大日本印刷 インタビュー

大日本印刷株式会社
上尾 哲也さん(購買本部 購買管理部 企画グループ リーダー)
藤澤 健司さん(購買本部 購買第5部 部長)
天野 菜美さん(購買本部 購買第5部 第2グループ)

にお話を伺いました。(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)

体系的な教育部門の必要性とは?

中本
まずはCPP導入前の様子についてお伺いしたいと思います。
導入前はどのような課題を抱え、教材や資格を探していたのでしょうか。

藤澤
全社的に行われている研修とは別に、購買本部では、以前は体系的な教育がされていませんでした。
年齢やキャリアによっていくつかの層があるのですが、教育をしているのは最初の新人の頃と幹部になった時点という本当の節目だけだったのです。その間が抜け落ちている感じで、全体のレベルアップを図るためには、体系的な教育をする部門が必要だということになり、2017年に購買本部の教育委員会を発足させました。

中本
全体のレベルアップが必要になったきっかけや、購買部門に求められるものがあったのでしょうか。

藤澤
従来、購買本部は「品質の良い材料を安価に安定的に調達する」ことが求められていました。最近は購買に求められるものが、多様化・高度化していると感じています。購買本部として、より組織全体としてのレベルアップが必要になってきました。また、「開発購買」など新たな購買機能も重要視されてきています。これからも新たな機能を求められることがあると思いますし、そのための基本的な知識の習得がやはり必要になるでしょう。それも大きな要素です。

上尾
実は、以前は経理や貿易系の資格取得を推奨していました。ただ、どうしても業務に使う人・使わない人が出てきてしまいますから、実際の購買業務に根づいた教育を探していました。そのようななかで、CPPは購買に特化した資格として知っていたので、教育委員会発足をきっかけに、あらためて組織として活用できないかと考えたのです。

購買本部の有志の挑戦とは?

中本
教育委員会の設置後、CPP導入を検討するに当たり、5人の方にまず勉強してもらい試験も受けて頂いたそうですね。

天野
はい。私は、以前に知り合いから「今度、“CPP”という調達の資格試験を受ける」という話を聞いていて、CPPに興味を持っていました。でも、当時は入社2年目で、その頃はまだ教育委員会もなく、受験には至りませんでした。

上尾
昨年、教育委員会として有志を探していたときに、天野さんが手を挙げてくれました。私たちの教育がまだ体系化できていなかった時期でしたから、学びたい人には学ぶ機会をどんどん提供していきたいと思いました。

中本
天野さんは実際にCPPを勉強してみて苦労したことはありましたか。

天野
最も苦労したのは勉強時間の確保でした。昼間は通常業務をしていますから、勉強時間を捻出することはとてもできません。それで時間を確保するのは帰宅後になるのですが、私には小学生の子どもが2人いて、その面倒を見なければならないのです。その結果、どうにか時間を確保できるのが夜の11時から12時までの1時間です。その1時間に集中して勉強しました。時間作りと、夜中に勉強に集中することは大変でしたね。

中本
夜に1時間勉強時間を取る、その継続的な努力があって見事CPP-A級まで取得されていますが、実際に学んだ知識は業務の中で生かされていますでしょうか。

天野
たくさんのところで活用させていただいています。

まず勉強をして良かったと思うのは、いろいろな用語を学べたことです。CPPでは、「調達予備行為の禁止」など、さまざまな概念が明確な用語で規定されています。今まで「ここがおかしいな」と漠然と感じていたものが、調達予備行為の禁止に抵触しているなどと言えるようになりました。そして、論理的に思考を進められるようになったと感じています。

今は開発購買に取り組んでいるのですが、そういった考え方の入り口をここで学ぶことができて、さらに展開して仕事に取り組めている点が、非常にためになった部分です。

中本
組織としてCPP導入を決める上で魅力に感じた点はありましたか。

上尾
私たち購買担当はこれまで、自分たちの業務の延長でしかスキルアップできていませんでした。
サプライヤーとの接点はそれなりにあっても、違う会社の購買担当の方と話す機会はそれほどありません。

だから、「組み立て」の考え方をはじめ、購買に関係する他の部署や、他の会社の方々がどんなことを考えているかなど、CPPで体系立てて学ぶことにより、視野が広がったように感じています。
今までの私たちは「井の中の蛙」だったというのが率直な感想です。視野が広がり、新たな共通言語ができたのが良かったです。

組織としてCPP導入を進めていく秘訣、資格取得者の次なる役目とは?

中本
まず5人の方に受験していただき、CPPが非常に良いという評価をしていただきました。そこから社内の取り組みに広げていくには、購買本部全体や他の部署の方々のご理解を得なければならないと思います。部門の内外には、どのようにアプローチされましたか。

上尾
社内にはCPPを知っている人がまだ多くありませんでした。「何を学べるの?」といった素朴な疑問を耳にしていました。そこで私たち受験した5人が旗振り役となり、購買本部でCPPの導入講座を開きました。CPPとは何かというところから、受けてみての感想、体験談を計3回、全国の拠点をテレビ会議でつないで説明しました。

中本
周囲の反応はどうでしたか?「これを受けなければならないのか」といった否定的な声はありませんでしたか。

上尾
基本的に受験は強制せず、受けてみたい人に受けてもらうのが、私たちのスタンスです。
若い人や意欲を持つ人からは受験希望の声をもらいましたし、ある程度の年齢の社員からも「この年代だけど、受けていいのかな」という声がありました。学びに遅いということはなく、新たな発見もあるでしょうから、いろいろなメンバーにおすすめしているところです。

中本
資格取得を義務づけるのではなく、少しずつ周りの理解を得ながら進めているところが、自発的な学習意欲を高める上でポイントですね。実際の取り組みのスタートから1年ぐらいが経過しているようですが、現状はいかがでしょうか。

上尾
2019年度のB級受検に向けて、6・7月に、私たち5人がCPPの世話役となって社内の研修会を計6回開きます。次の世代が登場してくるまでは、私たちが旗振り役を続けるつもりで講師を務めます。

現在は、今年受験をする人を募っている段階です。
研修会は受験しない人でも参加できるようにしています。資格を取得するのがゴールではなく、組織のレベルを上げることが目的です。だから、受験する人が増えて合格者が多くなるのは好ましいことなのですが、啓蒙はそれに限定せずに続けていきたいと考えています。

中本
ガイドブックを購入して自学、自習だけに頼るのでなく、社内で補講セミナーのようなものを開くことで、より勉強しやすい環境が整備されていると感じました。

上尾
資格を取って「自分はA級ホルダー」で満足して終わってしまったら、意味がありません。
多分、1年くらい経ったら、勉強した内容も薄れてしまうでしょう。しかし、資格取得後に自分が講師を務めることになれば、もう一度テキストを読み返すはずです。自分が、みんなの前でその内容を分かりやすく噛み砕いて説明していくことで、理解がさらに深まるでしょう。そういう循環を作っていきたいと考えているのです。

中本
これから多くの社員の方々が本格的にCPPを受験することになると思います。CPPの資格を取得した方に対する、「取得後、こうなってほしい」という期待は、イメージされていますか。

藤澤
それぞれのレベルに合わせたセミナーや研修を用意したいと思っていますが、その先はCPPで得た知識を業務にどう生かすかがとても大切です。新しい知識を得ることで、少しでも職場の課題解決が進み、大きな価値を生み出せるようになってほしいと考えています。

研修のための研修ではなく、実作業を改善し、新たな取り組みを進めるための知識を習得していくことを期待しています。

中本
CPPの資格取得や研修を通して基礎的な能力を養い、そこから課題発見や現状管理の見直しをできるようにするのですね。

CPP資格取得後に期待することとは?

中本
日本能率協会CPP事務局では2019年度に通年受験を開始し、また、世界180カ国のテストセンターで受験できるようになりました。現在、英語版の試験も開発中であり、より勉強しやすい環境づくりに努めています。CPP事務局へのリクエストがあれば教えてください。

天野
私たちは現在、開発購買に取り組んでいますが、7、8年前に書かれた書籍と最新の書籍ではかなり内容に変化が見られます。私のような文系出身者でもできる開発購買の取り組みがどんなところにあるのか、最新のテキストで掘り下げてほしいと思います。
もっと知りたいのは、開発段階からの参画のあり方や購買部門としての価値の提供についてです。

上尾
個人的な意見なのですが、CPPホルダーや購買・調達の人材育成を担当する方の集まりや、横のネットワークがあるといいなと思います。資格取得はあくまで通過点にすぎません。だから、いろいろな会社の人と交流し、意見交換してみたいと思っています。

中本
藤澤さんは、教育委員長としてこれからCPP資格に合格する社員を見ていくことになると思いますが、資格取得後に期待されていることはありますでしょうか。

藤澤
CPPを受験するのは、学習を通じて得た知識を仕事に生かしていくためです。受験する社員は、この点を常に念頭に置かないといけないと思います。

私たちも実戦でこの知識をどう活用すべきか、常に検討を進めていますが、テクノロジーの進化でこれからさらに世の中が大きく変わるでしょう。日本能率協会さんには、新しい項目をどんどん追加して、時代の変化に対応していただくことを期待しています。

中本
私たちも日々、購買・調達部門の実務を行う方々を支援する企画や、最新のテーマを取り込んだ情報発信などを行っていきたいと思っています。貴重なインタビュー、ありがとうございました。

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