり、戦略を一緒に考えたり、アメリカのサプライチェーンチームと連携しながら情報共有に努めています。
吉田
ありがとうございました。では、最後に青山さんについても教えてください。
青山
私は、グローバルSCM部付けで、グローバル的な役職としてはプロセスイノベーターという立場にあり、部門全体にわたる業務プロセスの改善に従事しています。スペンド分析やバリューエンジニアリングなど改善に関わる部分を任されています。今回、CPP資格の取得を部署全体で目指すにあたり、そのサポートも含めて対応しました。
吉田
グローバルSCM部の各課に横串を通す横断的なお立場にあるのですね。
青山
そうですね。
張
さらに青山には、他部署とのクロスファンクション活動のファシリテーターとしても活躍してもらっています。
吉田
そうなんですね。青山さんは、過去にどのような部署にいらっしゃったのですか?
青山
入社時は、エンジニア部門であるプロジェクトエンジニアリング部におりました。その後、調達部、現在のグローバルSCM部に異動し、今に至っています。
吉田
ありがとうございます。エリオットグループの製品や特長について教えていただけますか?
青山
弊社の製品は石油精製・石油化学プラントの心臓部であるガスコンプレッサー(遠心圧縮機)および駆動するための蒸気タービンの製造、付帯する制御盤や潤滑油供給装置などの補器類と併せたパッケージとして販売/設置/アフターサービスまで行っています。
安定したプラントの運転を長期間行えるという信頼性の高さが強みで、100年以上にわたり世界中のお客様から信頼をいただいています。
また成長の大きな中国・インド市場では、現地のサプライヤーを開拓し、信頼関係を構築することで価格競争力だけではなく、エンドユーザー様からのメンテナンス依頼やトラブル対応にも即時に対応できるようにしています。
吉田
続いて、現在の業務で感じる「やりがい」や「魅力」について教えていただけますか?
青山
バイヤーとしての使命は「自分の担当するアイテム/コモディティの競争力を向上する事」と考えています。
サプライチェーンの競争力は会社の利益に直結するため、会社に貢献していることにやりがいを感じます。
また、競争力向上に向けた社内やサプライヤー様との協業は非常に魅力を感じます。
弊社の製品は、素形材~加工~組込み部品~補器など多くの購入アイテムから構成されており、それらを国内だけでなくグローバルから調達し製造しています。最適な購買を行うためには、グローバルでの連携は不可欠であると共に、各サプライヤー様との信頼関係も大事です。客先からの要望も一品一様で多岐にわたるため、サプライヤー様から過去実績の仕様を基にした標準化をおこなったり、価格競争力を出すためにForecastを使った大型交渉も行います。
吉田
各社がCPP導入の背景には必ずって言っていいほど課題感が背景にありましたが、御社では何か課題感などありましたら教えてください。
張
CPP導入以前は、大きく2つの課題感がありました。
まず1つ目はは資材調達の部分です。
今まではDay to Dayの売買が中心でしたが、世の中が変わり、我々のお客様も海外から”安く早く良いもの”が買え、加えて最新技術を取り入れられるようになり、弊社も戦略的な調達に転換する必要がありました。
市場における最新技術や最新の情報を社内に取り込み、バリューエンジニアリングを行い、戦略調達のリソースを既存のサプライヤーベースではなくグローバルに広げることが求められていたのです。
吉田
その転換のためには何が必要だとお考えでしたでしょうか?
張
やはりスキルと知識が不可欠でした。加えて、マインドセットの変換も必要と考えました。
今までは、日々の購買・調達業務に追われ、スキルと知識の習得、マインドセットの変換に意識を向ける余裕がありませんでした。
吉田
日常的に業務に追われると、業務スクラップや効率化などをしない限り、時間の余裕を作り出すことは簡単ではないですよね。
張
そこでCPPに着目しました。購買・調達を体系的に学ぶことで、合理的に業務の効率化が図れました。
そして、時間的な余裕を作ることができ、戦略的な取り組みに充てることができます。
吉田
なるほど。そういった効率化を図るためにはまずは知識が必要で、さらに知識を実践に活かして成果・効果を出していったということですね。ありがとうございます。
張
そして2つ目は、調達先のシフトにより生じる課題です。
グローバル調達が増えており、グローバルに展開するサプライヤーは戦略的な視点を持っているため、我々も相応のスキルをもって応じなければなりません。
こうしたサプライヤーベースの変化が国内に限らずグローバルに広がっています。
吉田
CPPの導入以前にも部署内で人材育成の研修は行われていたのですか?
張
以前は勉強会という形式で行っていました。部門として体系的な教育を取り入れるようになったのは、グローバルSCM部になってからですね。
丹治
会社全体として、他部署のメンバーと一緒に共に月に1度の勉強会は行っていました。ただ、その活動は調達だけではなく、当社の製品構成を知り、一般的な知識を深めるためのものだったため、調達だけにフォーカスして網羅的に勉強する機会ではありませんでした。調達に特化したものは、引継ぎ時に個別に教わるOJTくらいだったと思います。
吉田
OJT自体はマニュアル化などされていたのですか?
張
そうですね、マニュアルに沿ったプロセスはありました。
吉田
CPPを知ったきかっけについて教えてください。
青山
調達部の時代からCPPの資格取得をしている社員がおり、CPPの存在自体は知っていました。
私がエンジニア部門から調達部門に異動した際に、体系的かつ王道を勉強する機会の必要性を感じ、CPPの資格を取得したいと思ったことがきっかけです。
私がB級を取得しA級を目指す段階で「これは非常に活用度の高い知識が詰まった内容だ」と思い、張に進言し、部門全体で取得を目指す方向に話が広がりました。
張
我々の部署では「部全体が “頼れるプロ集団” を目指す」ことを目標としています。
プロになるためにはプロのスキルが必要です。プロとして認定されるスキルの取得を目指し、全員で体系的に学ぼうと考えました。
海外のバイヤーも英語や中国語で同様の資格を取得しています。
吉田
“プロ集団”という部署のキーワードが挙がりましたが、張さんが考えるプロ人材の定義について是非教えていただけますか。
張
我々が目指す姿は、”それぞれの持ち場のプロ”です。では、「サプライチェーンにとってのプロとは何か?」ということですが、それには3つの条件があると思っています。
まず1つ目は「良いものを安く早く買い、会社の競争力を向上させること」です。
“会社の勝負はすなわちサプライチェーンの勝負”といっても過言ではありません。
2つ目は「外部の最新情報を社内にいち早く取り入れて変革を起こすこと」です。
“外部と接する機会が一番多く、外部との窓口になっているのはサプライチェーン部門”です。サプライチェーン部門が外部の最新情報を取り入れることで、社内の様々な部署に情報を渡し、変革を促すことができます。
3つ目は「部材を切らさないこと」です。”工場を止めない、出荷を止めない”ことです。
この3つを達成できればサプライチェーンのプロと言えるでしょう。プロを目指すには、まず知識とスキルという武器が必要です。この武器を手にして初めて戦うことができます。そのためのツールとしてCPPが一番だと思います。
久保田
CPPの学びが実際の業務で活かされた事例があったら教えてください。
丹治
全員が等しく、ベースとしての共通言語を持っているため、話の発展性が生まれることがひとつ挙げられます。スキルがベースとしてあるので「A案ではなくB案でいこう」という際にもABC分析を行い「この方向で」と話が早く進みます。
久保田
今まではそこに至るプロセスも検討し、互いの考えのすり合わせが必要だったものが、検討ツールの共通化により不要になったのですね。
青山さんはいかがですか?
青山
スペンド分析やバリューエンジニアリングを行う上では「ムダ」を明確にすることが大切です。
CPPでは、購買実績からサプライヤー戦略を練る際の基本となる考え方やグラフのまとめ方が学べます。こうした具体的なメソッドが学べ、それを実際の改善活動に活かせるのはとても良い経験になっています。
久保田
今までの知識にプラスしてより多くの手法が学べたということでしょうか?
青山
はい。戦略の幅、選択肢が広がりました。
久保田
プロ集団としてさらに高みを目指すためにCPPに求めるものはありますか?
張
サプライチェーンに関するグローバルな最新のケーススタディ、素晴らしい会社での卓越した取り組みの紹介があるといいですね。最新のテクノロジーを活用した事例、デジタルでサプライチェーンを変革した取り組みなど、DXを活用した事例があれば共有いただきたいと思います。
今は時代の変化が非常に速いため、少し先でも情勢が一変してしまいます。より強いサプライチェーンの構築に役立つDXの活用・導入事例など、定期的な情報提供があると嬉しいですね。
吉田
より具体的にはどのような内容の情報を求めますか?
張
グローバルエクセレントカンパニーのサプライチェーンの実態といったベンチマークの情報が一番ほしいですね。他社の事例を知ることで自社とのギャップが明らかになり、自社の強くすべき部分が見極められるのだと思います。
久保田
以前にも増して地球環境に対する各種対応も求められる中、世の中のトレンドから見てCPPに求めるものはありますか?
青山
まさに我々が昨年購入した改訂版テキストでは、サプライチェーンの問題や、ESG経営、SDGsについても触れられていました。そこで学び、アンテナを張ることができたため、激変した情勢についていけたこともあったと思います。こうした時代の変化に逐次対応したガイドにしていただくことを期待します。
張
ESG経営など、環境問題への対応は会社の評価に直結します。当グループとしてもエネルギーやCO2の削減には注力しています。
久保田
サプライチェーンのレイヤー(層、Tier)が深いと難しい問題でもありますよね。
丹治
我々のサプライヤー様も、我々と同じ悩みを抱えていると感じています。二次サプライヤー以降の情報を得るためには、自ら働きかけ、聞いていかなければたどり着けません。その苦労はみんな同じ状況だと思います。
久保田
知識やスキルに加え、世界の最新情報、世の中の潮流に対応した内容が求められていることを改めて確認できました。
張
去年、部門全員がCPP資格を取得し、今年はその実践段階に入っています。
実践のステージでは、他社の事例、ケーススタディを知ることが有用です。
デジタルを活用したサプライチェーン変革などの最新事例を学び、世の中の潮流を知る機会があれば、よりパワーアップできるのではないかと思っています。
今年我々は一段上の「“世界トップレベルのプロ集団”を目指す」ことを目標としています。
CPP資格の取得によって得た学びの実践を通じて更なる高みを目指しています。
吉田
部門全員がCPPを資格取得するという偉業を達成されたその秘訣はどこにあったのでしょうか?
張
勉強会のリーダー、そのリーダーシップがポイントだったと思います。
去年の4月から、部門全員のCPP資格取得を目指し計画を立て、まず勉強のリーダーとして丹治を任命しました。丹治がリーダーシップを発揮して様々な仕掛けを施し、全員を合格まで導いたことが勝因だと確信しています。
吉田
その仕掛けを是非教えてください。
丹治
ご褒美作戦、ひらたく言えば景品の獲得です。メンバーの要望を聞き様々な景品を決めました。その景品を早く合格した人から順にいい景品がもらえるという作戦です。
勉強会では持ち回りで講師になり、テキストの各章の内容に沿った教育資料やクイズを用意して互いに勉強しました
青山
一位はなんでしたっけ?
丹治
メンバーからのリクエストで「高級和牛のギフト券」です。
張
この他にもメンバーの要望を聞き、様々な景品を決めました。
丹治
他に、賞状も作り、合格者には部会で表彰状とプレゼントの授与のセレモニーを行い、記念写真を撮りました。
記念写真をチャットで共有したり、表彰式ではBGMを流したり、雰囲気の醸成に努めました。
また、表彰状の文面もストレングスファインダー®※とクロスさせ、個々の強みを盛り込んだり、一人一人に独自のアレンジを加えて、その人だけのユニークな表彰状としました。
※ストレングスファインダー®とは、アメリカのギャラップ社が開発した人の強みを診断するツールです。
張
セレモニーでは社長がプレゼンターを務めたこともありました。
実は、全員分のテキスト代、受験費用のすべてを会社が負担してくれました。雰囲気の醸成に加え、会社のバックアップはポイントだったと思います。
会社トップの理解と全面サポートは大きかったです。
久保田
表彰状を読み上げることが、その方の強みを全員で共有するきっかけにもなるのですね。
青山
部会が週次であるため、段々合格者が増えていくと、プレッシャーもかかったりして…(笑)。
張
MBOにも入れました。やはり大切なのは雰囲気づくりですね。
丹治をリーダーとし、若手数名がリーダーを支えるメンバーとして知恵を絞り、全員が勉強し全員が合格を目指す雰囲気をつくってくれました。
吉田
仕組みと仕掛けが本当に素晴らしいですね。
制度としての仕組みが強いやらされ感が出ますし、サポートやバックアップなどの仕掛けが弱いと誰もやりたがらない…、お話を伺うと、非常に高度な仕組みと仕掛けがあって、更に楽しむという雰囲気もあり、とても素晴らしいと思いました。
張
当初、部門メンバー80%の合格を目標として掲げていましたが、セレモニーを重ねていく中、最後に残った人たちは皆さんで色々時間を見つけて猛勉強していましたね。 最終的には全員合格を成し遂げることができました。
吉田
お話を伺う中で、勉強される方同士で互いに励ましたり、学び合ったり、合格者とこれから受験する人同士で時には冗談を言ったり…そんな情景が思い浮かびます。気持ちの良いプレッシャーの中やられていたのですね。
張
良い意味での競い合い、切磋琢磨は必要ですよね。イベントとして色々と仕掛けることで、みんな楽しくできたことがポイントだったと思います。
丹治
アナログですが、掲示ボードにあるメンバーの名前の隣に、合格者には総選挙のような花を付けたり…(笑)。
青山
他部署からも「何これ?」と注目されましたね(笑)。
丹治
また、合格者を先生としてアサインもしました。3月から8月、一部9月までの間で、全員が先生となるようなスケジュールを組みました。毎週月曜日の定時後の勉強会、と週1の部会(定時内)で章ごとに先生を決め、全員が必ず教える機会を持つよう工夫しました。
久保田
1つの章に要する時間はどれくらいでしたか?
丹治
分量にもよりますが、だいたい30分から1時間以内だったと思います。
久保田
その教育ツールを作るだけでも大変だと思いますが、それも勉強になりますよね。それも狙いのひとつだったのですね。
張
そうですね、自分が担当した章の内容は一番覚えていますし。
丹治
その章のことはその人に訊くので「わからない」とは言えない状況ですね。
張
勉強会以降はチャットを活用したフォローや、合格者による個別講義も行いました。
吉田
張さんや、丹治さんの人の心のつかみ方と言いますか、組織づくり・風土づくり非常に素晴らしいですね。
張
丹治は本当に上手でした。それでみんながついていったのだと思います。
丹治
みんなが少しずつ合格し続けていったことも良い意味でプレッシャーとなり励みになったのかもしれません。
吉田
本当の意味で、学び合う、学びたいと思える環境づくりに脱帽です。
青山
自分の経験も最初に話したのですが、はじめの踏み出しがきつかったので、MBOに入れて目標を設定し後押ししてくれたのは、みんなにとって大きかったと思います。
吉田
全員合格まで大変スムーズにいった、という印象を受けていますが、障壁となったことなどありましたでしょうか?
青山
資料とテキストの厚さ、文章の難しさですね。アンケートにも「文章が読みにくいので理解しやすい表現を使っていただけると助かります」という意見もありました。
丹治
取り組みやすいよう、チャットを活用して一日一問出題し、残日数をカウントダウンしながら、追い込みの仕掛けを作ったりもしました。
吉田
皆さんが独自で問題を考えられたのですか?
丹治
問題は基本的にテキストやオンラインセミナーから引用しました。みんなと話した時の「ここがわかりづらいよね」といった意見を参考に、混同しやすいポイントの注意喚起も促しながら作成しました。
張
能率協会さんからの情報は日々チェックしています。オンラインセミナーのキャンペーンを知り、全員で受講しました。
吉田
他に何か苦労したことなどはありましたか?
丹治
これをみんなで推進する上での苦労はあまり感じなかったですね。どちらかというと個人の勉強の方が大変でした。
久保田
こうして全員一丸となり協力しながら推進できたのは、社風や風土も関係していると思いますか?
丹治
風通しの良い社風であると思います。
青山
張がトップに来てから、「みんなプロになるんだ」ということを熱く語り、そうした雰囲気にするように努めてくれたことで、コミュニケーションがより活発になったと思います。さらにこうしてみんなで苦労することでより仲良く、結束力が強まったと思います。
張
土日もみんな猛勉強していましたよね。
青山
子供を小脇に抱えながら勉強したり、寝かしつけながら深夜に勉強したり。
張
青山さんはバリューエンジニアリングの資格も取りましたよね。
青山
はい。VEリーダーの資格も取得しました。
吉田
仕組みと仕掛けが高度に機能した素晴らしい成功事例をご教示いただきありがとうございました。
吉田
組織の素晴らしい雰囲気を醸成し、牽引されている張さんですが、そのマネジメントは大変興味深いです。張さんがマネジメントする上での信念や大切にしている指針があれば是非教えてください。
張
2つあります。
1つは「心理的安全性」です。
“メンバーは何でも言える”、”何でも相談できる”、”一人で悩みを抱えない”
我々はチームであり、個人商店ではありません。「心理的安全性」は大事なキーワードです。
もう1つは「適材適所」です。それぞれの強みを活かした人財活用です。
例えば青山は改善に秀でています。改善+ファシリテーター=イノベーションリーダーとして様々な変革を起こしてくれています。自部署のみならずクロスファンクショナルにスクラムを組んで、1つの改善をやり遂げるため関係部署の人たちを集めてファシリテートする能力があります。
丹治も改善に強いため、オペレーションの仕事を減らし、改善に注力してもらっています。最近はあるプロジェクトチームのリーダーとしても活躍しています。
吉田
メンバーの強みを知るために、どのような施策を打たれたのでしょうか?
張
ストレングスファインダー®を活用しました。
2021年の年明けからストレングスファインダー®を用いて全員の強みを見える化し、データベースに入れ、全員でシェアしました。
※ストレングスファインダー®とは、アメリカのギャラップ社が開発した人の強みを診断するツールです。
吉田
欧米、特にアメリカ系企業ではストレングスファインダー®を活用してプロジェクトに必要な人財を確保するということは聞きますが、一方で日本企業では、適材適所を実現するためにこうしたツールを導入するケース、うまく活用しているケースはまだまだ少ないという肌感覚があります。
知ったきっかけや、過去に経験などがありましたら教えていただけますか?
張
おっしゃる通り外資系企業での運用事例がきっかけでした。そこで、以前担当していたサプライチェーンチームでストレングスファインダー®を活用しました。すると、日本人・中国人・インド人問わずメンバー全員が非常に喜び、反響が大変良く、お互いの強みを知ることで見え方が変わり、一気にチームワークが良くなりました。その経験から、現部門メンバーにも同様の施策を打つことにしました。
久保田
全員で情報を共有することもポイントですね。
張
データベースでの共有に加え、一人ひとりが部門全員の前で自分の強みを発表しました。1回に2~3人の発表に限られたため約3か月という時間は要しましたが、実施した意義は大きかったと思います。
吉田
正に多様性ですね。他者理解によって、相手を許容できる受け皿が広がりますよね。
張
聴いているメンバーは、各人の強みを承認・称賛し、その場でフィードバックしましたね。
吉田
皆さんにはどのような強みがおありだったのですか?
青山
私は「慎重さ」と、困ったことがあった時にその人を助け元の状態に戻す「回復思考」、それらの強みが言及のあった”改善活動”に活かされていると思います。
丹治
私は「責任感」「公平性」、また「慎重さ」もありました。
張
人の強みを知ることは、人と人との組み合わせにも有用です。
例えば私の強みは新しい事へのチャレンジですが、青山の「慎重さ」という強みと組み合わせることで見えない部分が見えてきます。こうした仕組みづくりに役立ちます。
丹治は人との関りに非常に秀でています。そこでCPPの勉強のリーダーに抜擢しました。今回その強みを存分に発揮し、全員合格という結果をもたらしてくれました。丹治がリーダーでなかったら全員合格はなかったでしょう。
張
調達の経験はあっても体系的な知識を学んでおらず、OJTに頼っているバイヤーにお勧めします。
また、CPPはスキルだけでなくマインドセットの変革にも有用です。マインドセットを変えたい方にもお勧めしたいですね。
吉田
組織を変えたいが、そのためにはまず人の意識を変えていかなければならない。こうした悩みを持っている管理職の方は多いと思います。
張
マネジメントする立場として、今年いろいろな変革の仕掛けをしていますが、メンバーからの抵抗は全くないですね。
吉田
素晴らしいですね。
張
もし、メンバーにCPPの知見がなかったとしたら、「なぜこの変革をする必要があるのか?」というところから始めなければなりません。CPPで学んだ素養があるので、「サプライヤーの集約」ひとつとってもメンバーが積極的に推進してくれています。
吉田
CPPの学びによるマインドセットで、自律的、能動的な集団が生まれたのですね。
張
そうですね、ABC分析やコストストラクチャーなど全員が必要な手段を理解しているため、変革への抵抗は全くありません。その部分の効果は一番大きいですね。全員が同じ方向を向いて「変革しなければ」という意識にあります。
吉田
丹治さんはいかがですか?
丹治
調達業務に行き詰まりを感じている方にお勧めしたいと思います。そうした方々に知識を広げるために活用してほしいですね。
吉田
是非、具体的に教えてください。
丹治
恐らく、調達の仕事を始めて1~2年ぐらいすると、仕事には慣れたが、あと一歩先に行けないというジレンマを感じる場面、何かに立ち止まる場面が出てくると思います。どうしても自分の知識不足が故に、次のステップに進めないという壁に、皆さん必ずぶつかると思います。そうした時に、CPPを勉強して知識を広げ、一歩先へ進んでほしいと思います。
吉田
最後に青山さんいかがでしょうか?
青山
自身の経験から、違う部署から初めて調達部門に来た人にも役立つと実感しています。ベースの知識がない人でも、CPPを勉強することで購買・調達について体系的に学ぶことができます。そこからさらに発展するために必要な知識も得られます。調達に関わる方は、どのようなレベルの方でも学ぶべきだと思います。
吉田
皆様、大変貴重なお話をありがとうございました。